牲川歩見が見せた『1』へのこだわり

水戸ホーリーホック
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「もったいなかった」第1節。

秋葉忠宏監督がそう振り返った第1節大宮戦。序盤から攻守において大宮に圧力をかけた水戸が多くの時間帯で主導権を握る展開を築いた。90分通して、ボール支配率もシュート数も決定機も水戸の方が上回った。しかし、最終的に1対2の敗戦を喫した。

悔やまれるのは、なんといっても24分の失点だろう。左サイドを突破されてクロスを上げられたものの、力のないボールはGKの正面へ転がり、何事もなくセーブするかと思われた。しかし、「目の前でボールが弾んだ」ことにより、牲川歩見がまさかのファンブル。カバーに入った岸田翔平の足に当たり、ボールはゴールへと吸い込まれていった。その1点が最後まで重く響いた。

「自分のミスで失点してしまいました」

牲川は唇を噛んだ。しかし、サッカーにおいてミスは起こり得るもの。大事なのはミスをしてから落ち着きを失わなかったことだ。「引きずってもしょうがないと思ったので、切り替えてプレーしました」と振り返るように、失点後もクロスに対して積極的な飛び出しで防ぎ、そして、最終ライン裏の幅広いエリアをケアするなど、積極性を失うことなくチームに安定をもたらした。

試合終了間際、ペナルティエリア内右サイドで守備の対応が緩くなった隙を突かれ、大宮の奥抜侃志にループシュートを狙われてしまった。コースを狙いすました一撃に失点の予感が漂った。だが、牲川は集中力を切らすことなく、シュートに反応。自慢のリーチの長さを生かして、シュートをはじき出してみせた。もし、先制点で気持ちを落としていたら、反応することはできなかっただろう。しかし、牲川は最後まで集中してゴールを死守し続けたのだった。

「1」にこだわった ビッグセーブ

「1対2と1対3は全然違う。あのセーブは大きかった」と秋葉監督は牲川のセーブを称えた。昨季、わずか得点1差に泣いただけに「1点の重み」を胸に刻んで今シーズンに挑んでいる。開幕戦、ミスが出て負けはしたものの、最後まで気持ちを切らさずに「1」にこだわって戦い続けたことに大きな意味がある。長いシーズンを戦うにおいて、勝つことがあれば、負けることもあるだろう。思い通りにいかない試合も必ず来る。そういう試合でも最後まで「1」にこだわり続けることが求められる。それを牲川は体現したのだった。

シーズンが終わった時、「終了間際のあのセーブがあったから」と言える時が来るかもしれない。そして、痛恨のミスをしても気持ちを落とすことなくプレーし続けた牲川の不屈のメンタリティーはチームに大きな力をもたらしてくれるに違いない。牲川のこれからに期待せずにはいられない。

(佐藤拓也)

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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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