“ホームランラグーン”設置による影響は? 千葉ロッテの選手たちが感じた変化

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【画像提供:パーソル パ・リーグTV】

ホームランラグーン設置でチーム本塁打数が大幅アップ??

 千葉ロッテマリーンズの本拠地・ZOZOマリンスタジアムでは、今季から外野席の手前に「ホームランラグーン」と呼ばれるエリアが設置され、フェンスの位置がこれまでより最大4メートル手前にせり出した。“ラグーン効果”があったのか、昨季まで8年連続で100本未満だったチーム本塁打数が、今季はリーグ3位の158本塁打に。千葉移転後最多となるシーズン本塁打数を記録した。ZOZOマリンスタジアムでの本塁打数も、昨季の36本(70試合)から、今季は72本(70試合)と倍に増えた。

 本拠地での本塁打数が予想通り増加した一方で、ラグーンによる本塁打はわずかに15本。“ラグーン弾”を放った選手を見ても、1番多かった選手で、レアード選手、鈴木大地選手、中村奨吾選手の3本だった。果たしてラグーンが設置されたことで、シーズン通して攻撃面に変化はあったのだろうか??。

 的場直樹一軍戦略兼バッテリーコーチ補佐は、「作戦面ではホームランが打てる打者のときに、走ってもいいというグリーンライトのサインをストップにすることはありましたけど、全体的に作戦面で変わったところはそこまでないですね」と話す。

 チームトップの32本塁打を放ち、ZOZOマリンで16本塁打を放ったレアード選手は、「自分自身はいいバッターだという気持ちをいつも持ちながら打席に入っている。マリンスタジアムをみると、やっぱりフェンスも近くなったし、自信をもって打撃ができている」と精神面でゆとりをもちながら打席に入れていると語っていた。

 チームではレアード選手に次ぐ24本塁打を放ち、ZOZOマリンスタジアムで12本のアーチを描いた井上晴哉選手は、「(ラグーンは)あまり関係ないですよ。入るものは入りますもん。中途半端な打球が入るのはあるかもしれないけど、大体そこまでいっていたらスタンドに入りますよ。そんなにラグーンがあったから変わったかと言われると変わっていないですね。ただ、フェンスの高さはずっと変えて欲しいと思っていました」と球場が狭くなったことで、特に大きな変化はなかったそうだ。

 また、シーズン自己最多となる17本塁打を放ち、ZOZOマリンスタジアムで6本塁打、チームトップタイとなる3本のラグーン弾を放った中村選手は、打撃面で変化したことはあったのだろうか??。

「しっかり振れば(スタンドへ)入るというのがあった。たとえばヤフオクドームとかだったら、角度をつけば入る感じはありましたけど、マリンに関しては(昨季まで)広くてフェンスが高いので、そういうのがあまりなかった。(今季は)そういう感覚が少しはあったと思います」

「ラグーンができたことも大きかったですが、フェンスが下がったことが一番大きかったと思います。フェンスがなくなったことによって、狭くなったというイメージがつきやすかった」と語ったように、打席での意識に変化がみられた。

本塁打数増加の一方で犠打数は減少

 チーム本塁打数が増加した一方で、犠打数は昨季の108から今季は92と減少。これについて的場コーチは、「ラグーンは関係ないですね」と話し、「初回は2番打者がバントで送るより、打って1,3塁、1,2塁の形でビッグイニングを作りたいという意図があった。その点で2番打者にある程度打てる選手を置いていましたね」と明かした。

 2番を打つことが多かった鈴木選手の犠打数が少なかったのも、ラグーンが設置されたからではなく、チームの方針として“ビッグイニング”を作りたいという意図があったからのようだ。

投手陣は被本塁打数が増加するも失点数は減少

 投手陣はというと、ZOZOマリンスタジアムでの被本塁打数が昨季の55本から74本と予想通り増加したが、失点数は昨季の296から288と、わずかながら減少した。

▼ZOZOマリンスタジアムでの投手成績
18年:70試合 被本塁打55本 失点296 防御率3.92
19年:70試合 被本塁打74本 失点288 防御率3.61

 正捕手の田村龍弘選手は、「3,4月は配球の面ですごく弱気になった部分があった。慣れてきたらだいぶ意識せずに配球できるようになりましたけど、多少の影響はありました」とラグーンに慣れるまでは試行錯誤したとのこと。

 後半戦からスタメンマスクを被る機会を増やした柿沼友哉選手も、「今のが入っちゃうのかと感じましたね。フェンスも低くなったので、ライナーでフェンスに当たっていたのが、そのまま入っちゃってというのがあった。狭さだけでなく高さもなくなったので、フェンスが低くて入っちゃうようになったのは感じましたね」と球場の狭さを肌で実感した。

 ただ、リード面では「気にしたかと言われたら、そこまでではないですね。いくところはいかないといけないと思います」とラグーンが設置されたことによる難しさはなかったようだ。

 投手陣に話を聞くと、チーム最多タイの8勝を挙げた種市篤暉投手は、「個人的にはそんな気にして投げてはないですね」と話せば、次ぐ7勝をマークした二木康太投手は、「狭くなって投げにくいはないですけど、ホームランは増えたのかなと思います」と語る。前半戦は先発陣の中心として活躍した岩下大輝投手も、「ローテーションで投げるというのが初めてだったので、(ホームランラグーンは)気にならず、いつも通りでしたね」と若手先発投手たちはあまり気にならなかったようだ。

 リリーフ陣では、益田直也投手の60試合に次ぐ58試合に登板した東條大樹投手が、「狭いなというくらい。気にならないわけではないですけど、別にやっていることは変わらない」と昨季と変わらず平常心を貫いた。

 今季からリリーフに挑戦し自己最多の54試合に登板した酒居知史投手も、投球面での変化は「特にないですね」と話し、「入ってしまったというのは、しょうがない。自分の球が高かったり、甘いところにいっている結果がラグーンに飛んでいる。ラグーンがあるから自分の投球の幅が狭まるというより、もっとやるべきことをやれば、『これでいくんか』というのが少なくなっていくと思います」と自身の投球を反省した。

 ラグーンが設置されたことで、チーム本塁打数と被本塁打数が増加したが、これは開幕前からある程度予想していたこと。捕手陣はシーズン序盤に配球面で苦労したようだが、慣れてくるにつれてしっかりと対応してきた。ラグーン設置2年目となる来季は、今まで以上にラグーンを味方に付け、よりマリーンズファンを楽しませてくれるのではないだろうか。

取材・文 岩下雄太
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