現地記者の日本人選手ラ・リーガ奮戦記(月2回更新)

バレンシアの体制一新で佐藤龍之介に新たな試練 ラ・リーガ2部で好調をアピールする2人の日本人

山本美智子

開幕から5戦連続出場を飾った佐藤だが、コルベラン監督解任後の第6節は出番がなかった。ここからもう一度、存在をアピールできるか 【Photo by Bruno Penas/Quality Sport Images/Getty Images】

スペイン在住がすでに25年以上に及ぶ日本人ライターによる、月2回の連載コラム。レアル・ソシエダの久保建英と、今夏にFC東京からバレンシアに新天地を求めた佐藤龍之介の動向を中心に、文化的・歴史的な背景も踏まえながら“ラ・リーガの今”をお届けする。2026-27シーズン第2回のテーマは、佐藤に訪れた新たな試練、そしてラ・リーガ2部でプレーする2人の日本人選手の現状だ。

チェルシー時代の実績はひと昔前の栄光

“La muerte anunciada”(ラ・ムエルテ・アヌンシアダ)。直訳すれば「予告された死」という意味になる。それが、佐藤龍之介が所属するバレンシアに起きた悲劇だった。

 ラ・リーガ第5節が終わった時点で勝ち点1の最下位。106年のクラブ史において最悪のスタートを切ったバレンシアが、ついに大ナタを振るう。9月13日(現地時間、以下同)、カルロス・コルベラン監督を解任し、さらにロン・グーレイCEO、および強化担当チームの4人の更迭も決めたのだ。

 スペインのスポーツニュースメディア『El Desmarque(エル・デスマルケ)』のダビッド・トーレス記者は、「(オーナーの)ピーター・リムの決断はいつも遅い」と糾弾しているが、それでも多くのバレンシア・サポーターがこの決定を支持している。

 2014年から香港の実業家であるリムが支配するバレンシアは、25年5月29日に低迷が続くクラブを根本から立て直すべく、スコットランド出身のロン・グーレイをCEOのポストに迎え入れた。

 プレミアリーグ、とりわけチェルシーのCEO時代(09~14年)の実績が評価されての招へいだと、当時のクラブ公式サイトは伝えていたが、しかしそれはひと昔前の栄光だった。リムがオーナーとなった時点では、まだ名が知られた存在だったのかもしれないが、バレンシアのCEOに就任してからのこの1年は、もはやグーレイが現在のマーケットにまったくついていけない人物であることが露見しただけだった。

 補強に関する全権を与えられていたグーレイ。しかしながら、移籍市場でチームが必要としている選手を見つけ出すのに時間がかかり、また「この選手」と決めたら次善の策も用意せず交渉に臨み、それが破談に終わればまた一から新たな候補を探すといった非効率的なやり方が、補強の遅れにつながった。

 そうした人物の指揮下で、この夏に佐藤のようなタレントの獲得が実ったのは、奇跡的だったと言えるのかもしれない。

新監督の有力候補にはアギーレの名前も

バレンシアの次期監督候補の1人が、北中米W杯でメキシコ代表をベスト16に導いたアギーレ。マジョルカの監督時代は久保を冷遇したが…… 【写真は共同】

 さて、強化担当グループを一掃したバレンシア首脳陣は、17年5月から9年以上にわたってオサスナの強化責任者を務めてきたブラウリオ・バスケスを、高額な契約解除金を支払って引き抜き、新たなスポーツディレクター(SD)に就任させた。

 バスケスは、就任当時2部に沈んでいたオサスナを1部に引き上げ、22-23シーズンにはスペイン国王杯準優勝、翌シーズンのスペイン・スーパーカップ出場へと導いた手腕が高く評価されている人物だ。

 それだけではない。バスケスはバレンシアの内情もよく知っている。というのも、彼自身が10年6月から13年10月までこのクラブの強化責任者を務めていたことに加え、さらにカンテラ(下部組織)で育った息子のヘスス・バスケスが、現在トップチームのサイドバックとしてプレーしているからだ。13年ぶりに古巣へ復帰した新SDは、「息子は就任発表の10分前に(この事実を)知ったんだ。(黙っていて)悪かったと思うよ」とコメントしている。

 現在の最大の関心事は、バスケスSDが誰を新たな監督として連れて来るのか、ということだ。当面はバレンシアBのオスカル・サンチェス監督が指揮を執るが、これはあくまでも暫定措置である。

 最有力候補と見られていたのは旧知のエルネスト・バルベルデだったが、昨シーズンまでアスレティック・ビルバオを率いていた知将からは色よい返事がもらえなかった。そのため現在はホセ・ルイス・メンディリバル(前オリンピアコス監督)、そして日本でもおなじみのハビエル・アギーレ(前メキシコ代表監督)といった候補者に接触しているようだ。

 ただ、誰が新監督になったとしても、ようやくスペインの環境に慣れてきた佐藤にとっては、ふたたび定位置取りのために一から自身をアピールする必要に迫られることになる。

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著者プロフィール

スペイン在住は四半世紀超え。1998年から通信員として情報発信を始め、スペインサッカーに関する取材、執筆、翻訳の仕事に従事してきた。2002年と06年のW杯、04年と08年のEUROなど国際大会も現地で取材。12年からFCバルセロナの公式サイト、ソーシャルメディアを担当する

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