「主導権は日本だった」それでも韓国に軍配 勝者側から見たアジア大会男子サッカー決勝

スポーツナビ

【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 2026年10月3日、愛知・豊田スタジアム。アジア競技大会の男子サッカー決勝は、宿命のライバルである日本と韓国の対戦となった。3万人を超える観衆が見守った一戦は、61分に生まれたゴールが決勝点となり、1-0で韓国が勝利。歓喜に沸く韓国の選手たちを横目に、日本の選手たちはピッチに膝を折った。

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 しかし、この試合のスタッツシートは、スコアとは異なる様相を呈していた。ボール保持率は日本が58%で韓国の42%を上回り、シュート数も日本の10本(枠内2本)に対し、韓国は5本(枠内2本)。コーナーキックに至っては日本が5本を獲得したのに対し、韓国は0本だった。

 数字の上では日本が試合の主導権を握っていた。では、なぜ勝てなかったのか。その問いの答えを探る鍵は、皮肉にも勝者である韓国の選手たちの言葉の中にあった。彼らは、このファイナルをどのように見ていたのだろうか。

「主導権を奪われていた」勝者の認識

「主導権を奪われている」オム・チソン(右)はそう感じながら戦っていた 【写真:ロイター/アフロ】

「僕たちがずっと主導権を奪われている状況だった」

 試合後、こう振り返ったのは決勝ゴールを決めた韓国のMFオム・チソンだ。彼の言葉は、試合のスタッツが示す内容と完全に一致する。韓国チームは、自分たちが劣勢に立たされていることを明確に認識しながら戦っていた。

 守備に追われる時間が長く、自陣で耐えることを強いられる。韓国がボールを保持して攻撃を組み立てる機会は限られていた。公式記録が示すコーナーキック0本という数字は、韓国が日本陣内深くまで攻め込む機会を作れなかったかを象徴している。

 敗れた日本側は押していたのに勝てなかったと感じているかもしれない。だが、興味深いのは、勝った韓国側も「主導権を奪われていた」と認識していたことだ。

耐えながら待った「たったひとつのチャンス」

オム・チソンのゴールシーン。待っていた「ひとつ」をものにした 【写真:ロイター/アフロ】

 劣勢を自覚していたからこそ、韓国の戦い方は極めて明確だった。オム・チソンは続ける。

「本当にひとつだけを待っていたという感じでした」

 守勢に回る時間が長い中、オム・チソン自身はその「ひとつ」を待っていた。それは、チーム全体で共有された戦術思想だった。イ・ミンソン監督が「結果が最も重要」と語ったように、彼らにとって内容や美しさよりも、勝利という結果そのものが至上命題だった。

 オム・チソンも「競技力よりは試合結果を持ち帰らなければいけないのが、より重要だと考えた」と語る。たとえ相手にボールを支配され、シュートを何本打たれようとも、焦りはない。自分たちのやるべきことは、堅固な守備を維持し、訪れるであろう数少ないチャンスを確実にものにすること。その一点に絞られていた。

 話は少し逸れるが、韓国側が結果にこだわるのは理由がある。もちろんアジア版の五輪であることもそうなのだが、韓国選手はアジア競技大会で金メダルを獲得すると、兵役義務が免除される。現役でいられる期限が限られるアスリートにとって、2年の兵役期間は重い。その免除を勝ち取るために、韓国はU-23のメンバーに加え、オーバーエイジ枠まで活用している。U-21のメンバーを中心に臨んでいる日本とは、戦力的にもモチベーション的にも優っていたと言わざるを得ない。

 そして韓国に61分、その「たった一つ」が訪れる。一瞬の隙を突いて日本のゴールネットを揺らし、それが決勝点となった。主導権を握りながらもゴールをこじ開けられなかった日本と、劣勢を受け入れワンチャンスをものにした韓国。両者の対照的なメンタリティが、スコアボードに1-0という結果として刻まれた。

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