なぜMLBは二世選手が大成するのか? 通算本塁打No.1“父子鷹”を追いかける現役ジュニアたち

村田洋輔

タティスJr.(左)とゲレロJr.(右)は現役で活躍する二世選手の代表的存在 【Photo by Brendon Baranov/MLB Photos via Getty Images】

スター選手を身近に感じられる環境

 現在のMLBではボビー・ウィットJr.(ロイヤルズ)、ウラジーミル・ゲレロJr.(ブルージェイズ)、フェルナンド・タティスJr.(パドレス)ら多くの二世選手が活躍している。日本のプロ野球と比較すると、MLBでプレーする二世選手の数はかなり多い印象を受けるが、なぜそのような状況が生まれているのだろうか。

 最大の理由として考えられるのは、幼少期からMLBのトップ選手と触れ合う機会が多く、超一流のプレーやルーティーンを身近で見て、感じて、学べるということだ。アメリカの学校の夏休みは2カ月半から3カ月と日本より長く、MLBの選手たちは球場に家族を連れてくるケースがとても多い。フレディ・フリーマン(ドジャース)の息子がクレイトン・カーショー(昨季限りで引退)らチームメイトとキャッチボールをする姿を見たことがあるMLBファンも多いはずだ。また、フィールド上だけでなく、クラブハウスやキャンプ地でもMLBの現役選手たちと時間を共有することができる。

 2022年のドラフトで全体1位指名を受けたジャクソン・ホリデー(オリオールズ)は父マットがロッキーズに在籍していたとき、同僚の名三塁手ノーラン・アレナド(現ダイヤモンドバックス)と一緒に守備練習をしていたという逸話があるが、こうした「スター選手」と「MLB選手の息子」に関するエピソードは枚挙に暇がない。ジェレミー・ペーニャ(アストロズ)も父ジェロニモがカージナルス時代に名遊撃手オジー・スミスと一緒にプレーしていたため、「オズの魔法使い」と呼ばれたスミスの逸話を父から聞きながら成長してきたという。このように、プロのトップ選手が身近にいるという環境が二世選手の誕生を後押ししていることは間違いない。

 もう1点挙げるとすれば、MLB選手の経済的な豊かさか。高度なトレーニング機器を揃えたり、専属のインストラクターを雇ったりするためにはどうしてもお金がかかる。MLBの舞台で活躍している選手なら子どもに野球をプレーするための充実した環境を用意してあげることも難しくはないのだろう。もちろん、いわゆる「プロアマ規定」がある日本とは異なり、親から子への指導に制限がないという点も二世選手の誕生や活躍を後押ししていると思われる。

“父子鷹”で打ち立てた偉業の数々

父・ボビー(左)がジャイアンツの打撃コーチ時代のボンズ親子(右:バリー) 【Photo by V.J. Lovero/Sports Illustrated via Getty Images】

 では、MLBではこれまでにどんな二世選手が活躍してきたのか。「父子コンビ」の様々な記録を紹介しながら、二世選手たちの活躍を振り返っていこう。

 MLB史上最も偉大な「父子コンビ」と言われているのがボビー・ボンズとバリー・ボンズだ。MLBの長い歴史上、通算300本塁打&400盗塁を達成したのはボビー(332本塁打&461盗塁)とバリー(762本塁打&514盗塁)の2人だけ。これだけでもこの親子がいかに突出した存在であるかがわかるだろう。親子で放った1094本塁打はグリフィー親子の782本塁打に大差をつけてトップ。合計安打数でもトップのグリフィー親子(4924安打)に迫る4821安打をマークしている。

 そのグリフィー親子は今後二度と達成されないと思われる歴史的な快挙を成し遂げている。それは「親子による2者連続ホームラン」だ。1970年代の強豪レッズにおいて「ビッグ・レッド・マシン」と呼ばれた強力打線の一翼を担ったケン・グリフィーSr.は現役晩年の1990年8月にマリナーズと契約。息子のケン・グリフィーJr.が前年にMLBデビューを果たしていたため、親子がチームメイトになるという史上初の珍事が発生した。さらに9月14日のエンゼルス戦ではシニアが「2番・左翼」、ジュニアが「3番・中堅」でスタメン出場。初回にシニアが3号先制2ランを放つと、ジュニアも20号ソロで続き、史上唯一となる「親子連続アーチ」が達成された。インパクトという点ではボンズ親子を上回ると言ってもいいかもしれない。

1990年、マリナーズでチームメイトとなったグリフィー親子(左:シニア、右:ジュニア) 【Photo by Mitchell Layton/Getty Images】

 今後、ボンズ親子やグリフィー親子を超えていく可能性があるのがゲレロ親子だ。父のウラジーミル・ゲレロSr.はエンゼルス時代の2004年にMVPを受賞した名選手であり、通算2590安打、449本塁打の実績を残して2018年に米野球殿堂入り。息子は2021年にブレイクして本塁打王に輝くなど、球界を代表する強打の一塁手として活躍を続けている。14年5億ドルの超大型契約がスタートした今季は不振に陥っているが、まだ27歳ながら通算安打は1200本、通算本塁打も200本に迫っており、ジュニアが現役終了時点で646本塁打、2335安打を記録すれば、合計の本塁打数はボンズ親子、安打数はグリフィー親子を超えることになる。なお、親子揃ってホームランダービー優勝を果たしているのはゲレロ親子だけである。

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著者プロフィール

神戸出身。2001年、イチローのマリナーズ移籍をきっかけに本格的にMLBに興味を持つ。2016年からMLBライターとしての活動を開始し、2017年から日本語公式サイト『MLB.jp』編集長。2021年にはSPOZONE(現SPOTV NOW)で解説者デビュー。ジャンカルロ・スタントンと同じ日に生まれたことが密かな自慢。

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