世界での「勝ち方」を理解しているバレー日本代表 LA28出場権、最速獲得を生んだもの
日本代表は予選ラウンド・プールAを3勝0敗の全体1位で突破すると、準々決勝のインド戦、準決勝・韓国戦をともに3-0のストレートで突破。決勝もイランを3-0(25-21、26-24、25-23)とストレートで下している。6試合で落としたセットはわずか1つと、圧倒的な強さを見せて大会を制した。
日本の男子バレーは2020年代に入って人気、実力ともに強烈な「勢い」を見せている。FIVBバレーボールネーションズリーグの結果を見ると直近の5年は5位、3位、準優勝、6位、4位と高水準をキープしている。2024年のパリ五輪は準々決勝でイタリア戦に、マッチポイントを迎えてからの逆転負けを喫してベスト4入りを逃したが、それでもメダルの可能性は十分に感じさせるチームだった。
2年後のLA28は現在30歳の石川祐希、26歳の西田有志、25歳の髙橋藍は「ちょうどいい年齢」で迎える大会。アジア選手権の戦いを見ても彼らには1972年のミュンヘン五輪以来56年ぶりとなる優勝、メダルを目指す資格がある。
目標は五輪のメダル
イラン戦は特にキャプテンの石川に疲れを感じる展開で、彼のアタック成功率が落ちていた。普段は西田を含めたエース級の3選手に均等に散る打数も髙橋、西田に集中していた。ただ第3セットの25点目となるスパイクを決めたのは、日本の上げ潮を引っ張る30歳のキャプテンだった。
セッターの深津英臣はトスの「意味」「思い」をこう説明する。
「何としても祐希をもう一回這い上がらせる必要があったし、彼も集中力が切れてなかったので、絶対大丈夫だと思ってトスを上げました。マッチアップで祐希の前に(小柄な)セッターがいたのもありましたが、今シーズンも彼がすごくいろんなことに気を使いながらやっている姿を見ていました。あそこで決め切ってくれるのが祐希かなと思います」
普段はクールな石川だが、表彰式ではカメラに対しておどけた表情も見せていた。束の間とは言えチームを背負う、五輪の出場権を得るという「重圧」から解放されていた気分を味わえていたのだろう。
石川はチームの充実ぶりについても、こう自信と抱負を語っていた。
「オリンピックでメダルを取るところまでが私たちの目標になっています。出場権を獲得できて、チームの強さを証明できました。予選で1セット取られましたけど、それ以外はストレートで勝ち切れたことも、今のチームの強さだと思っています。今日は大塚達宣選手が活躍していましたし、自分たちは誰が出ても強いことを、このアジア選手権でも皆さんに見てもらえました。ここからでもっと強いチームにしていきたいなと思います」
ティリ監督が語る「メンタル」の意味
それでも2026年の代表シーズンはネーションズリーグの予選ラウンドで12戦全勝という快進撃を見せ、アジア選手権も盤石と言い得る戦いを見せた。2024年のパリ五輪後に就任したフランス人のロラン・ティリ監督にその理由を尋ねると、このような答えが返ってきた。
「理由はチームビルディングで、その中でもみんなで作り上げてきたメンタルの部分がカギになったと思います。そこがこの夏に成し遂げた連勝につながっています。みんなの頑張り、姿勢で作り上げたものです」
メンタルは言葉や数字にしにくい要素だが、とはいえネーションズリーグやアジア選手権を見ていて、日本から「それ」を感じることは幾度となくあった。例えば日本はネーションズリーグ予選ラウンドでフルセットにもつれ込んだ6試合をすべて勝ち切っている。アジア選手権の決勝もイランはかなりの難敵で、3セットとも「ぎりぎり」の攻防だった、しかしイランは勝負どころでサーブなどのミスを連発し、逆に日本はそこで普段と同等以上のプレーをしていた。
メンタルがチームの強みになっている理由はコミュニケーションなのか? 経験なのか? それとも結果から得た自信なのか? ティリ監督に問うと、彼はこう返してくれた。
「今おっしゃったポイントをすべてだと思っています。選手は一つひとつの勝利を重ねていくうちに成長して、自分を解放してコート上に立てるようになります」
彼のいうメンタルは単に耐える、凌ぐという意味でなく、難しい状況の中で「柔軟に頭を使える」「自信を持ってプレーできる」「仲間とともに戦える」といった前向きなニュアンスを強く含むものだろう。今の日本代表は髙橋のように大事な場面で、即興性のある「遊び心のある」プレーを見せる選手もいる。そんな「自らを解放するスキル」こそが、このチームに備わっている勝者のメンタルだ。