敗者たちが語るF1今季前半戦 なぜ彼らは苦戦したのか

柴田久仁夫

今季未勝利のフェルスタッペン。それでも前戦ハンガリーGPでは晴れやかな笑顔を見せた 【(C)RedbullF1】

敗者たちの前半戦

 F1シーズンも、前半戦を終えた。

 新しい技術規約が導入された2026年は、勢力図も大きく変わった。去年の覇者マクラーレンは選手権3位に沈み、メルセデスが躍進。19歳のキミ・アントネッリが、タイトル争いの主役に躍り出た。

 一方で思うような結果を残せず、苦戦を強いられたドライバーもいる。去年のチャンピオン、ランド・ノリス(マクラーレン)、そのノリスと最終戦までタイトルを争ったマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、そしてアストンマーティン・ホンダで本格復活を目指した元世界チャンピオン、フェルナンド・アロンソ。

 敗者のリストには最後に、ジョージ・ラッセルも加えるべきだろう。所属するメルセデスの好調ぶりは開幕前テストから際立っており、エース格のラッセルはチャンピオン候補最右翼のはずだった。ところが開幕戦こそ制したものの、その後はアントネッリが5連勝を含む6勝を挙げ、ラッセルはすっかり脇役に回ってしまった。

 なぜ彼ら4人は、期待した結果を出せていないのか。敗者たちの言葉を追うことで、F1の現在地が見えてきそうだ。

ラッセルとノリス

ラッセルは不運の連鎖を断ち切れるか 【(C)MercedesF1】

 メルセデスは勝ち続けている。マシンの戦闘力も、今のところは最強だ。なのにラッセル自身はトラブルや不運に次々と見舞われ、思うようにポイントを積み重ねられていない。勝てるはずのレースでバッテリーに問題が起き、ペナルティに泣き、接触に巻き込まれ、そして前半戦最終戦ハンガリーGPではエンジントラブルまで起きた。

「もう失望することに疲れた」

 同GP後、ラッセルはそう語っていた。

 勝てるマシンを手にしているからこそ、結果につながらない一つ一つの出来事が余計に悔しい。ラッセルの前半戦は、F1における「勝者の中の敗北」を象徴している。

 ノリスは去年、悲願のドライバーズタイトルを獲得した。チームもコンストラクターズ選手権を制し、まさにF1の頂点に立っていた。ところが、新レギュレーション元年となった今季、状況は一変した。

 ノリス自身、「毎週末いいパフォーマンスを出すことが、どれだけ難しいか」と語っている。今季のマクラーレンマシンは、コース特性や気温、風の変化に特に敏感で、その調整に手こずっている印象だ。マシン自体は決して遅いわけではない。実際、速さを見せる週末もある。しかしその速さを、安定して引き出せずにいる。

 前年王者が、翌年の新しいF1に最も早く適応できるとは限らない。むしろ成功したチームだからこそ、これまでの強さに引っ張られてしまうことがある。ノリスの苦戦は、そんな「成功者の敗北」を象徴している。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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