2022ドラフト候補選手ランキング 総合編(5月版)

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ここからはアマ球界に詳しい西尾典文氏に、「高校生」、「大学生」、「社会人・独立リーグ」の3つのカテゴリーごとに、2022年のドラフト候補ランキングを作成してもらう。「将来性」(20点満点)と「完成度」(20点満点)の2項目で採点し、その合計点で上位10人を選出した。

※項目は横にスクロールします。

■採点の評価値は以下の通り。
・将来性
19~20:MLBで一流になれる
16~18:MLBで活躍できる
11~15:NPBでタイトルを獲得できる
6~10:NPBでレギュラークラス
1~5:NPB(一軍)で戦力になる

・完成度
19~20:NPBで1年目からタイトルを狙える
16~18:NPBで1年目からレギュラークラス
11~15:NPBで1年目から一軍戦力
6~10:NPBで1年目から二軍の主力
1~5:NPB1年目は育成期間

順位 選手名(所属) 合計点 将来性 完成度 ポジション 身長 体重 投打
1 矢澤宏太(日本体育大) 28 13 15 投手兼外野手 173センチ 72キロ 左左
2 蛭間拓哉(早稲田大) 26 14 12 外野手 176ンチ 85キロ 左左
3 吉村貢司郎(東芝) 25 8 17 投手 183センチ 84キロ 右右
4 山田健太(立教大) 23 12 11 内野手 183センチ 90キロ 右右
4 澤井廉(中京大) 23 12 11 外野手 180センチ 100キロ 左左
6 曽谷龍平(白鴎大) 22 12 10 投手 182センチ 79キロ 左左
6 荘司康誠(立教大) 22 14 8 投手 188センチ 91キロ 右右
8 河野佳(大阪ガス) 21 10 11 投手 176センチ 80キロ 右右
9 田中晴也(日本文理) 19 14 5 投手 186センチ 92キロ 右左
10 内藤鵬(日本航空石川) 18 14 4 内野手 180センチ 100キロ 右右

解説

5月時点での総合ランク1位は、日体大の矢澤。ネガティブな意見もあるが、そのスター性や二刀流の価値を高く評価する球団が、獲得に名乗りを上げそうだ(YOJI-GEN)

 総合ランキングのトップ10をカテゴリー別に見ると、大学生が6人、高校生と社会人が2人ずつという結果になった。やはり今年のドラフトは、大学生中心となる可能性が高い。

ただ、一昨年の早川隆久(早稲田大→楽天)と佐藤輝明(近畿大→阪神)、昨年の隅田知一郎(西日本工業大→西武)のように、特定の選手に1位入札が集中することは現時点では考えづらい。各球団の補強ポイントや方針によって、かなり評価が分かれそうだ。
 
 総合1位の矢澤宏太(日本体育大)を狙うのは、目先のメリットよりも、そのスター性や二刀流の価値を高く評価する球団だろう。「投手として考えた場合、能力的に物足りない」、「スラッガータイプではない大学生の外野手を、わざわざ1位で指名する必要性を感じない」といったネガティブな意見も確かにあるが、プロでも二刀流としてプレーできる可能性を秘めた選手は、そうそう出てくるものではない。大谷翔平(エンゼルス)とはまた違った形であっても、こうした選手を獲得すれば、球団にもたらすプラスの側面はきっと大きなものになるはずだ。
 
 2位以下には蛭間拓哉(早稲田大)、山田健太(立教大)、澤井廉(中京大)と強打者タイプの大学生が名を連ねたが、総合的に見ると蛭間がわずかにリードしている印象を受ける。

 この春の東京六大学では、チームの低迷と対戦相手の厳しいマークもあって、5月15日時点でホームランなし、打率も2割台前半の蛭間だが、8安打中7安打が長打で、出塁率は5割近い数字を残すなど持ち味は発揮している。安定して長打を打てるという意味では今年のドラフト候補の中でもナンバー1で、さらに脚力があるのも大きな魅力だ。順調に育てば金本知憲(元広島、阪神)のような外野手にもなれるだろう。

 山田も広角に打てる上手さと堅実な守備、澤井も蛭間に負けないパワーと強肩を備えているだけに、確実に強打者を補強したい球団が1位で指名してくることは十分に考えられる。
 
 高校生の野手では内藤鵬(日本航空石川)と、惜しくもトップ10からは漏れたものの浅野翔吾(高松商)の2人が中心となりそうだ。

 以前であれば内藤は100キロという体重、浅野は上背のなさがマイナスポイントとなったかもしれないが、現在のプロ野球界では長打力のある選手を重視する傾向があり、彼らはそのトレンドに合致する素材と言っていい。内藤はパワーだけでなく柔らかさと強肩、浅野は運動能力の高さと守備の万能性といった具合に、長打力以外の長所がある点もプラス要素だ。

例年以上に投手には即戦力候補が少ないが、その中でも東芝の吉村と並び、社会人で高い評価を受けるのが、大阪ガスの河野。20歳という若さも魅力だ(写真は共同)

 一方の投手だが、例年以上に即戦力候補が少ない。大学生で上位にランクインした曽谷龍平(白鴎大)と荘司康誠(立教大)も、スケールは大きいが完成度はまだ低く、将来のエース候補といった印象だ。この春はともに成長した姿を見せているが、1位候補となるにはさらに安定感をアップさせる必要がある。

 計算が立つ投手として頭ひとつリードしているのが、総合3位に入った社会人の吉村貢司郎(東芝)だ。昨年の都市対抗から高いパフォーマンスを維持しており、1年目から一軍のローテーション入りも期待できる。投手陣の立て直しが急務の球団は手を挙げるだろう。また高卒3年目の河野佳(大阪ガス)も、凄みこそないが安定感は申し分なく、20歳という若さも評価につながりそうだ。
 
 ここからの約半年で大きく評価が変動しそうなのが、高校生の投手だ。総合トップ10に入ったのは田中晴也(日本文理)だけだが、この春になって斉藤優汰(苫小牧中央)、門別啓人(東海大札幌)の北海道勢2人をはじめ、ひと冬を越して成長を感じさせる投手は少なくない。

 現高3は、高校に入学した年の夏の甲子園がコロナ禍で中止となった世代。そのため実戦経験が不足しており、本格化のタイミングがどうしても遅れ気味だが、高校生の成長スピードはわれわれの想像をはるかに超えてくる。最後の夏に才能を開花させ、一躍1位候補に名乗りを上げる投手が出てきても不思議はない。
 
 いずれにしても、この5月の段階では圧倒的な存在感を放つドラフト候補は見当たらず、夏以降にランキングがガラッと変わる可能性は大いにありそうだ。6月の全日本大学野球選手権、7月の都市対抗野球、そして高校野球の夏の地方大会と甲子園で新たなスターが出現すれば、ドラフト戦線は一気にヒートアップするだろう。

【監修・解説:西尾典文】
(企画・編集:YOJI-GEN)

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