張本智和「100%じゃなくても勝てる」 アジア大会決勝、中国撃破で得た自信と証拠
1勝2敗の崖っぷちから中国を破った快挙
「1勝2敗でリードされた場面から中国に勝つのは、本当に簡単なことじゃないということは分かっていた」
卓球日本男子の岸川聖也監督の言葉だ。アジア大会の卓球団体戦はダブルスがなく、最大5試合がすべてシングルスで行われ、先に3勝したチームの勝利となる。
1番手は松島輝空(フリー)が王楚欽に2ゲームを先取しながら逆転負け。2番手はエースの張本智和(トヨタ自動車)が温瑞博を3-1で下したものの、3番手の戸上隼輔(井村屋グループ)が林詩棟に敗れた。これで日本は1勝2敗。あと1敗すれば金メダルを逃す状況に追い込まれた。
そこでコートに立ったのが張本智和(トヨタ自動車)だった。シングルスのみの団体戦は3人でオーダーを組み、1番手と2番手の選手はそれぞれ4番手、5番手でも出場する。そして相手は世界ランキング1位の王楚欽。張本は同4位、松島は同3位と、日本を代表するトップ選手だが、中国との団体戦ではこれまで何度も大きな壁に阻まれてきた。
張本にかかる役割は明確だった。ここで勝ち、中国との勝負を5番手の松島につなぐこと。そして、その仕事をやり切った。
張本が王楚欽にストレート勝ち
張本は立ち上がりから世界1位に対して主導権を握った。第1ゲームを11-7、第2ゲームは11-4で連取したが、張本はこの時を「2ゲーム目の途中から(ゲームカウント)3-0でいけると思いました」と振り返る。1勝2敗の状況で、ただ勝つだけではなく、3-0で勢いを渡す必要があると考えていたという。
「今3-0でいくしかないと、いい流れで松島くんに流れを渡すしかないと思っていた」
また、張本はプレーの内容にもこだわっていた。
「王楚欽に勝つためには、去年の横浜(※)のように小細工1回じゃ……それで勝ったところで次は通用しない。何回かかってきても勝つというぐらいの実力で勝たないといけないと。相手のいいところも潰す。そして、自分のいいところはしっかり当たり前に点を取る」
※編注:2025年8月のWTTチャンピオンズ横浜の決勝で張本は王楚欽に勝利
意識したのは、真正面からの勝負だった。そして、第3ゲームは11-9で取り、世界1位の王楚欽をストレートで下した。
「ラスト(5人目の松島)にいけば、勝つ自信はあった」と岸川監督が試合後に語った通り、張本の勝利が日本を救った。バトンを受け取った松島は、温瑞博を3-1で破った。
1勝2敗と後がないところからの劇的な逆転勝利。しかも、中国から。ところが、試合後の2人から聞こえてきたのは、勝ち切った喜びだけではなかった。自分たちにはまだ出し切っていないものがあるという。