WALK TO THE DREAM 果てしなき夢へ 〜いわきFCの大いなる野望 第3回 JFL昇格に立ちはだかる関門「地域チャンピオンズリーグ」へ(前編)

いわきFC
チーム・協会

【©IWAKI FC】

第3回 JFL昇格に立ちはだかる関門「地域チャンピオンズリーグ」へ(前編)

東北社会人1部リーグで優勝を果たし、2019年最大の目標であるJFL昇格への最大の関門「全国地域サッカーチャンピオンズリーグ2019」(以下地域CL)への進出を決めたいわきFC。

 この大会に先立ち、いわきFCは10月12日〜16日「第55回全国社会人サッカー選手権大会」(全社)に参戦した。全社とは、全国の地域リーグ以下の社会人チームのナンバーワンを決めるトーナメント。いわきFCはチーム立ち上げの2016年から、この大会への出場を続けてきた。

 最大5日間で5連戦という過酷なスケジュールで知られる全社の舞台で、チームはどんな収穫と課題を得たのか。地域CLを1週間後に控えた10月末、田村雄三監督に話を聞いた。

■社会人サッカーでは、極めて異質な存在。

【©IWAKI FC】

「全社には4回目のエントリーでしたが、今年は最も手応えを感じることができました」

 大会を振り返り、田村監督はそう語る。

 チーム立ち上げ初年度の2016年は準々決勝で敗退。2017年は2回戦敗退。昨年は準決勝で敗れ、3位決定戦に勝利したものの、目標としていた優勝には届かなかった。全社のタイトル獲得はJFL昇格に次ぐチームの大目標だった。

「これからも続くクラブの歴史のために、今年こそ全社のタイトルを獲る」

 すでに東北社会人1部リーグでの優勝を決め、地域CLへの出場権は取れていた。だが、いわきFCは全社のタイトルにこだわった。この大会には地域CLに出てくるチームが多くエントリーしており、チームの完成度を図る格好の機会。そして5日間で最大5試合というハードスケジュールを戦い抜くことは、地域CLに向けて貴重な経験にもなる。チームはそう考えていた。

 初戦の相手はブリオベッカ浦安。試合の入りは硬かったものの、JFL参戦経験のある難敵をPKでどうにか下した。そしてChukyo univ. FC、常葉大学浜松FCに勝利し、準決勝に進出。

 相手は一昨年の2回戦で敗れ、昨年の3位決定戦では勝利したおこしやす京都。Jリーグ参入を目指すクラブであり、地域CL出場も決まっている強豪に対し、いわきFCは前半18分と20分、DFの裏に蹴り込まれたロングボールから立て続けに失点。そして攻撃では、おこしやすの厚い守備を崩せず、2対0で敗れた。

 3位決定戦では横浜猛蹴に7対1で圧勝。昨年同様の3位で大会を終えたものの、今年もまた課題の残る結果となった。

「準決勝の内容は悪くなかった。昨年や一昨年の負け方と比べて、自分達のスタイルを出せたと思っています。もちろん2失点とも原因はこちらのミスですが、DFの背後のスペースを狙われたのは、自分達のスタイルを貫いた結果でもある。待ってカウンターではなく、自分からアクションして敵陣でボールを奪い、積極的に前に出て行く。そんな戦い方ができているからこその2失点だったと、ポジティブに解釈しています」

 社会人の地域リーグに、前からボールを積極的に奪いに行くチームは少ない。そんな中で、運動量と走力で圧倒し、どんどん前に出ていくいわきFCのプレースタイルは、社会人サッカーの中では極めて異質な存在といえる。そして、だからこそ生まれるウィークポイントを、相手が巧みについた結果が、全社での負けだった。問題はロングボールによる失点よりも決定力不足。決めるべきところをしっかりと決められていたら、まったく違う展開になっていただろう。

「全社で出た悪い点は、地域CLまでに改善したい。地域CLではほんの些細な判断ミスが命取りになるし、引いてくる相手に対し、少ないチャンスをしっかりと決め切らなければ勝つことはできない。それを実感できたとすれば、全社での負けを価値あるものにできる。悔しい敗戦でしたが、JFL昇格に向けた起爆剤にしていきたい」

■交代によって選手達にメッセージを送る。

 全社5試合の戦い方の大きな特徴が、ターンオーバー制を駆使したことだった。昨年の全社ではメンバーをほぼ固定して5試合を戦い抜いた。だが、今年は5試合をフル出場した選手はいない。最も長く出場した選手で約3.5試合にとどまった。

「地域CLまで約ひと月でしたから、ここでシリアスな負傷者は出せない。一番の大舞台の1カ月前に5日で5試合というハードスケジュールをこなすのは、負傷のリスクがある。でもその一方、ハードな5連戦をこなして勝ち癖をつけることにも、大きなメリットがある。それだけに、選手のコンディションの見極めと起用法には気を使いました」

 ただし、今年ターンオーバー制を採用した目的は、選手の消耗を避けることだけではない。チームは今年の初めから地域CLを想定し、選手交代で戦い方のバリエーションをつけることに注力してきた。優れた特徴を持つ選手に役割を理解させて交代で起用し、サポート役となる選手を上手く組み合わせ、戦術のバリエーションをつける。その理想的な選手の組み合わせを、1年を通じて見極めてきた。

【©IWAKI FC】

「ターンオーバーはチーム立ち上げ当初から取り組んできましたが、これまでと今年では意味合いが異なります。以前のターンオーバーは、動きが落ちてきたから、調子が悪いから代えよう、というもの。それに対して今年は、例え体力が落ちていなくても、試合の状況や時間帯に応じて交代させ、戦術のバリエーションをつけています。

 例えば、試合の残り15分でFW片山紳を使う意味は何なのか。そして彼を生かすために、周囲の選手はどう動けばいいのか。そういった交代がピッチ上にいる選手へのメッセージとなり、相手チームをどう攻略すべきかについて、自然と共通認識を持てる。そんな状態を目指してきました。これは新入団選手のレベルが年々上がり、さまざまな戦い方を柔軟にこなせるようになったことも、大きな理由です」

(後編に続く)
文・前田成彦
編集者。いわきFC関連の執筆の他、広報誌『Dome Journal』(http://www.domecorp.com/journal/)、スポーツニュートリションブランドDNSのオウンドメディア『Desire To Evolution』(http://www.dnszone.jp/sp/sp/magazine/)の編集長を務める。
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著者プロフィール

「いわき市を東北一の都市にする」ことをミッションに掲げ、東北社会人サッカーリーグ1部を戦う「いわきFC」の公式アカウントです。

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