週刊MLBレポート2026(毎週木曜日更新)

今年のボールは飛ぶのか、飛ばないのか―― 今永昇太の被本塁打の何本かは不運だった?

丹羽政善

7月4日(※日時はすべて現地時間)のカージナルス戦に先発した今永はJJ・ウェザーホルトに先頭打者本塁打を浴びた 【Photo by Jayden Mack/Getty Images】

オフェンスの程度に応じてボールを調整?

 6月以降、今年のボールに関する考察記事を目にするようになった。

 簡単に言ってしまえば、5月終わりぐらいからボールが飛ぶようになったのでは? という話だが、仮に350フィート以上のフライがどのくらいホームランになったのかを3月26日から5月23日と5月24日から7月28日に分けて比較すると、前者のHR率は43.32%。後者は47.92%で、約10%増だった。

 そもそも今年、MLBが公表している抗力係数(Cd)を確認すると、ずいぶん振れ幅が大きい。

抗力係数の変化(2016~2026) 引用元:https://baseballsavant.mlb.com/drag-dashboard?utm_source=chatgpt.com 【参照:Baseball Savant】

 最高値(最上部の◯で囲んだ部分)は4月21日の.362。最低値(最下部の◯で囲んだ部分)は5月28日の.322。その差は.04もある。見ればすぐに分かる通り、これは記録が残る2016年以降ではもっとも大きい。

 この数値が何を意味するかだが、例えば、縫い目が高く、抗力係数の値が大きいほどボールの飛距離は落ちる。逆に、縫い目が低ければ抗力係数は小さくなり、その場合は打球が飛ぶ。

 無論、抗力係数だけですべてを説明できるわけではないが、MLBによると、気象条件などが同じと仮定した場合、抗力係数が.01違うと、打球初速が100マイルの場合、飛距離が5フィート(1.52メートル)違ってくるとのこと。したがって.04という差は、飛距離にすると6.1メートルに相当する。

 次に、今年の抗力係数の日別データを抽出し、変化が見られる日を境に時期を分類すると、こんな感じになった。

抗力係数の変化 【参照:Baseball Savant】

 先ほど、開幕から5月23日と5月24日から7月28日までに分けて350フィート以上の本塁打の割合を調べたのは、この数字を先に出していたからだが、これを見ると、5月終わりから抗力係数が下がり、8月に入ってまた、上がっていることが分かる。

 5月23日までは昨年とほぼ同じなので、5月終わりまでは去年の在庫を使用。使い切ってから今年のボールが登場――という捉え方ができるが、8月に入ってからまた抗力係数が上がったのはなぜか。

「6月に入って違いに気づいた」というある選手は、こう明かす。

「色々と言われ始めたからじゃないかな。(ボールを作っている)ローリングスのコスタリカ工場をMLBが買収してから、抗力係数、反発係数を調整しやすくなったという話がある。オフェンスが低調なときは、抗力係数の低いボールを多く出荷するといった具合に」

 オフェンスが活発になれば、その逆もしかりということか。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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