古川佳奈美・東京2020パラリンピックに最も近い知的障がい者卓球日本代表に直撃!

チーム・協会

【(C) Masashi Yamada】

2019年11月現在の世界ランキングは5位。日本の知的障がい者卓球界で最も東京2020パラリンピックに近い位置にいるのが22歳の古川佳奈美だ。2018年に開催されたパラ世界選手権の女子シングルスで銅メダルに輝き、2018年のジャパンオープンでも強豪を破るなど大健闘。そんな彼女は、明太子工場での勤務と卓球で超多忙な毎日を送っている。福岡にある練習拠点を訪ね、競技者としての原動力と素顔を探った。

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――中学で卓球を始めたという古川選手。現在は、障がいに理解のある井保啓太コーチに師事し卓球漬けの毎日を送る。どんな道を歩んできたのだろうか。


中学で卓球部に入部したのはなぜですか?

もともと体を動かすのは好きで、当初はソフトボール女子に憧れていました。みんなで熱くなりたい!って思ったし。でも、個人競技のほうが自分のペースでできるかなという思いもあり、いくつかの選択肢のなかで小学校からの友だちと一緒に卓球部に入ったんです。そのときはまさか自分が後で日本代表になるなんて思わなかったですけど(笑)


パラ卓球との出会いは?

中3のとき。普段から地元の大会に出ていたので、地元・福岡で行われた知的障がい者卓球のユース世代の大会に自然な流れで出場しました。そのとき、優勝候補だった選手を破って優勝したこともあり、日本知的障がい者卓球連盟の方にパラ卓球への参戦をすすめられたんです。それ以来、いろんな大会に出るようになりましたね。


障がいのクラス分けの認定を受け、2015年に初めての世界大会へ。どんな気持ちでしたか?

それはもう、めちゃくちゃ緊張しました。台湾の大会だったのですが、テレビで見るような世界で。赤いマットが敷いてあり、すごい舞台だなぁって。あとは、国内の試合と比べて審判も多くいて驚いたし、何もかもが新鮮でした。

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――古川選手が競技環境を変えたのは4年前。国内のライバルたちが台頭し、苦戦を強いられるようになったことがきっかけだった。

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現在の練習環境はお母さんがインターネットで見つけたとか?

そうなんです。高校では卓球部の活動がほとんどなく、遠方の卓球場に通ってプレーを続けていました。もちろん楽しかったのですが、そこでは年配の方と打ち合うことが多くて。今は小学生から高校生までのジュニアと練習していますが、レベルの高い地域の大会に出場していたり、中学総体に向けて特訓したりしている皆をすごく尊敬しているし、刺激をもらいます。


井保コーチはどんな存在?

コーチがベンチにいると安心できるんです。今年8月のジャパンオープンでリオパラリンピック金メダリストに勝利しましたが、国際大会では初めてコーチがベンチに入ってくれたことが大きかったんです。海外遠征となると帯同してもらうのはなかなか難しいですが、来年のパラリンピックは東京で開催なので! コーチの予定は絶対に空けてもらいます。


武器である「しゃがみ込みサーブ」も、コーチがEXILEの曲に合わせて教えてくれたそうですね。

コーチの教え方はすごくわかりやすいんです。すぐ頭に入ってくるから、しゃがみ込みサーブもすぐにマスターし、いまは5種類のサーブを使い分けて相手を崩しています。
平日は明太子の製造工場で働いてその後に練習をするのですが、毎日卓球場に来るのが楽しみで仕方ありません。コーチは私の表情を見て疲れているからとすぐに帰してくれることもありますが……。


現在は、東京パラリンピックを目指して厳しい練習を積んでいます。

卓球の練習量を増やしたほか、2年ほど前からジムに通い、下半身を鍛えています。サーブの安定性も増したかな? パラリンピックはリオの頃は手の届かないところだったし、簡単に出場できる場所ではない。でも、少しずつ近づいているのかな。このまま頑張って世界でのランキングをキープしていきたいですね。

【(C) 日本財団パラリンピックサポートセンター】

――「金メダルを獲れる技術力はある」。そう井保コーチが太鼓判を押すほどの実力を備える古川選手。そんな彼女が世界の頂を見据えて取り組んでいることとは?

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課題は?

集中力ですね。ジャパンオープンの準決勝では、これまで1セットも取ったことのない世界最強のロシア選手相手にフルセットの戦いができたんですが、相手がカットマンだったこともあって最後は集中力が切れてしまいました。今度の対戦では気持ちを切らさず絶対に勝ちたい。やっぱり普段から集中力を継続させる練習をするしかないと思います。自分では集中していないということがなかなかわからないので、コーチに活を入れてもらって立て直しています。


練習で重点を置いていることは?

スタミナ強化も課題なので、フットワーク練習にも力を入れています。その甲斐があって、いまではフルセットで戦っても疲れにくくなってきた実感はありますね!


試合前に必ずすることはありますか?

テンションの上がる音楽を聴いたり、気分を乗せるために、金色とかキラキラしたアクセサリーをつけるようにしています。あとはお化粧。いろんなスイッチの入れ方があると思うけど、試合前にファンデーション、チーク、リップを軽くつけるのが私のルーティーン。実はこれもコーチに「気合いの入れ方がわからない」と相談して始めたことなんです!


オフの楽しみは?

休日は自宅で休むこともあるけど、一時間以上かけてフルメイクして友だちと遊びに行きます。今日の髪色は紫が落ちてシルバーになったところですが、髪色に合わせてカラコンをつけたり、つけまつげをしたりして。行先は博多・天神とか。映画を見たり、タピオカドリンクなどそのときの流行を事前にネットで調べて向かいますよ!


年が明けたらいよいよ勝負の2020年です。

パラ卓球といえば肢体不自由と思いがちかもしれませんが、自分が活躍することで知的障がい者卓球を広めていきたいです。実際に世界選手権でメダルを獲り、注目されることも少し増えてきたように思うので、やっぱり結果を残すことが大事。東京パラリンピックの金メダルを目標にがんばります!


text by Asuka Senaga
photo by Masashi Yamada

※本記事は2019年11月に「パラサポWEB」に掲載されたものです。
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