【UFC】ヘビー級秒殺スーパーパワーのホーゼンストライクがオーフレイムと激突

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【Josh Hedges/Zuffa LLC/UFC】

日本時間12月8日(日)に開催されるUFCファイトナイト・ワシントンのメインイベントでは、アリスター・オーフレイムとジャルジーニョ・ホーゼンストライクによるヘビー級5回戦が行われる。

初のスリナム出身UFCファイター

アーネスト・ホースト、レミー・ボンヤスキー、メルビン・マヌーフ、タイロン・スポーン――かつてK-1マットで活躍し、日本でもおなじみの人気キックボクサーたちの共通点が何か、お分かりになるであろうか。

それは、全員が南米で最も国土面積の小さい国、スリナムの出身ということだ。かつてはオランダの植民地だった歴史もあって、オランダマット界とも強い関係を持ち、キックボクシングの盛んなスリナムから、初めてUFC入りを果たしたのがホーゼンストライクである。

1970年のサッカーワールドカップでブラジル代表の3度目の優勝に貢献したレジェンドサッカー選手にあやかってジャルジーニョと名付けられたホーゼンストライクも、スリナムファイターのご多分に漏れず格闘家としてのキャリアはキックボクサーとしてスタートしており、76勝6敗64KOの立派なプロ戦績を残している。MMA転向には早い時期から興味を抱いていたのだが、スリナムにはMMAのジムも大会もないため、じっくりと時間をかけて海外でMMAの経験を積み、今年2019年に31歳にしてUFC入りを果たした。なおキックボクシングはオランダの名門ボスジム、MMAはフロリダのハードノックス365に拠点を置いて練習している。

これまでのUFCでの活躍はあっぱれの一言だ。2月のデビュー戦でジュニオール・アルビニを第2ラウンドでKOすると、6月のアレン・クラウダー戦ではわずか9秒でKO勝ち、さらに前回、11月のUFC 244ではベテランのアンドレイ・アルロフスキーを29秒で葬り去っている。そこからわずか5週間、今回は欠場のウォルト・ハリスの代打として今年4度目の出陣だ。

「2019年はすばらしい年になった。去年の今ごろはまだ田舎町出身の新米MMAファイターにすぎなかった。それなのに、こんなに早くトップ戦線に食い込んでいる」とホーゼンストライクは怒濤(どとう)の一年を振り返っている。

「実は(9秒KO勝ちとなった)クラウダー戦はスリナム国内では大ニュースとして報じられたんだ。試合直後には、スリナムの大統領から電話もかかってきたし、帰国したら誰もが自分の顔を知っていて、写真を撮りたがった。国の代表としての誇りを感じたよ」

アリスターはプレイステーションの中の人

ホーゼンストライクにとっては今回の対戦相手、オーフレイムは、キックとMMAの両方で成功した憧れの先駆者だ。

「アリスターにはリスペクトしかない。何しろ、ついこの間までプレイステーションで対戦していた相手なんだ。レジェンドだし、スタイルを持っている。彼のビッグマッチを見て育ったんだ。光栄だよ。自分にとっては大きなチャンスだ。ここで勝てばランキングでトップ10に入ることができるだろう」

ヘビー級で秒殺KOの山を築いて赤丸急上昇のホーゼンストライクの勢いは、どこか一時のフランシス・ガヌーを思わせる。思えばガヌーもオーフレイムをKOしてタイトルショットに手をかけたのだった。ホーゼンストライクもガヌーのことは強く意識している。

「今回の試合で勝ったら、次はガヌーと戦いたい。誰もがガヌーとの対戦を避けているようだから、僕がやってやる。みんな見たいだろ?」

「恵まれない子供たちに、自分を信じて頑張ればチャンスがあるんだというメッセージを伝えるために、スリナムで財団を設立したんだ。国も支援してくれている。自分も裕福ではなかったから、目標を達成するために一所懸命に頑張った。俺の経験が未来のファイターに勇気を与えることになってくれればいい」と話すホーゼンストライク。今やスリナムでのMMA人気をけん引する国民的英雄として、子供たちのためにも負けるわけにはいかない戦いが続く。

オーフレイム「再び輝くために」

キックボクシングのK-1、MMAのDREAMとStrikeforceという、2競技3団体でベルトを獲得(しかも同時に)、2競技を併せて90試合(本人談)の戦績を誇る日本でもすっかりおなじみのオーフレイム。

2017年12月にガヌー、2018年6月にカーティス・ブレイズに連敗を喫した際には、さしものオーフレイムも神通力が薄れてきたのかと思わせたが、その後、アルバカーキーのジャクソン・ウィンクMMAからコロラドのエレベーション・ファイトチームに移籍し、そこからセルゲイ・パブロビッチ、アレクセイ・オレイニクを連続で第1ラウンドKOして再び勢いを取り戻している。

「ファイトスタイルを相当アグレッシブに変えて、プレッシャーをかけることに力を入れている。その成果が出ている。しかるべき練習をしているからね。練習でいい流れを作れている時には、だいたい圧勝になるものなんだよ」と、オーフレイムは新しい環境でのトレーニングに手応え十分のようだ。

「自分も39歳になった。キャリアの終焉(しゅうえん)が近づいてきていることははっきりと認識している。ずっと戦い続けるわけにはいかないからね。ただ、自分はまだこのライフスタイルを楽しんでいるし、自分の戦いのレベルアップにも余念がない。今は試合が楽しみでならない。再び輝きたいんだ」

「自分の力が落ちたら、グローブを置くつもりだ。新しいコーチには、その時が来たら正直に教えてくれと頼んである。あと2年か3年戦えば、満足して引退することができると思う」と語るオーフレイムにとって、やり残していることがあるとすれば、それはUFCでのタイトル獲得だ。

「UFCチャンピオンになって、キャリアに有終の美を飾りたい――」枯れることを知らない野望を抱くオーフレイムが、ホーゼンストライクの高い壁になる。

【文 高橋テツヤ】
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