U-12侍ジャパン桑田監督、10年ぶりアジア制覇も胴上げは拒否 グラウンド外の苦労も克服し「肩の荷が下りた」

三和直樹

【撮影:三和直樹】

「第12回 BFA U12アジア選手権」(8月9日~15日、中国・杭州市)で優勝した侍ジャパンU-12代表が8月16日に帰国し、羽田空港内で会見し、解団式を行なった。

 今年4月の合同トライアウト、6月の選考合宿を経て選ばれた精鋭15名の選手たち。チームを率いた桑田真澄監督は、7月の合宿初日から「最高のチームになりましょう」と呼びかけ、「団結力」をテーマにチーム作りを進めた。

 迎えた本大会、日本はオープニングラウンドでフィリピン(11-1)、パキスタン(31-0)、中国(7-3)に3連勝した後、スーパーラウンドでのチャイニーズ・タイペイ戦で6-5の逆転サヨナラ勝ちを収め、宿敵・韓国には3-1勝利。チャイニーズ・タイペイとの再戦となった決勝戦では3-0完封勝ち。6戦全勝で、2016年の第9回大会以来3大会ぶり10年ぶり2度目の優勝を果たした。

 大会期間中、「自分で考えて行動する」こと、そして「BCR(バランス、チャレンジ、リスペクト)」を訴え続けたという桑田監督。解団式での挨拶ではスタッフ陣に対して感謝を述べるとともに、選手たち全員を称え、「君たちと一緒に野球ができてすごく嬉しかった」、そして「1日でも1年でも長く野球を続けてもらいたい」と呼びかけた。

 そして記者団に対しても笑顔を交えながら次のように大会を振り返った。

「監督!チャレンジですよ!」

――2016年以来10年ぶりの優勝となりました。優勝した時の気持ちは?

「いやもう本当に嬉しかったということと、肩の荷がようやく下りたというか、ホッとしましたね」

――肩の荷が下りたという言葉の真意は?

「(日本が)しばらく優勝していなかったっていうことを聞いていたので、是非、優勝したいという思いで大会に臨みましたし、野球以外の部分でも子どもたちの成長に繋がる大会にしたいと思っていたので、それを両立しながら合宿、大会を終えることができたんじゃないかなと思います。自分なりに満足できたので、肩の荷が下りたかなと思いました」

――優勝できた要因というのはどの辺りにあったのでしょうか?

「1番大きかったのは、やっぱり選手、コーチ陣、スタッフ全員の団結力だと思います。本当にいいチームに仕上がって、いい雰囲気で試合に臨めて、最後までみんなで一致団結して戦えたというのが良かった。その中で今回の一つのキーワードが『食』でした。海外が初めてという選手のほとんどで、言葉もわからない、文化も違うという中で、特に食事が圧倒的に違いましたね」

――現地の食事が口に合わず、かなり苦労したと?

「そうですね。あんまり大きな声で言っちゃいけないとも思いますけど、本当に合わなかったんですよね。ビュッフェスタイルだったんですけど、大人の僕でも手が伸びなかった…。現地に着いた初日の夜ご飯の時は、子どもたちが何も食べられなくて…『帰りたい』って言ってましたから」

――そこから徐々に食べられるようになった?

「はい。栄養士の先生たちにいろいろと工夫してもらいながら、ですね。何日か経った時、僕がお皿に何も料理が乗ってない状態でいたら、子どもたちが2、3人来て『監督!チャレンジですよ!』って(笑)。『僕たちもチャレンジします!』って。その姿を見て、たくましいなって思いましたね。何においても“バランスが大事”っていう話はずっとしていましたし、運動をしたら栄養を摂って、睡眠することの大事さも教えていました。その通り、最後にはみんなが食べてくれましたし、そのおかげで熱中症も一人も出ずに戦えた。他のチームは試合中足を攣ったりとか、試合に出られなかったりした選手もいましたけど、我々はそういう選手が一人もいなかった。しっかりとした戦う土台を作れたのが大きかったですね」

アジアとの対峙と毎晩のミーティング

【撮影:三和直樹】

――実際の試合の中で感じたことは?

「ピッチャーのレベルは高かったですね。特に変化球。上から下、横に曲がってきたりして、その変化球を意識すると今度は高めに速いボールが来る。(変化球が禁止されている日本の小学生は)ストレートしか見たことないので、打てないですよね。でもそれに対応しないといけない。その中で子どもたちのバッティングは圧倒的に変わりました。最初の合宿とかではみんなアッパースイングで、トスバッティング、ペッパーができない状態で、全部フライになるですよね。その課題をみんなが理解して、克服して、ガラッと変わりましたね。この世代は本当に成長が著しい。とにかくバッターはバットに当たらないと何も起きないので、この大会で何とか彼らがバットに当てて打球を前に飛ばしてくれたおかげで相手のミスが出て、そのミスを逃さずに得点できた。彼らの成長を感じましたし、監督として感謝しています」


――大会中、毎晩のように反省会、ミーティングを行なったとのことですが、子どもたちの反応は?

「僕個人的には、子どもたちは『またミーティングかよ!また勉強会かよ』って思ってるんじゃないかなと思っていたんですが、優勝が決まった夜に食事しながら『ごめんな、毎日ミーティングばっかりして…』って言ったら、『いや監督、ミーティングはすごく楽しくて、勉強になりました』って言ってくれたんです。『知らないことばかりで、いろんなことが知れたのでうれしかった、楽しかったです!』って言ってくれたのが、僕としては救われた思いでしたね」

――他のアジアの国のレベルアップは感じましたか?

「そうですね。韓国はもちろんですけど、中国もレベルが上がって来ていますし、特に台湾はすごくレベルが上がって、びっくりしましたね。こんな牽制するんだっていうトリックプレーもありましたし、日本のスモールベースボールを取り入れながらやっているんだなとも思いました。ですので、日本はさらにその上を行けるように、もっと緻密な野球をしていかなきゃいけないなと思いましたね」

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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、サッカー、野球を中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。その後、野球専門誌所属を経て、現在はフリーランスとして幅広く取材、執筆活動を続けている。

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