アストンマーティン・ホンダは、なぜこんなにも復活に手間取っているのか

柴田久仁夫

母国スペインGPを17位で終えたアロンソは、ホンダ製PUへの不満を隠さなかった 【(C)AstonMartinF1】

「すべてが振り出しに戻ってしまった」

 低迷にあえぐアストンマーティン・ホンダに、進化の兆しは見えるのだろうか。少なくともフェルナンド・アロンソは、そうは考えていないようだ。

 7月末の第13戦ハンガリーGPで、アストンマーティンは16ヶ所もの改良を施した新型の車体を実戦投入した。さらに次戦オランダGPでは、ホンダも大幅なパワー向上を目指した新型PU(パワーユニット)を持ち込んだ。これで戦闘力は、一気に増すはず。いきなり上位への躍進は無理でも、トップ10の入賞圏内にはコンスタントに食い込めるのではないか。

 しかしそんな淡い期待は、すぐに打ち砕かれることになる。ハンガリーではアロンソが今季初の予選Q2進出。続くオランダでは9位入賞を果たした。ただしこれは、アロンソの頑張りで1ストップ戦略を成功させたから。エンジンパワーがカギとなるイタリアGPは予選最下位、レースは2台リタイア。直近のスペインGPも、アロンソ17位が精一杯。チームメイトのランス・ストロールは接触事故や油圧系統のトラブルで、3戦連続のリタイアを喫した。

 そんな現場に、アロンソはもちろん満足していない。今季最高の9位入賞を果たした直後でさえ、表情に喜びはなかった。特に問題にしているのは、ホンダ製PUだった。

「車体に関しては、進化の方向性に満足している。一歩前進と言っていい。しかしエンジンは以前の仕様で改善してきたことが、すべて振り出しに戻ってしまった。ハンドリング(操縦性)もギアチェンジもスムーズさがない」

ホンダの何が問題なのか

車体開発トップのエイドリアン・ニューウィは、次戦アゼルバイジャンGPにさらなる軽量化マシンを投入予定だ 【(C)AstonMartinF1】

 開幕当初からホンダを苦しめてきたのは、「異常振動」と「絶対的なパワー不足」の二つの問題だった。

 当初の異常振動は、「とても走り続けられない。手足の感覚が完全になくなった」とアロンソがコメントするほど激しいもので、開幕1、2戦目のリタイアはまさにこの振動が原因だった。さらにバッテリーや周辺パーツも、この異常振動で物理的に壊れたりもした。

 その後、アストンマーティン側と共同で問題に取り組んだことも功を奏し、夏までには振動問題はほぼ解消されていた。ところがハンガリーで車体が改良されると、「未知の振動」が起きた。これはホンダPUではなく、サスペンションやモノコック剛性が変わったことによる車体由来の共振で、症状はその後押さえ込まれている。

 一方のパワー不足に対してホンダは燃焼室の形状変更などで、燃焼方法を大きく変えた。そのおかげで、エンジン本体のパワー自体は最大で50馬力程度上がったと言われる。しかしスペック2投入で好結果を期待したオランダでは、アロンソがスプリント予選で最下位に沈むなどパフォーマンス低下に苦しんだ。

「ブレーキング中もエンジンがパワーを出し続けていた」と、アロンソは言う。アクセルを踏みながらブレーキを踏むような状態で、しかも「パワーの出方も、予測不能」だというから、これは恐い。しかもせっかく増加した馬力も、その出方がピーキーなため、「追加パワーの恩恵はほとんど感じられなかった」と、手厳しい評価だった。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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