【日本代表監督単独取材】フットサルはラグビーW杯の成功に続けるか? ブルーノ監督が日本の関係者に求めること

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【軍記ひろし】

日本サッカー協会(JFA)は19日、11月25日から12月5日かけて実施するスペイン遠征向けた日本代表メンバー16名を発表。負傷離脱中の森岡薫(ペスカドーラ町田)や星翔太(名古屋オーシャンズ)、滝田学(ペスカドーラ町田)、仁部屋和弘(バサジィ大分)が招集外となったが、AFCフットサル選手権トルクメニスタン2020東地区予選(通称「東アジア選手権」)を戦っていないメンバーから6人がメンバー入り。特に八木聖人(名古屋オーシャンズ)は、1年半ぶりの代表復帰となった。

メンバー発表後、SALの単独取材に応じたブルーノ・ガルシア監督は、選考の理由や遠征の狙いといったスペイン遠征の話にとどまらず、2020年W杯を見据える“フットサル日本代表船団”の話題にも触れた。

代表チームの基準を下に判断して、4人を選んでいない

◆ブルーノ・ガルシア監督(フットサル日本代表)

──今回招集したメンバーについて。AFCフットサル選手権トルクメニスタン2020東地区予選(通称「東アジア選手権」)を勝ち抜いて、次に来年2月から3月に行われるアジア選手権本大会に向かいます。ベテラン勢が選ばれていないことや、八木聖人選手を招集したことなど、コンセプトを教えてください。

今回は(東アジア選手権よりも2人)人数が多くなっていることはありますが、実質80パーセントは前回までのリストを維持している状況です。そのなかで、4人が外れています。森岡薫、滝田学、星翔太、仁部屋和弘。新しく入っているのが、森洸、芝野創太、田村友貴、八木聖人。現地で合流する予定になっているのは、逸見勝利ラファエルと平田・ネト・アントニオ・マサノリ、清水和也です。

コメントすべき過不足があるとすれば3つです。その一つは、オルドス市で行われた大会と、タイ代表との国際親善試合のパフォーマンスを評価しています。外れた4人全員が同じ理由、同じ温度感というわけではないですが、基本的にはそのことがあります。

もう一つは、そこに代わって入ってきたメンバーについて。森洸、田村友貴、芝野創太はタイ代表との試合にも参加してもらっています。一方で、八木聖人は、(2017年の)アジアインドアゲームズ以来リストに入っていて非常によくなっていましたが、ケガで招集できていませんでした。イメージとしては、加藤未渚実と同じように、ここからメンバーに食い込んでいってほしいというところでケガをしてしまいました。八木については、そういうイメージで捉えています。

それと、今回招集したメンバーのもう一つのグループは、欧州にいる平田ネトアントニオマサノリと逸見勝利ラファエルです。彼らはタイ代表との試合に呼べませんでした。ただし、逸見はもともと中核という選手の位置づけであり、今回はタイミング、状況が合ってきてもらうことになりました。平田選手は八木選手と同様に、ヨーロッパですごく力をつけている状況がありますし、最近のトレーニングキャンプでも適性を示してくれていましたので、そういった理由で選んでいます。

──一つ目の、ベテラン4選手が外れたところに関してですが、もちろん彼らへの信頼を置いた上で、コンディションや様々な状態を加味して呼んでいないということですか?

私たちはこれまでも、プランを立ててリストを作ってきています。その基準となっているのは、オープンなリストであることとポジションバランスが考えられています。それぞれのポジションに複数の選手がいて、個々の選手の状況に変動があったとしても、チームとして最適な状態を崩すことがないようにしてきました。

そのなかで、機会を得た全員が、その活動のなかで最大限の有効活用をしてほしいですが、代表チームのミッションは決まっています。そこで最適な状況、状態にあるパフォーマンスを期待できるチームで戦っていきたいと考えたときに、その基準を下に判断して、その4人に関しては、今回は新しいメンバーにチャンスが回ってきたということです。

このままのレベルを維持すれば内村俊太の復帰は近い

──もう一つのところですが、新たに入った八木選手について。直近の試合でコンディションが上がり、高いパフォーマンスを見せている選手がたくさんいると思います。例えば、湘南ベルマーレの内村俊太選手もその一人ではないかと思います。そういった選手がいるなかで、八木選手を選んだ理由とは何でしょうか?

