【サーフィン】若き三刀流サーファー 井上鷹
【WSL / LAURENT MASUREL】
現在19歳の彼はロングボードだけではなく、ショートボード、SUPの三刀流。
どの分野でも秀でた才能を持ち、波に乗ることに対しての柔軟な考えは日本一、いや世界でも有数だろう。
簡単に彼のプロフィールを紹介すると2000年11月に宮崎県川南町に生まれ、2008年に同県の日南市伊比井に引っ越し、2012年に自宅近くの伊比井浜で拾ったボディーボードをきっかけに波に乗ることにのめり込んだ。
宮崎の海でスキルを磨いた彼はローカルコンテストに出場。
当時からサーフボードの種類にはこだわらず、5年後の2017年にはJPSAロングボード、SUPのプロ団体PSA-Jでプロ資格を獲得。
2018年にはJPSAショートボードでもプロ資格を獲得した。
コンテストでは特にロングボード、SUPサーフィンが秀でており、2018年はPSA-J、2019年はJPSAロングボードでグランドチャンピオンになっている。
ショートボードでも革新的なエアリアルやマニューバーを描くなど世界でも稀に見る『三刀流』サーファーだ。
ショートボードではもちろん、ロングやSUPですらも革新的なエアリアルをこなす 【PHOTO:本人提供】
常識を超えた三刀流
初めて参加した海外のイベント、2018年の『Taiwan World Longboarding Championships』は結果こそ25位だったものの、MCに絶賛されるほどのパフォーマンスを披露。
2019年にはスペインの『Galicia Longboard Classic』、ショートボードのCTに値するハイグレードの試合で3位に入り、新しいロングボードツアーで世界トップのロガーが集まったカリフォルニアでの『surf relik』にも参加。
そして昨年の『Taiwan World Longboarding Championships』では、ツアー参戦2年目にして前年の成績を大きく上回る9位。
ショートボードのCTやQSに比べ、WSLのロングボードツアーに関してはまだまだ露出や情報が少ないのが現実。しかしこのロングボードツアーにも世界にチャレンジする選手は存在する中、世界ランク12位となった2019年は彼にとって飛躍の年になったといえる。
2019年『Taiwan World Longboarding Championships』 【PHOTO:© WSL/Hain】
彼の波乗りに対する柔軟さや、どのボードも世界レベルで操る才能は歴代のワールドチャンピオンが賞賛するなど世界でも評価が高い。
一方で、彼の凄さはコンテストだけではなく、フリーサーフィンにもある。
一般サーファーやサーファー以外でも興味が湧くような遊び心満載の彼の波乗りは、今まで限られた人達の特権的娯楽で閉じられていたこの世界をオープンにする力を秘めているのだ。
波乗りとは道具が一つだけあれば、気軽に年齢に応じた楽しみを海という自然と触れ合いながら出来る素晴らしいスポーツ。
当然、健康にも良いし、海との触れ合いの中で自然保護への関心が育つ。
彼自身、2020年東京オリンピックで初めて採用された競技としてのサーフィンだけではなく、一般サーファーの普及のためにも自分の存在意義があると考えている。
これまでの日本の常識を超え、宮崎から一気に世界の舞台に躍り出たというのも彼らしい “規格外” と言えるだろう。
また「世界で活躍するサーファー」ともなれば、通常は幼少からの英才教育が必須とも思われるが、彼の場合はその全てが独学。母親も今でこそサーファーではあるが、幼少期の鷹自身が地元のコンテスト出場を決め、その練習のためにと一週間前にビデオカメラを購入し、初めて息子のサーフィンを見たのだという。
さらに通常、国内のキッズサーファーのほとんどはまず地元のサーフショップなどに所属し、NSA(日本サーフィン連盟)のアマチュアコンテストから経験を積み、プロへの道を目指していく。しかし井上鷹の場合はNSAを飛び越え、いきなりJPSAのトライアルに出場してプロ資格を得るなど、いくつかの「常識破り」を行ってきた。
妹、井上楓の存在
2019年のJPSAロング最終戦で福島を訪れた鷹&楓 【Photo:THE SURF NEWS】
2017年に兄が持ち帰ったSUPに興味を持ち、海デビューを果たすとすぐに才能を開花。
コンテスト初参加にして「ウオーターマリン一宮カップ」SUPサーフィンスペシャルクラス女子2位となり、「マーボーロイヤルKJカップ」では同クラスで優勝。
コンテスト2度目の出場にして国内では無敵と言われていた堀越優樺を倒してしまったのだ。
2018年に海南島で開催された『ISA SUPアンドパドルボードチャンピオンシップ』には大会最年少の 13歳 で日本代表選手として出場。
2019年はPSA-J(SUPのプロ団体)でプロ資格を獲得。
同年の『ISA SUPアンドパドルボードチャンピオンシップ』に出場内定。しかし、同時期に兄の世界戦が重なったため、保護者同行が難しく辞退した。
彼女が特に秀でているSUPサーフィンは始めて僅か半年で日本トップになり、世界で戦えるレベルに到達。
ショートボード、ロングボードもセンスは高く評価されている。
また、兄がコンテストに参加している時はヒート後にタオルや上着を渡したり、とても仲の良い兄妹。
一緒に海に入ることも多く、本当に楽しそうに波に乗っているのが印象的だ。
「井上楓」SUPでのライディング 【PHOTO:本人提供】
海でも陸でもとても仲が良い兄妹。彼らを見ていると波乗りとはもっと自由であるべきなのだと気付かせてくれる。
兄の「鷹」と、次女の「桜」。彼らのSNSには、兄弟で波乗りを楽しむ様子があふれている。
枠にとらわれないパフォーマンスで、世界で活躍する若きサーファーに今後も注目したい。
執筆:THE SURF NEWS編集部
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