女子バレー「アジア3位」で露呈した課題 日本が世界で勝つために求められる変化とは?

田中夕子

女子日本代表はアジア選手権を3位で終えた 【Photo by Fred Lee/Getty Images】

セッターの関菜々巳が語る「理由」

 世界の頂点を目指して、アジアを勝つ。

 それぞれが強い覚悟を持って臨んだアジア選手権、優勝を目標に掲げて臨んだ女子バレー日本代表は準決勝でタイに敗れ、最終日の3位決定戦でイランに勝利し、3位で閉幕した。

 世界ランキングや対戦成績では優位であるはずのタイに敗れた試合を「まさかの敗戦」ととらえられていたが、実際に現場で見た試合を振り返れば、「まさか」ではない。すべてのプレーや総合力、点差を縮められた場面からの修正力という面でも、タイが上回っていた。

 アジアで勝たなければならない。五輪出場権を手に入れなければならない。そんなプレッシャーも重なり、普段の力を発揮できなかったのは確かだが、予選ラウンドからなかなか乗り切れずにいる中、セッターの関菜々巳は自身のプレーについて「自分のトスがなかなか定まらずに迷惑をかけている」と課題を述べながらも、チーム全体がうまく回らない理由として、1つの要素を挙げた。

「たぶん今このコートにいる選手は、みんな100%の理想を求めている。1人の選手として、それはもちろん大切なことなんですけど、全員がそれぞれの理想を実現したからといって、私たちのゴールは理想を実現することではなくて、勝つこと。たとえその1点が汚い1点だろうが1点取れればそれでいいし、1本目をミスしようが2本目でカバーして3本目で取れればいいし、2本目ダメだろうが3本目で得点を取れればいい。頭ではわかっているし、勝つために理想を追い求めているんですけど、でもその順番がどこか逆になってしまって、まず理想を追い求めてしまうから、うまくいかないと『ダメだ』と思いすぎてしまう。練習はもちろん、いつも100%を求めるし、理想に近づくことを求めているんですけど、試合になると全部が全部理想通りにはいかない。開き直るところは開き直って、それぞれがカバーし合っていくことが大事なんじゃないか、と思うんです」

世界大会とは異なるアジアでの戦い方

セッターの関(中央)は「開き直り」の必要性を説く 【Photo by Fred Lee/Getty Images】

 高さやパワーで勝る欧州勢などを相手に戦う際は、高さで劣る日本がどうやって戦うか。サーブで攻めて主導権を握り、攻撃を絞らせてブロックのタッチを取ってレシーブにつなげてそこから攻撃を展開する。レシーブを中心としたディフェンス力を武器とする日本が、ネーションズリーグや昨年の世界選手権で見せてきた戦い方だった。

 だがアジアでは、中国、タイといった主要国際試合に出場する国や地域ばかりではなく、選手もチームもほぼデータがない相手や、高さやパワーで勝負するだけでなく意表をつくような技で翻弄する選手もいる。日本が強者に勝つためにサーブから攻めるのと同じく、相手から見れば「強い」日本は当たって砕けろとばかりにサーブで攻め、スパイクも失敗や止められることを恐れずに思い切って攻めてくる。

 もちろんどんな相手も武器があり、力があることはわかっているとはいえ、普段通りのプレーをすればどれほど攻められようと屈することはない。だがだからこそ、「決まるのが当然」と思っていたスパイクを拾われたり、ブロックされたりすると必要以上の焦りが生じることもある。

 たかが1本、と切り替えられればいいが、決まらなかったという結果にフォーカスしすぎて、もっと精度を高く、もっとクオリティを高めなければならないと完璧な理想を求め、今度は決まっても「まだまだ足りない」と首を傾げる。

「精神的にもっと強くならなければならない」

女子日本代表を率いるフェルハト・アクバシュ監督 【Photo by Fred Lee/Getty Images】

 セッターの関だけでなく、アタッカーでは最年長、リオデジャネイロ、東京と二度の五輪に出場したベテランのミドルブロッカー、島村春世も準々決勝のタイ戦に勝利した後、準決勝のタイ戦に向けて同じことを指摘していた。

「どんなセット、どんなプレーを重ねようが最後に勝てばオッケー。たとえ思ったようなスパイクじゃなくても決まったら1点なので、その1点を全力で喜んで、また1点ずつ積み重ねていくことのほうが大事。アタッカーって、やっぱり頭のどこかではきれいに決めたいと思う気持ちはありますけど、でもきれいに決めて気持ちいいと思うだけじゃなく、勝つためにはきれいじゃなくても泥臭く積み重ねるほうが大事。ここからは、そういう力が求められると思っています」

 だが実際は、日本の攻撃に対して相手が敷いてきたディフェンスシステムに阻まれ、なかなか得点が決まらず焦りが生じ、ブロックを利用されて決められればストレスがかかる。準備してきた要素が1つずつ削られて行くたび、どうしよう、どうしようと気持ちばかりが焦ってミスにつながる。スパイクやサーブの精度以前に、1試合で28点ものミスが生じたことはまさにその証明だった。

 すべての試合を終え、ミックスゾーンで取材に応じたフェルハト・アクバシュ監督が指摘したのも、まさにそう。「目標を達成できず、すべての日本のファンの方に謝りたい」と、チームリーダーとして謝罪の言葉を述べた指揮官は、スパイクやサーブの質といった技術面と共に、別の課題も挙げた。

「精神的にもっと強くならなければならない。戦術を実行する力も上げないといけない。それは可能だと信じているので、一歩ずつ、チームの質を維持しながら成長していかないといけない」

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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