週刊MLBレポート2026(毎週木曜日更新)

大谷翔平か、PCAか...ナ・リーグMVPレースはすでに「勝負あった」なのか?

丹羽政善

今季の大谷翔平にナ・リーグMVPの目はあるのか? 【Photo by Jayne Kamin-Oncea/Getty Images】

あらゆる攻撃指標でPCAが大谷を上回るが

 去年のアリゾナキャンプ。元巨人監督の高橋由伸氏(現解説者)とカブスの打撃練習を見ているときだった。

「彼は、すごくいいスイングをしている」
 
 高橋氏の目に留まったのが、その年3年目のPCA ことピート・クローアームストロング(カブス)。その年――つまり昨季は157試合とほぼフル出場を果たし、打率.247 、出塁率.287、長打率.481、OPS.768、31本塁打、95打点、91得点と成長の兆しをみせ、オールスターにも選ばれた。

 今年は9月7日の試合を終え、打率.281 、出塁率.376、長打率.577、OPS.953、41本塁打、97打点、108得点、35盗塁(太字はリーグトップ)。2年連続ゴールドグラブ間違いなしとされる守備力も考慮すれば、「もはや今年のナ・リーグのMVP(最優秀選手)レース争いは決着がついた」とも見られている。

ナ・リーグMVPレースをリードするカブスのピート・クローアームストロング 【Photo by JC Ruiz/Getty Images】

 高橋氏の慧眼には敬服するばかりだが、果たして本当にMVPはPCAで決まりなのか?大谷翔平(ドジャース)にはもうチャンスがないのか?

 今季中の投手としての復帰は断念した大谷だが、左膝の影響で離脱するまで、14試合に先発し、8勝2敗、防御率1.79。85回2/3に登板し、95三振、26四球。前半を終えた時点ではサイ・ヤング賞を争っており、6月30日の時点では、FIPなどがリーグトップ5に入っていた。 

ERA:1.58(2) 防御率
xERA:2.72 (3) 打球内容から期待される失点結果
FIP:2.56(5) 守備力、運を排除し三振・四球・本塁打などから投手を評価
WHIP:0.90(5) 走者を出さない能力
※6月30日現在。70イニング以上。カッコ内はリーグ全体の順位

 少し時間が経っているため、インパクトが薄れているのは確か。しかし、あまりにも過小評価されていないか。仮にこれが昨年のように後半に入って残してのものだったら、どう印象が変わっているのか。

 もちろん、PCAには守備での貢献があり、それは大谷にはないもの。しかもセンター。これもMVPレースでは大きな加点要素だ。前半だけとはいえ、大谷の投手としての貢献とPCAの守備。どちらが勝るかは、物差しが違うので答えが出しにくいが、では果たして、純粋にオフェンスの指標だけで2人を比較すると、どうなるのか。

 まずは、投票する記者が参考としそうな以下の5項目から――。

※9月4日現在 【参照:Fangraphs】

wRC+ = 球場・リーグ環境を補正した総合打撃力(100=平均)
Off = 打撃+走塁で平均的な選手より何点貢献したか
RE24 = 走者・アウト状況を考慮した得点への貢献
WPA = プレーによってチームの勝利確率をどれだけ高めたか
WPA/LI = 勝負どころが多く回ってきた影響を補正した攻撃価値

 こうしてみるとPCAがいずれも大谷を上回り、ナ・リーグ全体でも軒並みトップだ。続けて、クラッチ指標についても調べてみた。例えば、僅差の終盤で、どれだけ価値のあるヒットを放ったか。Baseball Referenceのデータを利用しながら、① Leverage Index ② Late & Close ③ WPA(Win Probability Added)の3項目で比較した。

① Leverage Index(LI):その場面で起きるプレーが試合の勝敗をどれだけ大きく左右し得るかを示す指標。平均的な状況をLI=1.0とし、イニング、点差、アウトカウント、走者状況などによって変化。

【筆者作成】

 では、High Leverage――つまり勝敗が大きく動き得る場面で2人の成績はどうだったか。

【筆者調べ】

 それを調べると、PCAのOPSは 1.024。大谷の.832を大きく上回った。本塁打も6本と3本でPCAが倍。打率、出塁率、長打率のすべてでPCAが上回っていた。

②Late & Close:単純な「○点差以内」という固定条件ではない。基本的には7回以降で、1点リード、同点、または同点走者が塁上・打席・ネクストバッターにいる状況。試合終盤でまだ勝敗が大きく動き得る接戦。

【筆者調べ】

 ここでもPCAが打率.382、出塁率.476、長打率.676、OPS 1.152という極めて高い数字をマーク。大谷のOPSは .794。High Leverageを上回る差がついた。

③WPA(Win Probability Added):そのプレーの前後でチームの勝利確率がどれだけ変化したかを示す。たとえば勝利確率20%の状況でその確率がその選手のホームランによって40%になれば、そのHRのWPAは+20%(+0.20)。同じソロ本塁打でも、序盤の0-0と、9回の1点ビハインドでは価値が大きく異なる。STATCAST にある (delta_home_win_exp) を、打者側の視点に変換してWPAを算出。大谷の30本塁打、PCAの39本塁打を対象とした。

【筆者調べ】

【筆者調べ】

 ホームランによるWPA合計は、大谷+3.081、PCA+4.883。PCAが約1.80勝分上回った。1本平均でも大谷+10.27%、PCA+12.52%。一方、中央値は大谷+9.7%、PCA+10.0%でほぼ同じ。WPA+10%以上のホームランは、大谷の12本(40.0%)に対し、PCAは20本(51.3%)。PCAは39本の半分以上が、一振りで勝利確率を10ポイント以上押し上げたホームランだった。

1/2ページ

著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

当サイトには一部アフィリエイトリンクが含まれています。

リンクから商品・サービスをご購入いただいた場合、スポーツナビに収益が発生することがあります。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント