「オフコートの影響力」でも代表強化に貢献 指揮官、選手が語る“八村効果”のスゴさ
オフコートでも発揮されたリーダーシップ
「塁さんはNBAの最高峰でプレーされている選手です。日本代表の練習だけでなく、色々な組織のあり方であったり、そういったスタンダードをぐっと上げてくれました。オンコートだけでなく、オフコートの影響力はかなり大きかったと思っています。(今の日本代表は)選手が万全なコンディションでプレーができる状態にしてくれる組織になりました」
八村はパリオリンピック後の2024年11月に「プレーヤーファーストの精神が見られない。そういう方針の日本代表ではプレーしたくない」と当時の代表強化に関して批判的な発言をしている。そこから内輪でどのようなやり取りがあったかは、オープンにされていない。とはいえその後の改革や代表の戦いを見る限り、彼の「圧」がいい方向に作用したことも間違いない。そこは河村がいうように、彼のリーダーシップが発揮された部分だろう。
まずBリーグのチェアマンでもある島田慎二氏が、2025年9月27日から日本バスケットボール協会の会長に就任している。同時に協会の「強化委員長」に伊藤拓摩氏が入り、さらに2026年2月からは男子代表の体制が一新された。現在は桶谷HCをライアン・リッチマン、吉本泰輔の両アシスタントコーチが支えていて、パートタイムで参加する人材も含めてスタッフが大幅に拡充された。
トップダウンの色が濃かったトム・ホーバス前HCのカラーが変わり、トレーニングメニューやケア、治療について選手の意向を柔軟に受け入れる状況になった。今の代表は帯同しながらコンディションを上げられるし、個人メニューに時間を割いて自身の課題に取り組むことも許される。例えば河村のスキルコーチを務める人物が、このWINDOW4には「プレイヤーディベロップメントコーチ」として代表のスタッフに名を連ねていた。要は日本代表が「プレイヤーズファースト」の組織になった。
もちろん個々の「やりたいこと」が突出しすぎて代表の方向性とズレたらそれは問題で、スタッフ同士の情報共有や連携は必須だろう。とはいえ、そこのコミュニケーションが確保され、調整がつくなら、選手の意思は反映されるに越したことはない。
物足りなさ、危機感も
「W杯をこの点差で勝てることはほぼ無いと思う。もう少し相手のレベルが上がった中で、このメンバーでどういう戦いができるかは考えていきたい」
渡邊もこう述べている。
「自分たちが目指しているのは『オリンピックで勝つ』ところなので、そこに向けてこのメンバーが揃っている以上、アジアでは負けられないとは思っています」
今の日本代表には希望がある。しかし八村や河村、渡邊のような人材が20年後、30年後の日本バスケ界に存在する保証はない。桶谷HCも危機感を口にしていた。
「この最強の選手たちが集まっているときに、世界で勝っていかないといけません。もう時間がありません。塁もそうだと思いますし、みんなそう思っているでしょう。この日本代表が世界に勝つところを見せていくことで、次の世代も『日本ってバスケットで世界に勝てるんだ』と感じる。そしてそのメンタリティーで成長していくことが、これからの日本のバスケット界にとって大切です」
日本代表の本番は2026年でなく27年、28年の夏だ。来年にはW杯がカタールで開催される。そこで日本が「アジア最上位」に入れば、LA28 夏季オリンピック(ロサンゼルス五輪)の出場権が手に入る。
ただターゲットがまだ先だとしても、結果へのプレッシャーがあるにしても、それ以上に「楽しみ」という感想が大きい8月のW杯予選だった。「過去最強」の四文字が軽く感じられるくらい、八村を擁した日本代表は圧倒的だった。
NBA組の合宿参加は来年、再来年につながる最高のティップオフだった。桶谷HCはいう。
「これで手応えを感じていないと言ったら嘘だと思います。この試合も『HCらしいことをやれたかな?』というくらい、選手やアシスタントコーチ、スタッフ陣が頑張ってくれて、こういうゲームになりました。いい土台を作れました」