ROOM 〜いわきFC総監督・大倉智の論説〜 「JFL」の二つの顔。

いわきFC
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【©IWAKI FC】

「JFL」の二つの顔。

いわきFCが掲げる今年の目標は、東北社会人1部リーグで優勝し、全国地域チャンピオンズリーグで上位に入って、JFL(日本フットボールリーグ)に昇格することだ。

 今回はわれわれが目標とする、JFLという舞台について考えてみたい。

 実はJFLというリーグは、世界的に見て非常に珍しい存在である。理由は、その複雑な構成にある。JFLで戦うチームは大きく分けて3種類。将来のJリーグ参入を目指すプロ(セミプロ)チームと、そして企業のサッカー部を母体とする実業団チーム、大学のサッカー部が混ざり合って戦うリーグなのだ。

 その中で、例えばFC今治や東京武蔵野シティFCはすでに「Jリーグ百年構想クラブ」に認定され、JFLでの上位進出そしてJ3昇格を目指している。それに対しHonda FCやソニー仙台FC、流通経済大学ドラゴンズ龍ケ崎などに、Jリーグへの参加意志はない。彼らの目標はあくまで、JFLでの優勝だ。

 つまりJFLには「J3への登竜門」と「アマチュアクラブの最高峰リーグ」という二つの顔がある、ということだ。

 ヨーロッパや南米では、1部リーグから2部、3部とカテゴリーを下げていくと、若い選手が増え、スキルは劣るもののプレーはどんどん激しくなる。ある意味、サッカーの本質に近づいていく。仕事をしながらプレーする選手も多いが、皆が昇格を目指し、闘争心むき出しで戦う。そこには、1部リーグを頂点とした明確なピラミッド構造がある。

 それに対して日本はどうだろう。J1を頂点とする日本のサッカーリーグの構造は、少々いびつだ。

 J1からJ3までのプロリーグで、最も激しいプレーが展開されるのはおそらくJ1だろう。下のカテゴリーでは、かつてJ1でプレーしていた経験豊富なベテランが円熟味のあるプレーを見せることはあるが、試合のテンポはややスローダウンする。正直、下のカテゴリーに行くほど、サッカーの本質ともいえる激しいプレーは減る印象がある。

 そしてJFLはJ3の下に位置づけられているが、実際のレベルはほぼ同等。しかし、そこにはJリーグ参入を目指すプロ(セミプロ)チームと、Jリーグ参入を目指さない実業団や大学のサッカー部が混在し、チームによってリーグ戦を戦う理由と目標が異なる。

 いわきFCは将来のJリーグ入りを視野に入れている。だからJFLに昇格したら、Jリーグ入りを目的としない実業団クラブや大学のサッカー部と戦いながら、J3を目指すことになる。だが、従業員の福利厚生のために作られた企業のサッカー部や大学のサッカー部と、震災をきっかけに生まれ、スポーツによる社会価値の創造と地域貢献を目指すいわきFCとは、バックボーンも社会におけるあり方もまったく異なるはずだ。

 明確なヒエラルキーのもと、同じ志を持ったチームが集まり、切磋琢磨しながら上のカテゴリーを目指す。それがリーグ本来の姿だと思う。そしてJFLは将来「Jリーグ入りを目指さぬアマチュアクラブの最高峰リーグ」と定義されるべきではないだろうか。

 昇格を目指す戦いが迫る中、ふと、そんなことを考えてしまった。

【©IWAKI FC】

【大倉 智】
1969年、川崎市出身。東京・暁星高で全国高校選手権に出場、早稲田大で全日本大学選手権優勝。日立製作所(柏レイソル)、ジュビロ磐田、ブランメル仙台、米国ジャクソンビルでプレーし、1998年に現役引退。引退後はスペインのヨハン・クライフ国際大学でスポーツマーケティングを学び、セレッソ大阪でチーム統括ディレクター、湘南ベルマーレで社長を務めた。
2015年12月、株式会社いわきスポーツクラブ代表取締役に就任。現在はいわきFC総監督も兼務する。
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著者プロフィール

「いわき市を東北一の都市にする」ことをミッションに掲げ、東北社会人サッカーリーグ1部を戦う「いわきFC」の公式アカウントです。

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