「絶対大丈夫」その裏にあった野村克也の言葉 髙津臣吾が優勝でも涙を封印した“24歳のあの日”
言葉を武器にした監督の真意
山田哲人、村上宗隆、青木宣親、塩見泰隆、長岡秀樹、奥川恭伸、高橋奎二、石川雅規、マクガフ、つば九郎 etc……戦友たちへの本音も収録!
最下位、日本一、リーグ連覇、3年連続Bクラス…酸いも甘いも噛み分けた指揮官の真実
ユニフォームを脱いだ今だからこそ話せることがある――。
髙津臣吾著「愛と哀しみのスワローズ」から2021年シーズンの一部を抜粋して掲載します。
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魔法の合言葉「絶対大丈夫」
あれだけ詳細なデータを積み上げて、「ID(データ重視)野球」を掲げていた野村監督が、「最終的には気持ちだ」と発言したのである。この言葉が強く印象に残っていた。
特に「今、このタイミングだ」と狙い定めたわけではない。ただ、ここからの戦いは、技術以上にメンタルのコントロールが勝敗を分ける。選手たちが緊張で硬くなっているのを感じたら、どこかでその心を解きほぐしてあげなければならない。
それは監督としての僕の義務だと思っていた。野村監督から贈られたあの言葉は、全力を尽くした先にしか訪れない境地を説く、僕なりの「お守り」だった。
ミーティングの最後、僕は「オレたちは絶対大丈夫だ」と力説した。これが、このとき僕がいちばん選手たちに伝えたかったことのすべてだ。
勝って浮かれる必要はない。負けて尻込みする必要もない。
ただ、前向きに明日のための予習をし、終わった試合を復習する。そのサイクルを信じて積み重ねてきた僕たちが、崩れるはずがない。その揺るぎない確信を、僕なりの表現で凝縮したのが「絶対大丈夫」という言葉だった。
この「絶対大丈夫」という言葉は、根拠のない精神論ではない。ともに苦しみ、ともに這い上がってきた選手たちへの、最大のリスペクトと信頼の証だ。
運命の10月。プレッシャーはさらに増していくだろう。けれど、この言葉を胸に刻んだスワローズは、もう二度と崩れることはない。
僕たちは強い。僕たちはできる。
絶対大丈夫――。歴史を築く準備は、すでに整っていた。
首位に立って迎えた10月も勢いは衰えなかった。5〜10日にかけては読売ジャイアンツ、タイガースと6連戦を行った。ここで勝ち越せばまた一歩、優勝に近づくものの、もしも大きく負け越すことになれば首位戦線からの脱落もあり得る状況だった。
そしてこの6連戦を5勝1敗で乗り切ることができたのである。
10連戦、そして息つく暇もなく続く6連戦。肉体的な疲労がピークに達しているのは間違いなかった。だが、このときのチームのムードは前年までとは根本的に違う。
それは単に「勝っているから」だけではない。選手たちの心の中に、消えることのない炎が灯っていたからだ。
正直に言えば、最下位に沈んだ20年は、心の奥底から熱くなれないゲームもあったかもしれない。しかしこのときは違った。一戦一戦、心の底から燃えるようなゲームを戦い抜いていた。この「熱」がある限り、疲労など大きな問題ではなかった。
ペナントレース開幕前から、僕は「9月、10月が勝負だ」と説き続けてきた。
実際に迎えた9月の10連戦、そして10月のジャイアンツ、タイガースとの6連戦。選手たちは、僕が思い描いていたプランをはるかに上回る、想像以上の戦いを見せてくれた。
その要因は、間違いなく投手陣の踏ん張りにある。
先発もリリーフも、勝っていても劣勢でも、決して試合を壊さなかった。「自分の仕事をまっとうし、次へ繫ぐ」という執念が、僅差のロースコアをものにする力となった。シーズン途中には、田口麗斗やスアレスを先発からリリーフに配置転換した。
そして奥川をカード初戦に据えるローテーションを組んだ。これらも早い段階から温めていたプランだったが、選手たちがそれを見事な形で体現してくれた。
僕自身がクローザーだったこともあるけれど、今野龍太、清水昇、そしてスコット・マクガフ。彼ら救援陣への要求は、非常に厳しいものだったと思う。
僕だけの感じ方かもしれないが、優勝争いの中での登板は、あまり疲れを感じない。心も身体も常に緊張しているから、すべてが終わったときにドッと疲れが出る。だからこそ、起用する側がブレーキをかけ、細心の注意を払わなければならない。
コーチ陣と密に連絡を取り合い、彼らの「ギラギラした目」を信じつつも、コンディション管理には最後まで神経を研ぎ澄ませていたのだ。