個性溢れるプレースタイルと、あえて弱点を突く戦術。あなたの見たことのない卓球が、そこにはある!

チーム・協会

【?Getty Images Sport】

「パラ卓球」ってどんなスポーツ?

簡単に言うと・・・

1.卓球台のサイズやネットの高さは、一般の卓球と同じ

2.立位、車いす、知的障がいの3つのカテゴリーがある

3.あえて相手の障がいによる得手不得手を見極めて対戦!

4.近距離での激しいラリー、ネット際のワザありプレーに注目

オリンピックでのメダル獲得、さらには日本でもプロリーグが創設されるなど、卓球は絶大な人気を集めている。だが、意外と知られていないが、実はオリンピックの卓球よりもパラリンピックの卓球のほうが歴史が長いのだ。パラ卓球は1960年の第1回ローマパラリンピック大会から行われており、かたやオリンピックで卓球が正式競技になったのは1988年のソウル大会からのことなのだ。そして、パラリンピックで日本人が初めて金メダルを獲得した競技がこのパラ卓球。
障がいの種類や程度がプレースタイルに直結するが、だからこそ生み出されるワザや戦術もある。彼らにしかできない新しい卓球がそこにはあるのだ。

一般の卓球と何が違うの?

(写真はリオ2016パラリンピック) 【?Getty Images Sport】

1. 障がいの種類や程度によって11のクラスに分かれて競う

パラ卓球には、車いす、立位、知的障がいの3つの部門があり、男女別に個人戦、団体戦がある。できるだけ公平な条件で競えるように、障がいの種類や程度によってクラスが分けられる。車いす、立位の中にはそれぞれ5段階のクラスがあり、知的障がいを合わせて計11クラスだ。同じクラスでも障がいの種類は異なることがあるため、義足の選手と下肢まひの選手が対戦するケースも起こり得る。
また、卓球は知的障がいのある選手が参加できる数少ないパラリンピック競技の1つ。障がいの特性から試合の組み立てや相手との駆け引きも勝機を呼び込むポイントとなりそうだ。

2. ルールは基本的には同じで、障がいを考慮して一部変更

使用するラケットやボールをはじめ、卓球台のサイズやネットの高さは一般の卓球台と同じだが、車いすでプレーすることを考慮して、台の脚はエンドラインから40cm内側に設計されているのが特徴的だ。
ルールは基本的には一般の卓球に準じるが、障がいを考慮して一部ルールが変更されている。たとえば、車いすの場合のサーブはサイドラインを横切るとレット(やり直し)となり、障がいによりトスが困難な選手は一度自陣のコートにボールを落としてからサーブを打つことができる。また、一般のダブルスでは交互に打球するのが決まりだが、車いすの場合はサーブをリターンしたあとはどちらの選手が打っても構わない。

3. 激しいラリーと緻密に練られた戦略に基づく頭脳戦

卓球は時には時速100km以上の速さでボールが行き交う激しいラリーが見どころのスポーツだ。パラ卓球でもその激しさは引けを取らない。車いすの試合の場合は、互いが卓球台の近くで打ち合うことが多くなる。距離が短い分、体感スピードが上がるのだ。戦う前から相手の弱点は見た目や障がいにより明らかだ。そこを見極めるべく、戦術を緻密に練り上げ、互いに駆け引きを繰り広げながら試合は展開する。頭脳戦がパラ卓球の醍醐味だ。

ココに注目!観戦が面白くなるポイントは?

(写真はロンドン2012パラリンピック) 【?Getty Images Sport】

1. 障がいによってプレースタイルに個性が出る

パラ卓球では障がいの種類や程度によって、おのずと動きが限定されるため、各人のプレースタイルにかなり特徴が出る。たとえば、右足が動きにくい場合は右側に飛んでくるボールの処理が難しい。だからそれに対応できるように、ゆっくりと返球することで時間をつくり、相手に主導権を握らせない。選手は自身の障がいの特性を知り、ウィークポイントをカバーするための戦略やより利点を伸ばすオリジナルのプレースタイルが生まれるのだ。
逆にオフェンス視点で言えば、障がいによって相手が嫌がるエリアを見極めることで、有利な試合運びができる。そのためには、より正確なコースの打ち分けが必要に。彼らが練習を積み重ねて習得した高度なテクニックも見どころだが、選手目線で自分ならどこを攻めるか、戦略を読みながら観戦するのも1つの楽しみ方である。

2. 障がいをものともしない不屈の精神

障がいが重くラケットを手に持つことができない場合は、ラケットと手を固定することもあるし、立位の選手の中には義足や杖を使って試合に臨む人もいる。リオパラリンピックでは、事故で両腕を失った選手が口でラケットをくわえて、足でサービストスを上げてプレーする姿が世界に大きなインパクトを与えた。彼だけではない。自分の限界を定めないパラアスリートたちの不屈の精神は、見る人すべてに勇気をくれるはずだ。

パラ卓球を実際に観戦しに行こう!

(写真はアテネ2004パラリンピック) 【?Getty Images Sport】

障がいは表裏一体。ウィークポイントにもなるし、かつ個性的なプレースタイルを生む原動力にもなる。パラ卓球の面白さはそういう個々に進化したほかでは見られないプレーが展開されるところだろう。8月に行われた国際大会、パラ卓球ジャパンオープンでは、19歳の友野有理選手が当時世界ランキング13位から優勝を果たすなど、若手選手の台頭も目覚ましい。2020年パラリンピックへの期待が高まる競技である。ぜひ会場に足を運んで白熱のプレーを目に焼きつけよう!


text by Parasapo Lab
photo by Getty Images Sport

※本記事は2019年11月に「パラサポWEB」に掲載されたものです。
参考資料:『かんたんガイド パラ卓球』 (外部サイト:日本障がい者スポーツ協会)
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