鎌田と冨安がそろって先発した歴史的重み 好感度急上昇の“怪物君”ハーランドの素顔
憎たらしいモンスターから笑顔が可愛い“怪物君”に
結局は現れなかったのだが、できれば初先発を飾った冨安の話が聞きたいと思って待っていたミックスゾーン(取材エリア)に、この試合で2ゴールを決めたアーリング・ハーランドがやってきた。
ただし取材対応ではなく、対戦相手であるパレス所属のノルウェー代表FWヨルゲン・ストランド・ラーセンのところへ行くために控え室から出てきたのだ。
ハーランドはカルバンクラインの白いブリーフ1枚という姿だった。まさにパンツ一丁で、そのエリアに群がる記者団なんか全く目に入らないという感じで、ラーセンと楽しそうに話をしていた。
まずユニホームを交換し、抱き合い、そしてお国言葉のノルウェー語で愉快そうに話をして、大声で笑い合っていた。本当に無邪気でおおらかなその姿が筆者の心にくっきりと残った。
今夏の北中米W杯でイングランドの英雄となったのはジュード・ベリンガムだが、この国において最も好感度が上がった他国の選手は、間違いなくハーランドである。母国ノルウェーのために戦うハーランドは、マンチェスター・Cのデカくて恐ろしく、仏頂面で、他クラブのサポーターにとってはまさにモンスターのように憎たらしいセンターフォーワードから、笑顔が可愛い“怪物君”に変貌した。
W杯のイングランド戦では、かつてドルトムントでチームメイトだったベリンガムと笑顔で戯れるシーンも話題になった。ドイツで英語を話す2人は親友になったというエピソードも広く伝わった。
今季は長髪を結った髷(まげ)姿から、バッサリと髪を切って丸刈りにして話題になったが、その新しいイメージも少年のようだと好意的に受け止められている。
このようにイングランドにおける好感度が上がって、今季のハーランドはゴール前でいい意味で力が抜けているように見える。
先制点となったヘディングシュートは、まるでエキシビションマッチを見ているかのようだった。「ほら、しっかりゴールのトップコーナーを狙えば、球速が遅くてもキーパーの手が届かないんだよ」とでもいうように、技術の高さと心の余裕を感じさせるゴールだった。
また2点目は、至近距離の角度のない位置から放った強烈なシュートだったが、その大きな体を目一杯使ったフォームは美しいといえるほどバランスが取れていた。
この先とてつもない記録を打ち立てる予感が
そんな北の湖に似て、これまでのハーランドはイングランドの憎まれ役だった。しかし今回のW杯を境にして、ハーランドに向けられていた敵意は薄れ、逆にいい奴だという評判が高まった。
実際、高給取りのスーパースターなのに、思い上がったところがなく、ホームレス支援もしているといった報道も流れている。
プレミアリーグのデビューシーズンとなった2022-23シーズン、いきなり36ゴールを決めてリーグのシーズン最多得点記録を塗り替えた。いったいこの先どんなことになるのだろうとマンチェスター・C以外のフットボール・ファンを戦々恐々とさせたが、その後は27得点、22得点、27得点と、1年目の強烈なインパクトを超えられずにいた。
もちろん、それでも立派な記録だが、これは強すぎる金満マンチェスター・Cのマシンのようなストライカーに対する世間の嫌悪が、まだ20代前半の若者だったハーランドに心理的な重圧を与えていたせいでもあるのではないか。
それがこんなに好かれてしまうと、どうなってしまうのだろう。好感度満点となって解き放たれた怪物君が、とてつもない記録を打ち立てそうな予感がする。
そして2連覇を狙うアーセナルの前に立ちはだかるのは、やはり今季もマンチェスター・Cになりそうだと確信した。
(企画・編集/YOJI-GEN)