過熱する「ヤマルvs.エムバペ」のバロンドール論争 一服の清涼剤となったロドリの金言
2年前にはR・マドリーが授賞式をボイコット
2年前の出来事を覚えているだろうか。当時マンチェスター・シティに在籍していたロドリ(現バルセロナ)は、スペイン代表の一員としてEURO2024を制し、大会MVPにも輝いて、この年のバロンドールに選出された。
下馬評が高かったのはビニシウス・ジュニオールだったが、事前に彼が受賞しないことを知ったレアル・マドリーの関係者一行は、発表当日の旅程をすべてキャンセルし、授賞式に姿を見せないという前代未聞の行動に出たのである。
スポーツの世界のフェアプレースピリットは、いったいどこに行ってしまったのだろう。常に勝ち続ける人生などないのだ。自身を負かした相手から学び、勝者への敬意を払いながら、負けた悔しさをバネにすることで、アスリートは1人の人間としても成長できる。そうした理念は、いつからおとぎ話になってしまったのだろうか……。
話を戻そう。今回、バロンドールの有力候補と見られているのは、ハリー・ケイン(バイエルン・ミュンヘン)、キリアン・エムバペ(R・マドリー)、そしてラミン・ヤマル(バルサ)の3人だ。
バイエルンとイングランド代表で驚異の73ゴールを叩き出し、ヨーロッパ・ゴールデンシューに輝いた33歳のケインは、「僕の今までの人生において最高のシーズンだった」と昨季を振り返っている。彼のバロンドールに対する見解は、至極まっとうだ。
「今回は僕にとって最高のチャンスだけど、実際にそうなるかは待ってみなければ分からない」
「多くのことを達成できた昨シーズンを誇りに思ってはいるけれど、バロンドールは僕の掌中にはない。それは投票する人たち次第だ」
本人はそう冷静に話すが、バイエルンをブンデスリーガとDFBカップの2冠に、イングランド代表を北中米ワールドカップ(W杯)で3位に導いた実績は高く評価されてしかるべきで、サッカー専門サイト『Goal.com』もケインを“本命”に推している。
スペイン国内の報道ではケインは蚊帳の外
第1回の受賞者である元イングランド代表の名ドリブラー、スタンリー・マシューズへのトリビュートという意味も込め、今回の授賞式はおなじみのパリ・シャトレ座ではなく、ロンドンのパラディアムシアターで開催される。仮にケインが、01年のマイケル・オーエン以来となるイングランド人バロンドーラーとなれば、彼の生まれ故郷ロンドンでの受賞というおまけ付きだ。
もっとも、ケインが本命になったのはつい最近のことだ。6月上旬までは様相がまったく異なっており、エムバペ、ヤマル、そしてアーリング・ハーランドの3人が最有力候補に挙がっていた。しかし北中米W杯を経て、予想順位はケインがトップ、2位がヤマルで、そこから大きく差が開いた3位にエムバペと変化している。
ただ、スペイン国内メディアのバロンドールにまつわる報道では、ケインは蚊帳の外だ。どこも「ヤマル対エムバペの一騎打ち」といった報じ方をしているのだが、もちろんこれは、10月25日に予定されているエル・クラシコを見据えたメディア同士の前哨戦でもある。
ちなみに、『マルカ』紙が行ったバロンドール予想のアンケート調査では、総投票数23万3849票の29パーセント(67,494票)をヤマルが獲得。エムバペはこれに次ぐ2位の19パーセント(43,155票)にとどまった(3位はパリ・サンジェルマンのスペイン代表MFファビアン・ルイスで、ケインは4位)。
これは、R・マドリー贔屓(びいき)の同紙にとって衝撃的な結果だったに違いない。とはいえ昨季、2年連続でラ・リーガの得点王に輝いたエムバペだが、いくらゴールを決めたところでクラブの無冠を防げなかったのだから、R・マドリーのサポーターからそっぽを向かれてしまったのも致し方ないだろう。