久保建英と佐藤龍之介のリアルな現地評 ロドリとアルバレスの移籍スキャンダルの顛末
久しく見ていないピッチ上での久保の笑顔
久保はソシエダで5年目のシーズンを戦う。チームを率いるペレグリーノ・マタラッツォ監督は、「タケは(サイドだけでなく)スペースを攻めてセカンドストライカーとしてプレーできることを証明した。今シーズンは2つのバージョンのタケを見ることになるだろう」と、久保を複数のポジションで使い分ける考えを示している。
個人的に期待したいのが、今夏バルセロナから期限ぎりぎりで完全移籍をしたエクトル・フォルトとのコンビネーションだ。
両サイドバックをこなせるフォルトは入団会見で、「僕は守るより攻めるほうが好きだし、判断力があって大胆」と自己分析し、「強みは先のプレーを読めること。アシストを決められれば最高」と新天地での抱負を語っている。
フォルトは2006年生まれの20歳。久保より5つ年下だが、同じバルサの育成組織「ラ・マシア」の出身だ。ボールタッチが柔らかく、スピーディな攻め上がりが持ち味で、プレースタイル的にも感覚的にも久保と合うに違いない。
ただ、今季はスペイン代表として北中米W杯を戦った前線の主軸、ミケル・オヤルサバルのコンディションがまだ整っていないこともあって、チーム全体の仕上がりは遅れている。とはいえ、これはどのクラブも似たり寄ったりの状況で、言い換えれば、夏の移籍市場が閉じて、ようやくチーム編成が固まったこれからが本当の勝負だ。
久保にしてみれば、昨季は怪我もあって不本意な出来に終わっただけに、今季こそとの想いが強いだろう。しかし、必要以上に肩に力を入れないでほしいと、個人的には思っている。確かに、彼のキャリアにおいては勝負のシーズンかもしれないが、それよりも見たいのは、久しく目にしていないピッチ上での久保の笑顔だ。
世界最高峰のラ・リーガでプレーしているという誇りを胸に、W杯で傷めた膝に負担がかからないように最大限の注意を払いつつ、今一度初心に帰って、ボールを蹴る純粋な喜びを感じてほしいのだ。その上で結果がついてくれば、言うことはない。
佐藤を重用する指揮官はブーイングの対象に
チームに合流するや、プレシーズンマッチでいきなりゴールを決めて、幸先の良いスタートを切った。とはいえ、プレシーズンの活躍がそのままラ・リーガでの成功に直結するわけではない。通常、プレシーズンには主力選手がまだ合流していないことが多く、W杯直後のシーズンはなおさらその傾向が強くなる。重鎮が戻ってきたら、若手や新人はベンチ行き、あるいはメンバー外というのは非常によくあるケースだ。
だが、佐藤は違った。彼は自らの力で開幕スタメンの座を勝ち取り、久保(18歳2カ月28日)に次ぐ日本人選手歴代2位の若さ(19歳10カ月6日)でラ・リーガデビューを果たしたのだ。
ここまで開幕から3戦連続スタメン。ゴールやアシストなど目に見える結果は出ていないが、カルロス・コルベラン監督の信頼は厚い。
しかし問題は、佐藤個人ではなく、バレンシアを取り巻く現状だ。佐藤を重用するコルベラン監督は、すこぶる評判が悪く、正直どこまで持つか怪しい。バレンシアの本拠地メスタージャでは毎週末、サポーターから諸悪の根源と考えられているロン・グーレイCEOとコルベラン監督に対して激しいブーイングが飛んでいる。
ホームでの開幕2戦が1分け1敗に終わり、迎えたアウェーでの第3節は、昇格組のデポルティボ・ラ・コルーニャに対して守備の脆さを露呈し、1-3で完敗を喫した。すると、遠征帰りの空港にサポーターたちが不満をぶつけるために集結。警察が出動する事態にまで発展している。
そのデポルティボ戦では、今季チーム唯一のゴールを挙げたセンターフォワードのウマル・サディクが負傷。急きょ移籍市場が閉まる直前にリバプールからレフティのアタッカー、ハービー・エリオット(昨季はレンタル先のアストン・ビラでプレー)を補強したが、佐藤は変わらず重要な戦力として必要とされるだろう。
こうした混乱の中でも己を見失わず、ピンチをチャンスに変えられるか、注目したい。