技術の高さが表れていた鎌田の幻のゴール 右足アウトサイドのクロスに感じる時代の移り変わり
三笘も得意とする右足アウトのベンドボール
ベッカム、ギグスのクロスはまるで渦巻きのようだった。それぞれが利き足のインサイドで蹴って、前方の相手DFの脇をすり抜け、いったんゴール方向に向かうが、そこから鋭く手前にベンド(英語では「曲げること」をbendという。ベッカムに憧れる女子サッカー選手の物語は日本では2003年に公開。邦題は「ベッカムに恋して」だったが、原題は「Bend it like Beckham」、日本語にすると「ベッカムのように曲げろ」だった)させて、ゴール前に飛び込んだセンターフォワードの頭や足元へ戻ってくる。
そう、だから当時の4-4-2のウインガーたちは、クロスボールのスペシャリストが揃い、右サイドに右利き、左サイドに左利きというのが常識だった。
しかし時代は移り変わり、両サイドのウインガーがポイントゲッターとなる現代では、右サイドに左利き、そして左サイドに右利きの選手が起用される。
たとえば昨季までのリバプールにおけるモハメド・サラー。偉大な左足の持ち主であるエジプト人は右サイドでプレー。そして右利きの三笘薫は左サイドでプレーする。
サラーが右サイドから中央に切れ込んだ時、左利きの選手のほうがゴールに対する角度が広がり、フィニッシュしやすい。一番ダイナミックなシュートは右から中央に動いて、ファーサイドのゴール左隅トップコーナーに決めるやつだ。
右利きの選手の場合はこれが逆になる。左から入って右足で決める。三笘がこのパターンで奪ったゴールで最も印象に残るのは、2023年1月21日に行われたレスターとのリーグ戦で決めたスーパーミドルだろう。
しかしながら無論のこと、ウインガーとして中央で待ち構えるストライカーにラストパスを供給しなければならない場面もある。となると、かつてのベッカムやギグスが放った、利き足のインサイドで蹴るベンドボールが有効だ。
三笘はこのボールを右足のアウトサイドで蹴る。左サイドから右足の外側を使って払うように足を振って蹴り、ベンドさせ、ゴール前に飛び込んだ味方に届けるのだ。
ボールを蹴ったことがある方なら説明不要だろうが、利き足のインサイドで蹴るボールが一番コントロールしやすい。外のほうが得意という希少な人もいるかもしれないが、一般的にアウトサイドのほうが難しく、練習も技術も必要だ。
先週末に取材したプレミアリーグ2試合で、三笘も得意とするこの右足アウトサイドを使ったクロスボールが輝いた場面を2度見た。
ガクポ→イサクがリバプールのホットラインに?
左サイドのやや深い位置からのボールで、クロスというより縦のスルーパスと言える角度だったが、オランダ代表MFコーディー・ガクポが右足のアウトサイドで見事なボールを蹴った。
シュート回転させたことで、手前のDFの脇をすり抜け、ゴール前に飛び込んだアレクサンデル・イサクの足元にしっかりボールが収まった。昨季は故障の影響で期待外れの成績に終わったスウェーデン代表FWがこのパスを右足で軽やかにトラップして、左足を交差させるように振ってゴールに流し込んだ。
イサクは昨夏、1億2500万ポンド、日本円にして約267億5000万円という巨費でリバプールに移籍したが、昨季はリーグ戦でわずか3ゴール。しかし今季はこの試合で2ゴールを奪い、悔しい1年となった昨シーズンのゴール数に早くも並んだ。
ちなみに1点目もガクポのアシストでイサクがゴール。この2人が今季のホットラインになるのか。今後が楽しみになるパフォーマンスだった。
一方、対戦相手であるイプスウィッチの前田大然はこの試合で開幕から3戦連続となる先発出場を果たしたが、攻撃の局面での見せ場は前半35分に放ったシュートだけだった。
左サイドからのショートクロスを足元に収めて左からゴールに迫ったが、今夏にリバプールに加入したセンターバックのジェレミー・ジャケに張り付かれ、しかも左足で放ったシュートは角度が厳しい位置からのもので、GKアリソン・ベッカーに難なくキャッチされてしまった。
前半の6分、9分と立て続けにガクポ、イサクのコンビネーションでゴールを奪ったリバプールは、こちらも今季加入の右ウイング、23歳スペイン代表のビクトル・ムニョスがサイドバックの位置まで下がり、イプスウィッチがボールを持つと5バックで守備を固めた。
今季の初勝利に飢えた格上チームが、人数をかけて必死に守った。そんな展開ではさすがの前田も「今日はなかなかボールが回ってこなかった」と話すしかないパフォーマンスに終わったのも仕方がない。