みなさんが、監督や指導者のマインドで選手を見て意見を持つことは、このスポーツの素晴らしさでもあると思いますし、視点を豊かにしてくれるものです。おっしゃるような状況は過去にも味わってきました。

2018年の加藤未渚実がそうですね。アジア選手権直前で招集した際にも、同様の質問をされたことを記憶しています。結果的には、アジア選手権のメンバーには選ばれず、その後の代表活動で中軸となっていった経緯があります。そういったものは、戦略的に判断をしています。これまでのいろいろな経緯、自分と一緒に仕事をしてきているときのパフォーマンスや関係性、チームでの最適なあり方、参加の仕方なども含めてすべてで判断しています。ですからそこは、自分の戦略の一環で八木を招集しているということです。

それでもう一つのポイントとしては、まさにおっしゃった通り、内村については、自分も含めていいパフォーマンスをしているなというふうに思いますし、調子がいい選手はそうやって目立ってピッチに(好調が)出ていると思います。実際に、本人とも話をしました。「そのパフォーマンスのレベルを維持できていれば“復帰”は近い」というコミュニケーションを取りました。では今回はなぜ呼んでいないのかというと、それはそれで、彼はまさに「復帰」と話したように、過去にきてもらっていて、そのときのパフォーマンスやリアクションもありましたから、そういったものを加味しています。なおかつ彼は、クラブと代表チームで求められるプレースタイルに違いがあります。今年に入って少しまた変化していますが、特に昨シーズンはそれが大きくありました。そういった背景もあるので、トータルで考えたときにこういう順序になっています。

ただし、復帰が近い状況にあるということは言えます。後は、みなさんご存知のことで、リマインドのような話になりますが、代表チームの招集リストとは実際に、戦略の下に判断していきますが、遠征などに向けては、パッと集めた最強メンバーを翌日から連れて行くわけにはいきません。リストを固めて名前を入れていく作業は、実際には1カ月くらい前には決めないといけない背景があります。ですから、このリストが作られた後にも、内村の試合については3回、試合を視察しました。1カ月前から最近の共同開催も見ていて、そこで好調な曲線を描いていたことは間違いありません。ですが、そういったことも合わせて考えて、こういったリストになっているということです。

「前向き視点」で選手に力を与えてほしい

──今回はスペイン代表との対戦がありますし、いろんなチャレンジを考えていると思いますが、この遠征における狙いやテーマを教えてもらえますか?

オルドス市での大会を終えて、アジア選手権の出場権を獲得して、今後はそこに向けての活動を進めていく第一弾となるわけですが、主に2つのテーマがあります。一つは全般的な継続、強化をしていくこと。もう一つは、ポイントポイントで、特定の相手、ライバルに対してどういった準備をしていくのかということをシュミレートしたスペイン代表との試合となるので、その意味合いとしては、世界基準の国に対して、我々がどの位置づけにあるかを計るための機会でもあるということです。

自分が来てからは、すべて実現しているわけではないですが、対外試合を組むときには、基本的にそういった、なるべく高い基準を持っているチームと対戦することで自分たちの立ち位置を計りたいと考えてきました。だからこそ、遠征でイラン(2018年9月)やポルトガル(2018年10月)と対戦したり、アルゼンチン(2018年1月)にきてもらったりしました。今回はスペインに行きます。それによってこそ、初めて、私たちの強化の進捗状況がわかるのかなと思っています。

──僕らメディアも、来年のW杯を目指す日本代表チームの船に一緒に乗り込んでいると思っています。今年はラグビーW杯が大きな盛り上がりを見せましたが、フットサルもそこに向かっていけたらと考えています。もちろん、まずはアジア選手権に勝利してW杯の出場権をつかむことが何より大事ですが、その先に必要なことがあると思います。どうやって代表チームと一緒に進んでいけるか、いつもオープンにお話しいただけるブルーノ監督の協力も仰げたらと考えています。そういう意味で、フットサルという競技を、日本国内で盛り上げていくという視点で感じていることはありますか?

私もみなさんと同じように、乗組員の一員だと思っています。代表チームが置かれている背景にはいろんなものがあります。そのなかで一番、感じているのは「国」であり、それを支える「サポーター」のことです。それと、代表チームと相互に協力し合っている「クラブ」や「メディア」、「スポンサー」など、いろんな方がいると思います。そこで、みなさんが「自分たちもメンバーとして参加しているんだ」という感覚を持つことは、本当に重要なことです。自分は思ったことはハッキリと口にするし、思っていないことは言わないというタイプの人間だと自認しています。

2016年に日本代表はW杯に行けませんでした。来日前にも想像はしていましたが、もう3年が過ぎましたから、日本の方々がどんなメンタリティを持っているかはだいぶわかるようになりました。というところで、自分の視点であえてお願いがあるとすれば、「これを逃したらどうなるか」ではなく、「これが行けるようになったらどう変わっていけるか」にフォーカスした表現に重きを置いてもらえたらいいなと。

実際に3年間、(2020年の)アジア選手権を勝ち抜いてW杯に行くんだということを目指してきましたし、どこでどんな発想が生まれて取り組んできたのかを、無視しているわけではありません。2016年に起きたことは、現実として認識しています。「前向き視点」、「後ろ向き視点」があったときに「前向き視点」に重心を乗せた話をしていきたいということが私の願いです。

そういうふうにサポートしてくださるとどんなことが起きるのか。今回、リストに入って競争している選手、選ばれた後に競争している選手に対して、大きな力になります。自分だけではないですが、実際にW杯に行って、それを味わうということは、違う世界です。経験がある人もいると思いますが、その違いがあるからこそ、そこを目掛けて前向きにいきたいです。そして全員で、それを味わうに値する経験を、W杯でするということです。
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