「なるようになるので、見ていてください」 鈴木唯人のもどかしさと手応え 日本代表で探るフライブルクとの接点

舩木渉

エクアドル戦で先発した鈴木唯人。フライブルクでの好調を日本代表でも生かそうと試行錯誤を続けている 【写真は共同】

クラブで絶好調でも、代表では残るもどかしさ

 所属クラブで見せているプレーと、代表チームでのパフォーマンスが釣り合わない選手は決して珍しくない。例えばリオネル・メッシも、かつては「バルセロナでは輝けるが、アルゼンチン代表では活躍できない」「ディエゴ・マラドーナのようにアルゼンチンにタイトルをもたらせる選手ではない」と厳しく非難されていた。

 森保一監督が率いて3期目を迎えた日本代表では、鈴木唯人が所属クラブと代表チームとのギャップに苦悩している。

 2024年6月の北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選・ミャンマー戦で日本代表デビューを飾った鈴木は、その後も断続的に招集され、2026年の北中米W杯本大会でもメンバー入りを果たした。

 10月1日に行われたキリンカップサッカー2026のエクアドル戦では、先発起用でA代表9キャップ目を刻んだ。しかし、ゴールやアシストは記録できず。日本代表は前後半を0-0で終え、PK戦の末に決勝へ駒を進めたものの、鈴木は「もうちょっと何かやりたかったなという感覚はすごく残っている」ともどかしさを抱えたまま報道陣の取材に応じた。

「フライブルクの時に比べると、ドリブルでスルスルといくようなシーンは少なかったですし、もうちょっと面白いことができたら良かったなと思います」

 それでも「近くの選手との関係性で言えば、少なからず良くなってきている感覚はあります」と、光をつかみかけてはいる。あと少し歯車がかみ合えば、一気に前へ進めそうな気配は出てきた。

 北中米W杯は不完全燃焼に終わった。所属するフライブルクではUEFAヨーロッパリーグ(EL)決勝進出に貢献するなど充実のシーズンを過ごしていたものの、W杯直前に鎖骨を骨折した影響もあって大会中にコンディションが上がりきらず、ピッチに立てたのはグループステージ第2戦・チュニジア戦の終盤のみ。

 ブラジルに屈してラウンド32での敗退が決まった翌日には「何かやれる、何か残そう、何か残せると個人的には思っていたので、何もできないで終わってしまったという不完全燃焼な気持ちが強い。そこに関しては実力のなさと受け止めるしかない」と、心の底からの悔しさを打ち明けた。

 だが、W杯が終わって迎えたフライブルクでの新シーズンは、ブンデスリーガ開幕戦でハットトリックを達成するなど圧巻のパフォーマンスを披露。日本代表合流直前のフランクフルト戦でもゴールを挙げ、リーグ戦4試合出場4得点と絶好調を維持したまま帰国した。

「W杯は不完全燃焼に終わったので、そのパワーをうまく今シーズンにつなげられている。W杯があったおかげで今こうなれているのは間違いないし、全てポジティブに感じている」と充実した様子で森保ジャパンの活動に参加していた鈴木は、9・10月シリーズの初戦となったキリンチャレンジカップのウルグアイ戦で左シャドーとして先発起用された。

 チームは南米の強豪ウルグアイに3-1で快勝し、松木玖生や塩貝健人がA代表初ゴールを決めるなど収穫の多い一戦となったが、77分までプレーした鈴木はノーゴール。試合後は「結果はあとからついてくるので、別に何も気にしていない」と言いつつ、暗い表情で取材に応じた。

クラブと代表の違いを超えた、鎌田が寄せる期待

日本代表でプレーする鎌田大地。クラブと代表で役割が異なる鈴木唯人に、自身の経験を重ねて期待を寄せる 【Photo by Koji Watanabe/Getty Images】

 なぜ日本代表になるとフライブルクでの躍動感が鳴りを潜めてしまうのか。原因はいくつか考えられるが、その中でも大きなものの1つが役割の違いだ。フライブルクでは4-2-3-1のトップ下で自由を与えられている一方、日本代表では3-4-2-1とシステムが変わり、左シャドーでは自由よりも周囲の選手との連動や、広範な守備のタスクを重視する必要がある。

「代表は代表で、フライブルクはフライブルクなので、やり方も周りの選手も違う。フライブルクと全く同じプレーをして代表でもいいプレーができるかといったら、そうではない」

 そう理解してはいながら、フライブルクで見せているような推進力や得点力を、どのように日本代表のサッカーに有効な形で還元していくか。「(代表では)たまにしかみんなで一緒にやる機会がない中で、回数を重ねていけば間違いなく良くなっていくと思います。フライブルクとは違うポジションですけど、徐々にいい感覚をつかめてきているし、もう少し時間が経てば大丈夫なのかな」とコメントこそ前向きだったが、ウルグアイ戦後の鈴木からは、大きな課題と向き合う苦しみが滲み出ていた。

 試行錯誤の日々は続く。それでもチームメイトたちからの信頼は、時とともに確かなものになってきている。クラブでも共にプレーする後藤啓介は「今のフライブルクは唯人くんのチームになっている。僕は結果を残せていないので、近くにああやってたくさんゴールを決めて、いいプレーをしている選手がいると刺激になるし、勉強にもなります」と、鈴木に対してまっすぐな敬意を口にした。

 所属クラブで輝いていても日本代表では不遇な時期を過ごし、鈴木と似た経験を持つ鎌田大地は「戦術はもちろん違うし、僕は(代表で)1トップをやらされていたので話が違いますけど……」と苦笑いしつつ、「彼のポテンシャルはもっと大きい」と今後の飛躍に期待を寄せる。

「クラブで活躍しているから代表で活躍できるわけではないし、代表で良いからクラブでも良いというわけではない。僕自身もフランクフルトで(EL)優勝しても代表に選ばれなかったこともありました。

 代表とクラブは別物だと思ってやるべきだし、日本国民のサッカーファンから認められるには代表で活躍するしかない。ただ、彼がフライブルクでやっていることは素晴らしいし、今はドイツの中でも間違いなくトップタレントの1人で、少なくともドイツの人々はみんな彼のことを知っている。(代表で輝くのは)時間の問題かなと思います」

 鎌田は「彼のクオリティの高さは間違いないし、主力選手たちと試合数を重ねていけば問題ないと思う」とも語っていた。所属クラブでの活躍がなければ代表に招集されることはなく、両者は地続きの存在ではあるが、実際にプレーするにあたっては切り離して考えなければならない。

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著者プロフィール

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。

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