現地発! プレミア日本人の週刊リポート(毎週水曜更新)

技術の高さが表れていた鎌田の幻のゴール 右足アウトサイドのクロスに感じる時代の移り変わり

森昌利

VARによるオフサイド判定でゴールは取り消しとなったが、鎌田がフラム戦の前半14分に放ったシュートは見る者を唸らせた 【Photo by Sebastian Frej/Getty Images】

 逆足のウイングがスタンダードとなった現代フットボールにおいて、利き足のアウトサイドを使ったクロスが有効な場面がある。ブライトンの三笘薫はその使い手の1人だ。プレミアリーグ第3節、9月4日(現地時間、以下同)のイプスウィッチ対リバプール、翌5日のフルアム対クリスタルパレスの2試合では、左サイドからの右足アウトを使った見事なパスからゴールが生まれた。また後者の試合では、前線右サイドで起用された鎌田大地が躍動。前半のゴールはオフサイドで取り消されたものの、決勝点となったチームの3点目をアシストするなど決定的な働きを見せた。

三笘も得意とする右足アウトのベンドボール

 右からはデイビッド・ベッカムの右足、そして左からはライアン・ギグスの左足が素晴らしいクオリティのクロスボールを次々と繰り出した1990年代後半から2000年代前半のマンチェスター・ユナイテッドの4-4-2は、筆者が直接目にした史上最高の4-4-2で、華麗にして力強く、当時のイングリッシュ・フットボールの頂点に輝かしく君臨した。

 ベッカム、ギグスのクロスはまるで渦巻きのようだった。それぞれが利き足のインサイドで蹴って、前方の相手DFの脇をすり抜け、いったんゴール方向に向かうが、そこから鋭く手前にベンド(英語では「曲げること」をbendという。ベッカムに憧れる女子サッカー選手の物語は日本では2003年に公開。邦題は「ベッカムに恋して」だったが、原題は「Bend it like Beckham」、日本語にすると「ベッカムのように曲げろ」だった)させて、ゴール前に飛び込んだセンターフォワードの頭や足元へ戻ってくる。

 そう、だから当時の4-4-2のウインガーたちは、クロスボールのスペシャリストが揃い、右サイドに右利き、左サイドに左利きというのが常識だった。

 しかし時代は移り変わり、両サイドのウインガーがポイントゲッターとなる現代では、右サイドに左利き、そして左サイドに右利きの選手が起用される。

 たとえば昨季までのリバプールにおけるモハメド・サラー。偉大な左足の持ち主であるエジプト人は右サイドでプレー。そして右利きの三笘薫は左サイドでプレーする。

 サラーが右サイドから中央に切れ込んだ時、左利きの選手のほうがゴールに対する角度が広がり、フィニッシュしやすい。一番ダイナミックなシュートは右から中央に動いて、ファーサイドのゴール左隅トップコーナーに決めるやつだ。

 右利きの選手の場合はこれが逆になる。左から入って右足で決める。三笘がこのパターンで奪ったゴールで最も印象に残るのは、2023年1月21日に行われたレスターとのリーグ戦で決めたスーパーミドルだろう。

 しかしながら無論のこと、ウインガーとして中央で待ち構えるストライカーにラストパスを供給しなければならない場面もある。となると、かつてのベッカムやギグスが放った、利き足のインサイドで蹴るベンドボールが有効だ。

 三笘はこのボールを右足のアウトサイドで蹴る。左サイドから右足の外側を使って払うように足を振って蹴り、ベンドさせ、ゴール前に飛び込んだ味方に届けるのだ。

 ボールを蹴ったことがある方なら説明不要だろうが、利き足のインサイドで蹴るボールが一番コントロールしやすい。外のほうが得意という希少な人もいるかもしれないが、一般的にアウトサイドのほうが難しく、練習も技術も必要だ。

 先週末に取材したプレミアリーグ2試合で、三笘も得意とするこの右足アウトサイドを使ったクロスボールが輝いた場面を2度見た。

ガクポ→イサクがリバプールのホットラインに?

リバプールの左ウイング・ガクポはイサクの2つのゴールをアシスト。特に追加点を生んだ右足アウトサイドでのラストパスは見事だった 【Photo by Liverpool FC/Liverpool FC via Getty Images】

 まず1本目。これは金曜日夜のリーグ戦でリバプール2点目のアシストボールとなった。

 左サイドのやや深い位置からのボールで、クロスというより縦のスルーパスと言える角度だったが、オランダ代表MFコーディー・ガクポが右足のアウトサイドで見事なボールを蹴った。

 シュート回転させたことで、手前のDFの脇をすり抜け、ゴール前に飛び込んだアレクサンデル・イサクの足元にしっかりボールが収まった。昨季は故障の影響で期待外れの成績に終わったスウェーデン代表FWがこのパスを右足で軽やかにトラップして、左足を交差させるように振ってゴールに流し込んだ。

 イサクは昨夏、1億2500万ポンド、日本円にして約267億5000万円という巨費でリバプールに移籍したが、昨季はリーグ戦でわずか3ゴール。しかし今季はこの試合で2ゴールを奪い、悔しい1年となった昨シーズンのゴール数に早くも並んだ。

 ちなみに1点目もガクポのアシストでイサクがゴール。この2人が今季のホットラインになるのか。今後が楽しみになるパフォーマンスだった。

 一方、対戦相手であるイプスウィッチの前田大然はこの試合で開幕から3戦連続となる先発出場を果たしたが、攻撃の局面での見せ場は前半35分に放ったシュートだけだった。

 左サイドからのショートクロスを足元に収めて左からゴールに迫ったが、今夏にリバプールに加入したセンターバックのジェレミー・ジャケに張り付かれ、しかも左足で放ったシュートは角度が厳しい位置からのもので、GKアリソン・ベッカーに難なくキャッチされてしまった。

 前半の6分、9分と立て続けにガクポ、イサクのコンビネーションでゴールを奪ったリバプールは、こちらも今季加入の右ウイング、23歳スペイン代表のビクトル・ムニョスがサイドバックの位置まで下がり、イプスウィッチがボールを持つと5バックで守備を固めた。

 今季の初勝利に飢えた格上チームが、人数をかけて必死に守った。そんな展開ではさすがの前田も「今日はなかなかボールが回ってこなかった」と話すしかないパフォーマンスに終わったのも仕方がない。

1/2ページ

著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2025-26で25シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル30年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

当サイトには一部アフィリエイトリンクが含まれています。

リンクから商品・サービスをご購入いただいた場合、スポーツナビに収益が発生することがあります。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント