ロッテ井口監督「我慢をした分だけの感動を届けたい」。現役時代にプレーで魅了した男は今こそ野球で多くの感動を届ける

千葉ロッテマリーンズ
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【チームスローガンである突ッパのポーズをとる井口監督】

 千葉ロッテマリーンズの監督を務める井口資仁の現役時代は中距離打者としてのイメージがある。一方で数々の本塁打でファンを魅了した。2017年9月24日のファイターズ戦(ZOZOマリンスタジアム)。自身の引退試合で九回に見せた劇的な同点2ラン。2013年7月26日のイーグル戦(Kスタ宮城。元楽天生命)では田中将大投手(現ヤンキース)から本塁打で2000本安打を華麗に達成してみせた。そんな井口の本塁打伝説は福岡でスタートした。1997年5月3日、22歳の時だった。

「怪我で出遅れていたからね。青学時代でチームメートで同じ年にプロ入りした清水(将海、現千葉ロッテマリーンズバッテリーコーチ)とかは開幕戦でプロ初本塁打とか打っていたし。みんな目立っていた。早く追いつきたいという焦りに近い気持ちもあった」。

注目のルーキーとして福岡ダイエーホークスに入団したが、オープン戦で右足首を捻挫。無念の開幕二軍スタートとなっていた。開幕から遅れること一か月。福岡ドーム(当時)での近鉄バファローズ4回戦で待ちに待ったデビューの日を迎えた。1打席目。バファローズ先発の山崎慎太郎のストレートを左前打。プロ入り初ヒットを放つと、迎えた四回の第3打席目。今でもファンの間で語り継がれる伝説の打席に立つ。二死満塁。山崎のフォークをとらえると打球は広い福岡ドームの左翼席に突き刺さった。デビュー戦でのプロ入り初本塁打は衝撃の満塁本塁打となった。

「5月3日は縁があるんだよね。よく本塁打を打っているイメージがある日なんだ」

 本人が言うようにメジャー初本塁打もメジャー挑戦をした2005年の5月3日。シカゴでのロイヤルズ戦。三回二死一塁でアンダーソンから左越えに同点本塁打を打ち込んだ。 第1打席は左前打。第3、4打席は中前打と右前打で4打数4安打2打点の大活躍だった。

 ちなみに福岡で数多くのアーチを重ねているが思い出深いのは福岡ダイエーホークスが初優勝をした99年に放った本塁打だ。

 「印象深いのは2本。どちらも福岡で打った。僕の打ったボールがスタンド上空に飛んだ時のファンの空恐ろしいほどの歓声は今も忘れることはできない」

 1本目は99年9月8日のライオンズ戦。勝てば首位という大事な首位攻防戦。3対3の同点で迎えた九回裏の攻撃だった。前の打者が敬遠をされ一死満塁となった場面で打席に向かった。初球をファウルした後だった。突然、ネクストバッターズサークルにいた次打者が歩み寄り、ベンチからの伝言を伝えてくれた。それは王貞治監督からの短いアドバイスだった。

「トスバッティングのような感覚で打て」。

目の前で前の打者が敬遠をされて巡ってきた打席。気づかぬうちに力んでいた。その一言ですべてのイメージが湧いた。2球目を軽く振りぬくと打球は広い福岡ドームのセンターバックスクリーンに吸い込まれていった。サヨナラの満塁本塁打だった。

 「周囲の人からはサヨナラ満塁ホームランの印象が残っていると思うけど、自分としては王監督からの一言が印象的な試合。力まず、トスバッティングのような気持ちで打つという感覚はその後も大事にさせていただいた」

 華やかな場面での派手な一発に沸いた試合。劇的な結末で球場が興奮のるつぼと化す中、指揮官が残した短い一言が井口の胸に焼きついて離れなかった。だからこそチームの指揮官という立場となった今、選手への短く的確なアドバイスを行う事を大事にしている。
 忘れられないもう1本は、優勝までマジック1で迎えた9月25日のファイターズ戦。4対4の同点の八回。二死走者ナシから相手投手のスライダーを右翼スタンドに運んだ。

「変化球でカウントを取ってくるのが分かっていたので、完全に変化球を狙っていた。スライダーに照準を絞って確実にとらえた一発」。

当時の事をまるで昨日のことのように事細かく、そして確実に振り返る事が出来るのが超一流選手に共通する特徴だ。この勝ち越しの1点を守り切ったホークスが初優勝。井口にとってもプロ入り初の優勝となった。博多の街が歓喜に包まれた。
 
マリーンズに移籍をした09年も衝撃的な一発を打ち続ける。4月7日のファイターズ戦(東京D)で移籍後初本塁打。2号本塁打は4月16日のイーグルス戦(千葉マリンスタジアム 現 ZOZOマリンスタジアム)。延長十二回に豪快にサヨナラの満塁本塁打を放った。その後も毎年、様々な感動と衝撃を野球ファンにプレゼントし続けた。それでも本人は「ホームランバッターではないから」と謙虚な言葉を残し17年限りで現役を引退し18年に若くして千葉ロッテマリーンズの監督に就任をした。

 優勝に向けて万全の状態で迎えるはずだった監督3年目の20年。目標としていた開幕は新型コロナウィルス感染予防の観点から延期となった。当初、予定されていた3月20日のホークス戦(PayPayドーム)が3月9日に中止が決まり、次の目安としていた4月10日のファイターズ戦(札幌ドーム)も3月23日に中止。続いて予定された4月24日のホークス戦(PayPayドーム)も白紙となるなど先行きはいまだに不透明だ。

 「安全面を考慮しての決断ですので、仕方がないとしかいいようがありません。開幕が延期となるのは非常に残念ですが、我々は気持ちを切らさず、新たに設定されることになる開幕日に向けて備えていくだけです。こういう時だからこそプロ野球は明るい話題をファンの皆様に提供しなくてはいけないと思いますので、開幕した時には最高のパフォーマンスをお見せできるように選手、スタッフと一丸となって頑張っていきます」。

 開幕延期に関して井口監督はそのようにファンにメッセージを発信した。閉塞感の漂う日々。しかし、だからこそプロ野球は、そして千葉ロッテマリーンズは明るい話題を提供しなくてはいけない。今はSNSを通しての情報発信など行えることは限られているが一番大事なのは開幕した時にファンを喜ばせる最高のパフォーマンスを見せることだ。現役時代に数々の感動をファンに提供をしてくれた井口監督はきっと指揮官としてこの困難な状況の中で始まる新たなシーズンで現役時代に見せた数々の特大アーチのような感動を生み出してくれるだろう。だから、その日が来るのを今は楽しみに待っていて欲しい。我慢をした分だけの感動と喜びをプロ野球は、千葉ロッテマリーンズは、そして井口資仁は提供をすることを約束する。

文 千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章
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