週刊MLBレポート2026(毎週木曜日更新)

数値では測れないキケ・ヘルナンデスの存在価値 WS3連覇を目指すドジャースにキケがもたらすもの

丹羽政善

8月19日(※日時はすべて現地時間)ロッキーズ戦で復調の一発を放ちチームメートに祝福されるキケ・ヘルナンデス(左) 【Photo by Casey Paul/MLB Photos via Getty Images】

久々にポケモンカードを買って…

 30日のタイガース戦。今季、初めてセンターでスタメン出場したエンリケ・ヘルナンデス(以下、キケ)が三回1死走者なしの場面で、右中間の打球をダイビングキャッチした。スタメン出場の頻度も減っているが、こういうプレーをサラッとこなせるところが、彼の存在意義か。今回は大舞台でこそ力を発揮するそんなキケのパーソナリティについて。

 さかのぼることおよそ1年。ドジャースにとって昨季最後の遠征地はシアトルだった。アリゾナで行われた直前のシリーズで地区優勝を決め、選手らはシアトルでかなりリラックスモード。

 今年のキャンプ直前にツインズへトレードされたアンソニー・バンダが、シアトル郊外のベルビューという街にあるポケモン米国本社に家族と一緒に行きたいというのでアレンジし、当日、オフィスの一階で待っていると、バンダ家族の他、ウィル・クライン、ジャック・ドライヤー、キケの計6人が大型SUVから降りてきた。

 クラインとドライヤーが一緒に来ると聞いていたが、キケが一緒に来ることも、そもそもポケモンを好きかどうかも知らなかった。

 ポケモンへ行くときは、いつも直前で人数が増えるが、「3月、開幕戦で日本へ行ったとき、ポケモン本社に行ったのに」と伝えると、「あのときは、特に興味がなかった」とキケは苦笑した。

「夏に左肘を痛めてILに入っただろ? あのとき、暇だったから、子どものときに集めていたポケモンカードを久々に買ったら、そのままハマってしまった」

 彼とは、そのときをきっかけにいろんな話をするようになった。オフにもインタビューをさせてもらった。謝礼は、ポケモンカードだった。

 それまでは、とっつきにくく、なかなか本音を言わない、という印象。試合後の取材でも、囲まれれば話すものの、のらりくらりで、まともに答えようとしない。そんな映像を見たことがある人もいるかもしれない。

見た目からは想像できないキケのギャップ

風貌やプレースタイルからはうかがい知れないキケ・ヘルナンデスの横顔とは? 【Photo by Yuichi Masuda/Getty Images】

 彼の印象が劇的に変わったのは、昨オフのインタビューで山本由伸との関係を聞いたとき。

 2年前の地区シリーズ。山本はパドレスとの初戦に先発したが、初回に3点を取られるなど、3回、5失点で降板した。その後、チームはサンディエゴへ移動。2勝2敗としてホームに戻ってくると、山本が第5戦で快投し、ドジャースはリーグ優勝決定戦へコマを進めている。

 実は、サンディエゴでキケは山本を誘い、2時間ほどカフェで話をしている。その経緯を聞くと、こんなことを教えてくれた。

「俺たちは同じエージェント(ワッサーマンのジョエル・ウルフ)なんだけど、ジョエルにヨシとサンディエゴで少し話をしたい、ということを伝えて、セッティングしてもらったんだ」

 チームメートなんだから、顔を合わせたときに、「お茶でもしない?」と言えばいいのでは? と伝えると、キケは首を振った。

「彼には、ルーティンがある。『この後、時間があるか?』と誘えば、時間がなくても、『大丈夫だよ』って言うだろう。でも、彼の邪魔をしたくなかったから、事前に都合を聞いた上で、話をしたんだ。それなら彼も時間を調整しやすいと思って。調整するための時間も与えたかったから、代理人に頼んだ」

 面倒なルートではあるが、彼は続けた。

「電話と一緒だよ。携帯だからっていきなり電話をしたら、相手はやっていることを中断しなければいけない。それよりはテキストメッセージであらかじめ要件を伝え、話す必要があるならば、時間を決める。その方が、相手に迷惑がかからない」

 そんな細やかな気遣いができる人とは知らなかった。

 山本が落ち込んでいることを気にかけたこともそうだが、言動や見た目のプレースタイルから判断すると、彼のことを誤解する。インタビューのときも、時間ちょうどに現れた。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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