帰国した元レアル育成組織・中井卓大ピピ J2今治でどんな課題と向き合っているのか?
しかし、レアルのセカンドチーム昇格後はキャリア構築に苦しみ、レンタル先のリーガエスパニョーラ3部、4部からステップアップできなかった。
彼は2026/27シーズンからJ2のFC今治に加わり、リーグ戦は開幕から7試合連続で先発している。今治は現在J2最下位で、9月20日にはアベル・モウレロ監督が解任されるなど厳しい状況だ。ただ22歳の技巧派MFは本名に加えてスペイン時代の愛称「ピピ」を背負い、サッカー人生の再構築を図っている。
中盤の底で見せるスキル
9月19日の第7節・横浜FC戦も上位クラブに対して悪くない戦いを見せ、「前向きに奪ってからの速い攻撃」という狙いはチームとして出せていた。だが後半アディショナルタイムにアダイウトンに4人の股を抜くスーパーゴールを決められ、1-2で敗れている。
中井は横浜FC戦で[5-3-2]の布陣におけるトリプルボランチの中央を任されていた。アンカーとも称される中盤の要で、攻撃ではビルドアップの「初手」「二手目」を打ち込む位置だ。セットプレーのプレースキッカーも主に彼が担っていた。
そこはシュートやラストパスに関わるポジションではない。相手に大きな隙があれば別だが、ドリブルで切れ込む機会もほぼない。基本的には1タッチ、2タッチで正確にパスをさばく役割になる。
中井の特徴はファーストタッチの上手さで、彼は高確率でボールを相手の届かない側に置いてからキックに移行できる。一つのモーションで「ボールを止める」「相手を剥がしてスペースを作る」という二つの作業を完結させてしまう。
横浜FCも前方のコースを切る、左右を挟むなどの対応で中井を明らかに警戒していた。一方で守備側は近く寄せる、ボールを奪いに行くアクションはほとんど起こしていなかった。相手のスキルに対して「飛び込むと逆を取られてかえってスペースが空く」という警戒があったのだろう。
中井は出すコースを削られた状況でもベターなパスを選択し、ミスなくボールを動かしていた。しかもプレスのベクトルの「逆」を突く、いい意味で嫌らしいパスを出せていた。
中井が語る「本当の自分」
横浜FC戦後の中井に尋ねると、こんな“反論”が返ってきた。
「言いたかったんですけど、本当の自分はシンプルに叩(はた)くプレーヤーです。あのシーンだけを見たら、ボールに触りたがってパスを出せない選手と思われがちです。YouTubeに載っている昔のプレーがそうなので、それもあると思います。だけどあれ(いわきFC戦)は本当に出せるパスがなくて、自分がキープしなければいけない場面でした」
実はボールを持っていない中井も、見ていて印象深かった。彼はとにかく「身振り手振り」「声」が多い。センターバックがボールを持っていれば「あのコースがいい」とう指で示す。スペイン語が堪能な彼は外国籍選手とも意思疎通を図りやすい。
そんなリーダーシップの発揮について、彼はこう述べる。
「ボランチはチームで一番、試合の状況を見えていないといけないポジションです。それが合っているかは分からないですけど、自分の思っていることをみんなに共有しようと考えています。ブラジル人なら(彼らが母語とするポルトガル語に近い)スペイン語は分かってくれるので、ベンチから言われている、思っていることを伝えています」
中井を1試合じっくり観察すれば世界王者スペイン、名門レアルで学んだエッセンスを感じ取れるはずだ。
とはいえ彼のプレーするカテゴリーはJ2で、さらに今治は残留争いに巻き込まれている。例えばボール保持率が60〜70%を超え、試合時間の大半を相手陣で過ごせるチームならば、中井の強み「だけ」で試合は完結する。しかし今の彼は「献身性」「泥臭さ」を要求される状況にいる。