敗者たちが語るF1今季前半戦 なぜ彼らは苦戦したのか

柴田久仁夫

フェルスタッペンとアロンソ

前戦ハンガリーGPのアロンソは、久々に戦う男の顔を見せた 【(C)AstonMartinF1】

 今季11戦を終えて未勝利。選手権6位。しかしフェルスタッペンの苦戦は、ノリスやラッセルとは意味が違う。彼が問題視しているのは、レッドブルの戦闘力だけではない。2026年のF1そのものなのだ。

 彼が求めているのは、マシンの限界まで攻め、ドライバーの腕で速さを引き出すF1だ。しかし2026年のマシンでは、エネルギーを温存するためにアクセルを緩めたり、戦略的にパワーを配分したりすることが、これまで以上に重要になった。

「これはF1じゃない」「まったく楽しくない」

 そんな違和感を、フェルスタッペンはシーズン開幕後も繰り返し訴え続けた。さらに日本GPでは、こんな気になる言葉まで飛び出した。

「毎朝起きるたびに、自分自身を納得させている。やってみろ、ってね。でも時間が経つと・・」。F1を戦うモチベーションについて問われたときの答えだった。

 もちろん、彼がすぐにF1から去るという話ではない。しかし今のフェルスタッペンは、勝てるかどうか以前に、「自分が愛してきたF1は、これからも自分が戦いたいと思えるものなのか」と問い続けている。F1そのものへの違和感と戦いながら、なおコースに向かい続けること。そこに2026年のフェルスタッペンが抱える、もう一つの苦しさがある。

 アロンソの現実は、さらに厳しい。望みうる最高の体制で臨んだはずが、前半戦を終えてアロンソが手にしたポイントはわずか1点だった。だがアロンソの戦う姿勢にブレはない。開幕戦オーストラリアGPをリタイアで終えた際、「常に進歩はある」と、アロンソはコメントしていた。

 その思いは今も変わらず、そこから5ヶ月の忍耐を経て先月末に投入された改良版マシンによって、アストンマーティンの戦闘力は秒単位で上がった(前回コラム参照)。

決して敗者では終わらない

今季初勝利を挙げ、フェルスタッペンと健闘を称え合うノリス 【(C)McLarenF1】

 前半戦だけを見れば、彼らは確かに敗者だった。ノリスは、前年王者としての輝きを失い、フェルスタッペンは今のF1そのものへの不満を隠さない。ラッセルは、勝てるマシンを手にしながら結果に恵まれない。そして復活を期したアロンソは、わずかなポイントしか獲得できていない。

 しかしこれだけの顔ぶれが、後半戦もズルズルと不振を続けるとは考えにくい。ノリスは先月の今季初優勝が、弾みになりうる。アロンソはホンダの新PU(パワーユニット)が期待通りのパフォーマンスを発揮すれば、さらなる飛躍が期待できる。ラッセルも、タイトル獲得の意欲は衰えていない。

 フェルスタッペンだけは、少し厄介だ。「戦うことの楽しさ」を第一義に置く彼にとって、今季の改変は許せないレベルであろうから。とはいえアントネッリとの激闘を制して上がった2位表彰台の彼の表情は、十分に清々しく見えた。来週のオランダGPから始まる後半戦は、彼ら4人の立ち直りに特に注目しようと思う。

(了)

2/2ページ

著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

当サイトには一部アフィリエイトリンクが含まれています。

リンクから商品・サービスをご購入いただいた場合、スポーツナビに収益が発生することがあります。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント