井口監督の優しさを感じた福浦引退試合

千葉ロッテマリーンズ
チーム・協会

【子供たちと嬉しそうに場内1周をする福浦選手】

指揮官の優しさが作り出したセレモニーとなった。9月23日に本拠地ZOZOマリンスタジアムで行われた福浦和也内野手の引退試合。試合後のセレモニーで場内1周をする福浦の横には中学3年の長男と小学5年生の次男が付き添っていた。これは井口資仁監督のアイデア。最初は一人で歩きだした福浦を見て、子供たちに促した。

 「人生に一度の事。せっかくだから子供たちも一緒に場内1周をすればいいじゃないか」

 ベンチ横でスタンドに手を振る父の姿を見ていた2人は戸惑いの表情を見せた。

 「本当に行っても大丈夫ですか?」、「場違いじゃないですか?」。

 心配げに口にした2人。ただ、監督が優しい表情でコクリと頷いたのを見て走り出した。本当は一緒に場内1周をしたかったのだ。

 大量の紙吹雪が舞う。スタンドのファンが用意した花束を父が受け取る。その姿を誇らしげに見守った。花束を渡しきれなかったファンがいた時には父にそのことを伝える役もこなしていた。なんとも誇らしい光景だった。

 試合前に父と子の始球式の場を提供したのも指揮官だった。昨年も引退をした根元俊一、岡田幸文、金沢岳の引退試合で親子始球式を提案した。その瞬間は最高の思い出として彼ら引退選手の胸の中に今でも残っている。だから今年も同じ場を提供。野球が大好きな福浦の次男が初めてZOZOマリンスタジアムのマウンドに上がった。父が打席に立ち、万雷の拍手を受け、ボールを投じた。2人にとって最高の時間となったはずだ。

 そもそも福浦はこの試合では1打席だけのつもりでいた。試合前日、井口監督から突然の電話がかかってきた。「明日はスタメンで行くぞ。7番DH。試合の終盤ではDHを解除して一塁も守ってもらう。準備をしておいてくれ」。驚いた。チームが勝つか負けるかでAクラスかBクラスかが決まる瀬戸際。今年、一度も一軍に昇格をしていない自分がスタメンとは思いもよらなかった。だから固辞した。「大丈夫。決めたから」。そう言って電話は切れた。翌朝、球場入りするとすぐさま監督室に直行。再度、起用について話し合った。「監督、お気持ちだけで十分です」と頭を下げる福浦に指揮官は「なにを言っているんだ。すべての打席に立ってもらう。この方針は絶対に変えない」と突っぱねた。何度も固辞したが指揮官の固い決意と情熱に押され、最後は福浦が折れた形だった。

 試合は6対1で勝利。最終回に守り慣れたファーストの守備にもついた。2アウト。最後の打球はライナーで福浦のミットに収まった。ヒットこそ出なかったが演出家として井口資仁監督の思い通りの展開となった。

 「さすがだね。最後に福浦のところに打球が飛んできて、しっかりとウィニングボールを自分の手で掴んだ」

 紙吹雪が舞うグラウンドを1周する福浦と息子たちを見つめながら井口監督はなんとも嬉しそうな表情を浮かべた。本当に優しき男だ。その優しさに人は惚れ、ついていくのだ。

千葉ロッテマリーンズ広報メディア室 梶原紀章
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