W杯早期敗退で大揺れの韓国サッカー界 逆風のなかアジア大会4連覇に挑む隣国代表の命運は…
騒動が収束したとは到底言えないなかで…
韓国代表を指揮したホン・ミョンボ前監督は、W杯を終えて帰国した空港でファンから「出ていけ」「謝罪しろ」などと容赦ない罵声を浴びせられた。李在明大統領がSNSで「無能な人間を指揮官に選べば結果は明らかだ」と公然と批判すれば、野党代表がこれに反発するなど、サッカー代表の不振は政争の道具と化した。
7月末に国会で開かれた聴聞会では、ホン・ミョンボ前監督が「W杯の結果について、国民の期待に応えられなかった点を申し訳なく思う」と証人席で頭を下げた。しかし、出席した議員は政府にW杯敗退の責任を追及したり、代表コーチに「なぜ負けたのか」と詰め寄ったりと、12時間に及んだ審議では的外れな質疑も散見された。
事態は警察による捜査にも発展し、韓国サッカー協会への家宅捜索が実施されたほか、チョン・モンギュ前協会長やホン・ミョンボ前監督を被疑者として事情聴取も行われた。さらには、協会による過去の外国人審判に対する不適切な接待疑惑も取り沙汰され、その対象に日本人審判が含まれたとして日本サッカー協会も事実確認に乗り出す騒ぎとなった。
韓国サッカーの改革のため政府主導で発足した「Kサッカー革新委員会」は、レジェンドのパク・チソンが共同委員長を務め、協会長選の選挙人団を従来の192人から約2万人に拡大するなどの制度改革を推し進めている。だが、政治介入を禁じるFIFA(国際サッカー連盟)が韓国での現地調査に乗り出す構えを見せるなど、混迷は深まるばかりだ。
そんななか、9月1日にはホン・ミョンボ前監督の辞任で空席となったA代表の指揮官として、初の公募によってスペイン人のロベルト・モレノ氏が11月までという暫定で就任した。しかし、韓国サッカーをめぐる騒動が完全に収束したとは到底言えない。
このような強い逆風の中で迎えるのが、日本で開催される愛知・名古屋アジア競技大会だ。
3つのOA枠もフル活用した最精鋭で大会4連覇に挑む
韓国がこれほどまでにアジア大会優勝にこだわる背景には、言わずと知れた兵役問題がある。
すべての成人男子に兵役が義務付けられている韓国において、スポーツ選手はオリンピックでのメダル獲得、またはアジア大会での金メダル獲得によって「芸術・体育要員」資格を得て、兵役免除の特例を受けられる。
完全に兵役義務がなくなるわけではなく、3週間の基礎軍事訓練と544時間のボランティア活動を消化する必要はある。それでも、全盛期とされる20代後半に、母国で約1年半の軍服務に従事しなければならない“キャリア断絶”は回避できる。
実際、これまでもソン・フンミン(ロサンゼルスFC)やキム・ミンジェ(バイエルン・ミュンヘン)、イ・ガンイン(アトレティコ・マドリー)といったスター選手が、アジア大会優勝によってこの恩恵を受けてきた。サッカーに限らず韓国のアスリートにとって、アジア大会で金メダルを獲得できるかどうかは、自らの将来を左右する死活問題となるのだ。