平成の天皇賞(春)優勝馬を振り返る

JRA-VAN
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【2013/4/28 京都11R 天皇賞(春)(G1) 1着 6番 フェノーメノ】

今週は天皇賞(春)が行われる。ちょうど1年前の同レースは平成最後のJRA・G1という位置づけだった。よって今年は令和最初の天皇賞(春)ということになる。具体的なレース展望は週半ばに行うことにして、今回は平成の天皇賞(春)を優勝馬の顔ぶれを思い出しながら振り返ってみることにする。データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。

平成に行われた天皇賞(春)優勝馬

■表1 【平成に行われた天皇賞(春)優勝馬】

表1は平成に行われた天皇賞(春)優勝馬の一覧。平成元年(1989年)から平成31年(2019年)まで31年分の結果だ。筆者は1993年あたりからリアルタイムで結果を知るようになった。ライスシャワーがメジロマックイーンの3連覇を阻んだレースはよく記憶している。そしてその後はずいぶん多くのレースが行われたものだとしみじみと感じる。個人的にはサクラローレルが勝利した平成8年のレースも印象深い。圧倒的な「2強」と思われていたナリタブライアンとマヤノトップガンを負かした末脚は強烈だった。翌年(平成9年)のレースでマヤノトップガンがサクラローレルとマーベラスサンデーを下し、リベンジを果たしたのもまたドラマチックだった。この時のマヤノトップガンの末脚も素晴らしく、名勝負と呼ぶにふさわしいレースだったと思う。
思い出話はこれぐらいにして平成の天皇賞(春)を全体的に少し振り返ってみたい。まずは複数回優勝している馬にスポットを当てる。古馬による芝3000m以上のJRA・G1は天皇賞(春)しかなく、このタイトルには独特の重みがある。キタサンブラック、フェノーメノ、テイエムオペラオー、ライスシャワー、メジロマックイーンが2回優勝を果たした。この5頭は平成を代表する名ステイヤーと呼んで差し支えないだろう。

特にメジロマックイーンとライスシャワー、キタサンブラックは菊花賞も勝利しており、長距離での実績・実力は抜きんでていた。テイエムオペラオーは3歳時こそ勝ち切れなかったが、古馬になり本格化してからは長距離に限らず重賞を勝ちまくった。フェノーメノは他の馬とは違い、芝3000m以上の長距離初挑戦が天皇賞(春)と遅かった。3歳秋はセントライト記念を勝利したのだが、菊花賞ではなく天皇賞(秋)に挑戦したのだ。もしあのとき菊花賞に出走していたらどうなっていたか。元々能力は高く、ステイヤーとしての資質も秀でていたので勝利していた可能性は十分あったのではないだろうか。
優勝馬の性別はすべて牡馬。平成の天皇賞(春)における牝馬成績は【0.0.0.18】。優勝どころか好走例が全くない。現在はG1での牝馬の活躍は当たり前になっているだけに意外な結果だ。そもそも31年間で出走頭数18頭というのが少なすぎる。

優勝馬の年齢は4歳と5歳が多い。6歳以上になると好走率が大きく下がり、7歳以上は優勝馬がいない。昨年のステイヤーズSはモンドインテロ、今年のダイヤモンドSはミライヘノツバサと7歳馬が優勝しているように、長距離ではむしろベテランの馬は侮れない。しかし、G1の天皇賞(春)だけは事情が違うようだ。

騎手では武豊騎手が8回も優勝している。平成元年から平成4年にかけていきなり4連覇を達成した。次に多く勝利しているのは3勝の横山典弘騎手と蛯名正義騎手。武豊騎手と年齢が近い関東のベテランが上位にきた。
優勝馬の人気は年代によって傾向が明らかに違う。平成元年から平成14年までは上位人気馬の勝利が目立った。「2強」あるいは「3強」と言われる勢力図の中、人気を集めた強い馬が好レースを演じた。実力馬でも崩れることはあったが、驚くような人気薄が勝つことはなかった。

しかし、平成15年からは一変した。ヒシミラクルが7番人気で勝利したのを皮切りに、イングランディーレやスズカマンボ、マイネルキッツは二けた人気で激走。平成24年は14番人気のビートブラックが勝利し、単勝配当は1万5960円の大波乱となった。このあたりの年代に1番人気で勝利したのは平成18年のディープインパクトだけだ。ちなみにこの年の勝ち時計3分13秒4(良)は当時のレコード。単勝は110円という低配当だった。

そして平成25年からはまた一変。上位人気馬の勝利が多くなってきた。近5年は1〜2番人気馬が優勝。かつての傾向に戻っている印象だ。ただ、昨年はクビ差2着に6番人気のグローリーヴェイズがきて、平成28年はハナ差の2着に13番人気カレンミロティックが激走している。勝ったのは人気馬だが、その差は紙一重だ。3200mの距離を走り切り、手に汗握る接戦が多いというのは素晴らしいことだ。

時代は令和となり、果たして今年はどのようなドラマが生まれるか。平成と令和を股にかけて連覇を狙うフィエールマンの存在は特に注目と言えるだろう。

文:小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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