「オフコートの影響力」でも代表強化に貢献 指揮官、選手が語る“八村効果”のスゴさ
この大会はアジア・オセアニアのトップ12チームが参加する最終予選で、カタールは8月20日のFIBA U18アジアカップで日本と75-80の接戦をした相手だ。さらに言えば日本は若手中心のメンバーとはいえサウジアラビア、カタールより世界ランキングが下のモンゴル(108位)に8月9日の親善試合で敗れている。
「普段」の日本代表ならば、カタールに50点以上の大差で勝つことは考えられない。日本の大きなアドバンテージになっていたのは八村塁、河村勇輝の参加だ。特にNBAの中でもチームの主力級と言い得る八村がチームに与えたインパクトは大きかった。
コーチ、チームメイトは八村が日本代表にもたらしたものについてどう見ているのか? カタール戦後のコメントをもとに、夏の4週間を振り返りたい。
強烈な「個」がチームの中で機能
出場時間はどちらも20分台後半だったし、チームとして「八村にすべてお任せ」というオフェンスをしていたわけではない。得点以上に目を見張るのは効率で、例えば3ポイント(3P)シュートの成功率はサウジアラビア戦、カタール戦とも75%を記録している。
しかも八村という強烈な個が「ケミストリー」を崩すことなく、チームの中で機能していた。八村が相手の守備を引きつけることで、オープンになった他の選手も得点を量産した。カタール戦でのチーム全体の3Pシュート成功率も52.6%という高確率で、それは個がチームに還元されていた証明だ。八村がチームを後押しし、チームも八村を活かした。
桶谷大ヘッドコーチ(HC)はカタール戦後にこう語っている。
「それぞれが自分たちの役割をしっかり果たして、この結果になりました。もちろん(八村)塁や河村の引力があって、周りも点数が取りやすくなっている部分はあると思います。とはいえ、それぞれの選手が役割を果たしたからこそ、こういうバスケットになった。それは非常に嬉しい結果です」
オフェンスだけでなく、守備面もいい連携が出ていた。八村、ジョシュ・ホーキンソン、渡邊雄太や吉井裕鷹といった顔ぶれが揃うと、インサイドの機動力と強さ、高さがこのレベルではアドバンテージなる。日本はカタールのインサイドアタックをほぼ完全に封じていた。特に第1クォーターは「9」のターンオーバーを誘発し、日本は速攻からのイージーショットを連発した。
馬場雄大はこう説明する。
「選手一人ひとりがしっかり映像で確認して、相手のやりたいことを全員で止めていました。相手を流れに乗せず、フラストレーションが溜まった中からパスをさせて、そこをスティールするパターンが多かったです」
生まれたいい影響、いい雰囲気
馬場は八村から見て富山市立奥田中の2年先輩で、「やんちゃなグループ」から八村が勧誘されないように守った恩人でもある。慎み深い馬場は先輩面をする、八村を助けた過去を自慢気に語ることは一切ないのだが、八村の人間的な成長についてこうコメントしていた。
「上からにはなりたくないですけど、すごく大人になったというか、チームを引っ張る立場になってくれたと思っています。彼の態度ひとつでチームはガラッと変わります。それも彼は理解していて、本当にプラスのエネルギーをチームにもたらしてくれた。今の彼がリーダーなのはみんな知っていますし、彼もそこに責任を持ってやってくれている。そういった(八村の)雰囲気づくりが、チームのいい雰囲気を生んでくれました」
馬場は八村への敬意をこう言葉にする。
「年齢関係なく、経験値で物事を判断していきたい。彼の経験は彼しか経験できていないことで、そこに関してはすごくリスペクトしています」
八村は28歳で、年齢的にはまだ中堅だ。一方でワシントン・ウィザーズとロサンゼルス・レイカーズの中心選手としてNBAの7シーズンを経験した彼は、チームがレベルアップに必要な要素をどんな選手、コーチより肌で感じている。
八村がその経験を言語化し、チームに還元するのはそれなりに難しいチャレンジだ。ただ日本代表は馬場や渡邊、富樫勇樹のような年長者も含めて八村が気持ちよく練習と試合に臨み、強みを発揮できる環境を作っていた。
桶谷HCは述べる。
「塁や勇輝が入ってくれて、すごくいい影響がチームに生まれました。逆に彼らを受け入れようと、合宿に参加したメンバーがいい雰囲気を作ってくれていたところも、お互いのいいケミストリーにつながったと思っています。今回は試合に出られなかったですけど、富樫(勇樹)がいてくれたおかげで、いいチームができ上がりました。川島(悠翔)も出られなかったですけど、若手なりに、やるべきことをやろうと必死に頑張ってくれた。そういった人たちがいたから、こういうチームを作れました」