現地記者の日本人選手ラ・リーガ奮戦記(月2回更新)

久保建英と佐藤龍之介のリアルな現地評 ロドリとアルバレスの移籍スキャンダルの顛末

山本美智子

昨季は負傷離脱を強いられ、W杯も怪我で不完全燃焼に終わった久保。「今季こそ」との想いは強いはずだが…… 【Photo by Denis Doyle/Getty Images】

 スペイン在住がすでに25年以上に及ぶ日本人ライターによる、月2回の連載コラム。レアル・ソシエダの久保建英と、今夏にFC東京からバレンシアに新天地を求めた佐藤龍之介の動向を中心に、文化的・歴史的な背景も踏まえながら“ラ・リーガの今”をお届けする。2026-27シーズン第1回のテーマは、その2人の日本人選手の開幕3戦を終えた時点での評価と、この夏に大きな話題を集めたロドリとフリアン・アルバレスの移籍騒動の顛末だ。

久しく見ていないピッチ上での久保の笑顔

 2026-27シーズンのラ・リーガ1部も、開幕から早くも3節を終えた。今季、この舞台に立つ日本人プレーヤーは2人。1部で7年目を迎え、ベテランの域に達しつつあるレアル・ソシエダの久保建英と、この夏にFC東京からバレンシアにやって来たばかりの佐藤龍之介だ。

 久保はソシエダで5年目のシーズンを戦う。チームを率いるペレグリーノ・マタラッツォ監督は、「タケは(サイドだけでなく)スペースを攻めてセカンドストライカーとしてプレーできることを証明した。今シーズンは2つのバージョンのタケを見ることになるだろう」と、久保を複数のポジションで使い分ける考えを示している。

 個人的に期待したいのが、今夏バルセロナから期限ぎりぎりで完全移籍をしたエクトル・フォルトとのコンビネーションだ。

 両サイドバックをこなせるフォルトは入団会見で、「僕は守るより攻めるほうが好きだし、判断力があって大胆」と自己分析し、「強みは先のプレーを読めること。アシストを決められれば最高」と新天地での抱負を語っている。

 フォルトは2006年生まれの20歳。久保より5つ年下だが、同じバルサの育成組織「ラ・マシア」の出身だ。ボールタッチが柔らかく、スピーディな攻め上がりが持ち味で、プレースタイル的にも感覚的にも久保と合うに違いない。

 ただ、今季はスペイン代表として北中米W杯を戦った前線の主軸、ミケル・オヤルサバルのコンディションがまだ整っていないこともあって、チーム全体の仕上がりは遅れている。とはいえ、これはどのクラブも似たり寄ったりの状況で、言い換えれば、夏の移籍市場が閉じて、ようやくチーム編成が固まったこれからが本当の勝負だ。

 久保にしてみれば、昨季は怪我もあって不本意な出来に終わっただけに、今季こそとの想いが強いだろう。しかし、必要以上に肩に力を入れないでほしいと、個人的には思っている。確かに、彼のキャリアにおいては勝負のシーズンかもしれないが、それよりも見たいのは、久しく目にしていないピッチ上での久保の笑顔だ。

 世界最高峰のラ・リーガでプレーしているという誇りを胸に、W杯で傷めた膝に負担がかからないように最大限の注意を払いつつ、今一度初心に帰って、ボールを蹴る純粋な喜びを感じてほしいのだ。その上で結果がついてくれば、言うことはない。

佐藤を重用する指揮官はブーイングの対象に

欧州初挑戦ながら佐藤は新天地で堂々とプレー。開幕3戦連続スタメンを勝ち取ったが、バレンシアを取り巻く状況は落ち着かない 【Photo by Jose Breton/Pics Action/NurPhoto via Getty Images】

 一方、“ラ・リーガ1年生”の佐藤は、やはり龍之介という名前はスペイン人には呼びにくいようで、こちらでは「サトー」が通称となっている。

 チームに合流するや、プレシーズンマッチでいきなりゴールを決めて、幸先の良いスタートを切った。とはいえ、プレシーズンの活躍がそのままラ・リーガでの成功に直結するわけではない。通常、プレシーズンには主力選手がまだ合流していないことが多く、W杯直後のシーズンはなおさらその傾向が強くなる。重鎮が戻ってきたら、若手や新人はベンチ行き、あるいはメンバー外というのは非常によくあるケースだ。

 だが、佐藤は違った。彼は自らの力で開幕スタメンの座を勝ち取り、久保(18歳2カ月28日)に次ぐ日本人選手歴代2位の若さ(19歳10カ月6日)でラ・リーガデビューを果たしたのだ。

 ここまで開幕から3戦連続スタメン。ゴールやアシストなど目に見える結果は出ていないが、カルロス・コルベラン監督の信頼は厚い。

 しかし問題は、佐藤個人ではなく、バレンシアを取り巻く現状だ。佐藤を重用するコルベラン監督は、すこぶる評判が悪く、正直どこまで持つか怪しい。バレンシアの本拠地メスタージャでは毎週末、サポーターから諸悪の根源と考えられているロン・グーレイCEOとコルベラン監督に対して激しいブーイングが飛んでいる。

 ホームでの開幕2戦が1分け1敗に終わり、迎えたアウェーでの第3節は、昇格組のデポルティボ・ラ・コルーニャに対して守備の脆さを露呈し、1-3で完敗を喫した。すると、遠征帰りの空港にサポーターたちが不満をぶつけるために集結。警察が出動する事態にまで発展している。

 そのデポルティボ戦では、今季チーム唯一のゴールを挙げたセンターフォワードのウマル・サディクが負傷。急きょ移籍市場が閉まる直前にリバプールからレフティのアタッカー、ハービー・エリオット(昨季はレンタル先のアストン・ビラでプレー)を補強したが、佐藤は変わらず重要な戦力として必要とされるだろう。

 こうした混乱の中でも己を見失わず、ピンチをチャンスに変えられるか、注目したい。

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著者プロフィール

スペイン在住は四半世紀超え。1998年から通信員として情報発信を始め、スペインサッカーに関する取材、執筆、翻訳の仕事に従事してきた。2002年と06年のW杯、04年と08年のEUROなど国際大会も現地で取材。12年からFCバルセロナの公式サイト、ソーシャルメディアを担当する

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