400mH・後藤大樹「47秒出しても負けるのか」 うれしさと悔しさが交錯した涙の理由
レースは終盤、最後のストレートで最高潮の盛り上がりを見せる。後藤が先頭争いでホームストレートに入ると、声援は一段とボリュームを増し、大歓声となった。しかし、ゴール直前で海外選手に抜かれた瞬間、スタジアムは大きなどよめきとため息に包まれた。
結果は銀メダル。タイムは47.93秒。自己ベストを更新し、2001年の為末大氏の日本記録47秒89までわずか0.04秒に迫る快走だった。それでもレース後、彼の目には涙が浮かんでいた。それは果たして、喜びの涙か、それとも……。
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「いっぱいいっぱい」の全力疾走
レース直後、後藤は自身の感情をそう分析した。喜びと悔しさという、相反する感情が同時に胸に去来していた。その複雑な思いが「思わず涙に出てしまったのかな」と彼は語る。
平日にもかかわらず、スタンドを埋め尽くした観客の存在が、彼の背中を押した。「こんな平日の中でたくさんの方が集まってくれて、なんだか本当に幸せな気持ちで1周走り切れたかなと思います」
レースは、彼の言葉通り「いっぱいいっぱい」の全力疾走だった。8台目のハードルを越えるまで、周囲は見えていなかったという。最後の10台目を越えてから優勝したバッセム・ヘメイダ(カタール)に抜かれた。それでも、「ベストのレースはできたのかなと思います」と、出し切ったことへの満足感も口にした。
世界の広さを知った高速レース
この展開は「今大会の反省点」であると同時に、「今後のつながりに良かった点でもある」と後藤は捉えている。厳しいレースを経験したからこそ、見えたものがあった。
「47秒を出しても負けるかっていう気持ちが今あって、やっぱり大人の世界は広いなと思います」
このアジア大会で「大人の世界は広い」と痛感させられた。それは、彼がまた一つ上のステージへと足を踏み入れた証左でもあった。