アジア競技大会2026 徹底プレビュー

“第2の谷川萌々子”は現れるか? 国内組主体でアジア大会3連覇に挑む、なでしこジャパンの可能性

早草紀子

前回大会でキャプテンと10番の重責を担い、優勝に尽力した塩越。今大会でも若手主体のチームを引っ張り、自身も来年のブラジルW杯に向けてアピールしたい 【Photo by Koji Watanabe/Getty Images】

9月14日に戦いの火ぶたが切って落とされる愛知・名古屋アジア競技大会2026(以下、アジア大会)の女子サッカー。年齢制限がない今大会だが、なでしこジャパンは海外組の大半が不参加で、国内組の若いメンバー主体のチームで3連覇の偉業を目指す。来年の女子ワールドカップ・ブラジル大会に向けた人材の掘り起こしも、重要なテーマだ。

WEリーグの価値を示すためにも結果を

 32年ぶりの日本開催となるアジア大会は、9月19日の開会式に先駆けて、試合数の多い種目から順次競技がスタートする。

 女子サッカーもその1つだ。今やなでしこジャパンのレギュラーメンバーの多くが海外で活躍するなか、3連覇を狙う今大会はWEリーグでプレーする選手を主体としたチーム構成で挑むことになる。

 前回2023年の中国・杭州大会では、当時JFAアカデミー福島でプレーしていた谷川萌々子(現バイエルン・ミュンヘン)が5得点を挙げる活躍で、同じく古賀塔子(現トッテナム・ホットスパー)が守備陣の柱として優勝に貢献。今ではすっかりなでしこジャパンになくてはならない存在になった2人だが、果たして今大会でも彼女たちのような存在が現れるだろうか。

 注目選手を挙げるなら、まずは昨季のWEリーグMVP、成宮唯(INAC神戸レオネッサ)とともにゲームを作る塩越柚歩(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)だ。前回大会の優勝を経験している一方、昨年のE-1選手権では中国、韓国に勝ち切れず3位に終わった悔しさも忘れていない。緊迫した場面において前線で発揮される高いキープ力に加え、味方を活かしながら自らもゴールを狙える塩越の存在は大きい。

「海外組と比べられることは分かっています。WEリーグの価値を示すためにも、たとえ即席チームであってもアジアでは結果を残さないといけない」

 国内組で挑むからこその思いを胸に、塩越は結果を求めている。

 中央の厚みとともに必要となるのが、サイドの選手が担う攻守の役割だ。今、国内で最も勢いのある若手、21歳のMF榊原琴乃(三菱重工浦和レッズレディース)のパフォーマンスが、3連覇へのカギになると見る。

「いつ代表に呼ばれてもいいように準備をしていた」と、本人も納得の初招集。引き出したボールのスピードを殺すことなく一気に最前線へ持ち込み、フィニッシュまで狙うスタイルで、浦和ではすっかり攻撃の局面に欠かせない存在となっている。

 もっとも、左右両サイドを遜色なくこなす柔軟性に加え、確かな守備力もベースにはある。攻守両面で計算できる榊原が、チームにどんな変化をもたらすかに注目したい。

 そして大化けを期待したいのが、RB大宮アルディージャWOMENの西尾葉音だ。170センチというサイズは今回選出されたFW陣では最も高く、なでしこジャパンにはいなかったパワータイプ。持ち前のフィジカルを活かした突破と、相手に囲まれながらも足を振り抜く力強さが、昨季に花開いた。

「気持ち的に振り切れたことで、前を向く自分らしさを出せるようになった。呼ばれたからには爪痕を残して次(来夏のブラジルW杯)につなげたい」

 初めての代表活動でどこまで存在感を示せるか。国内組中心のチームだからこそ、これまでとは違う武器を持つ選手が台頭すれば、3連覇への大きな推進力となる。

前回大会を制した指揮官と世界を知るコーチ

指揮官としてアジア大会連覇を目指す狩野監督(左端)にとって、選手たちからの信頼も厚い内田コーチ(左から2人目)の存在は心強い 【写真は共同】

 今年5月になでしこジャパンの指揮官に就任し、WEリーグの視察を重ねてきた狩野倫久監督は、前回2023年の中国・杭州アジア大会でも代表チームを率い、優勝に導いた実績を持つ(当時はパリ五輪出場を目指すU-19代表の監督で、なでしこジャパンを率いていた池田太監督に代わって指揮を執った)。

 常に「ここからなでしこジャパンに上がっていくために自分に何が必要か、何が足りていないかを見極めないといけない」と、若い選手たちの向上心に火をつけてきた人物だ。

 おそらくベースは4バック。そこから相手によって中盤や前線の形を調整する、海外組を含めたいわば“本家なでしこ”に直結するような戦い方をするだろう。

 心強いのは、同じく5月に就任した内田篤人コーチの存在だ。世界を相手に戦ってきた内田コーチは、プレー中の視野の確保の仕方など、ちょっとしたコツを自ら実践して伝授する分かりやすい指導で、海外組のなでしこ選手からの信頼も厚い。今大会でも狩野監督をサポートしながら、経験の浅いメンバーたちに大きな影響を与えるはずだ。

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著者プロフィール

東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりJリーグ撮影を開始。1996年から日本女子サッカーリーグのオフィシャルカメラマンとなる。以降、サッカー専門誌で培った経験を武器に、サッカー撮影にどっぷり浸かる。現在はJリーグ・大宮アルディージャのオフィシャルフォトブラファーであり、日本サッカー協会オフィシャルウェブサイトでは女子サッカー連載コラムを担当している

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