2026-27シーズンのJ1・J2「補強・戦力」を徹底分析!

評価が割れるプレーオフ争い、横浜FC、湘南、新潟のJ1復帰は? エキスパート3人によるJ2展望座談会【中編】

菊地正典

J2の中では相当いい選手を獲得

清水から加入した髙橋利樹。運動量豊富なストライカーは鳥栖の新エースとして期待がかかる 【(C)J.LEAGUE】

――1人がAクラス、2人がBクラスと予想した最後のチームはサガン鳥栖(百年構想リーグ11位)です。Aクラスに入れた河治さんはどのように評価していますか?

河治 期待値も入ってしまうんですけど、小菊昭雄監督が選手一人ひとりをリスペクトしているというか、選手の出入りが激しいチームなので、一人ひとり面談して熱意を伝えて獲得するという流れがあって、そこに思い入れを感じます。今回の移籍では上位を争うチームの中では多い方でした。インもアウトも10人弱。ヴィキンタス・スリヴカ(→FKカウノ・ジャルギリス)がいなくなったりしましたが、一方で、中原輝(←清水エスパルス)、山内翔(←ヴィッセル神戸)、阿部海大(←岡山)など能力値の高い選手たちが加入しています。そういう選手たちが、今ある鳥栖のベースにどういうものを加えていくのかはすごく楽しみですね。

 戦い方としてはアグレッシブにいくと思うんですけど、小菊さんはバランス感覚がある監督なので、長いシーズンの中で夏場の戦い、それから秋冬になっていくところのマネジメントもしっかりやるだろうという期待があります。

 あとは2025年の後半戦に昇格のラインに乗りかけたところでV・ファーレン長崎に負けて失速してしまった流れも見ていたので、仙台もそうですが、そういう悔しさを26/27シーズンで晴らしていくんじゃないかなという、リバウンドメンタリティーを期待したいチームの一つですね。

土屋 百年構想リーグで全試合にスタメン出場した弓場堅真が柏レイソルに移籍したのは痛いですが、それ以外の主力選手はほとんど抜けていませんし、鳥栖も百年構想リーグでかなりの選手がゲームに出ていたんですよね。若い選手も出場経験を積めたアドバンテージはあると思います。

 補強に関しては、J2の中では相当いい選手を取ってきたと思います。特に山内は期限付きとはいえ、よくヴィッセルが出したというくらい。筑波大を経ていますが、ヴィッセルにとっては大切に育ててきた選手なので、逆に言うと山内にとってはここが勝負だと思います。あとは髙橋利樹(←清水)が入ったのも大きいなと。J2の得点王を狙えるくらいの力はあると思うので、彼も勝負の1年だと思います。

 それから、2013年から17年まで鳥栖に在籍していた藤嶋栄介(←鹿児島ユナイテッド)が戻ってきました。鳥栖のことをよく分かっているベテラン選手がGK陣に与える影響は、ゲームに出る、出ないにかかわらずすごく大きい。そういうことも含めての補強だと思いますが、藤嶋を取ったところに鳥栖の戦略を感じます。

――板垣さんはどうですか?

板垣 鳥栖は今のJ2の中でも有機的に陣形変化ができるチームだと思います。補強戦力の豪華さもあるんだけども、小菊さんが継続して指揮するのも大きいと思っていて、攻撃だけでなくて守備でも主導権を握れてしまうような追い込み方がすごくうまいです。攻撃の三角形はよく言われますが、守備でも三角形を作って追い込める。そういう繋がりができるチームという印象があって、仙台が対戦したときは嫌でした。

 ただ、支配はするんだけども、決め手をどうするのか。髙橋はピースとして期待されていると思いますが、長丁場ですから信頼できるFWは2枚、3枚あった方がいい。支配するほうにエネルギーを使い過ぎず、決める人を交代も含めてどうマネジメントをするかですね。

――そして三者三様のチームが2つあります。まずはブラウブリッツ秋田(百年構想リーグ6位)。Aクラスに入れたのは土屋さんです。

土屋 とにかく守備が大崩れしない、やることが徹底されているチームです。この継続力はJ2の中でも一番じゃないでしょうか。J2に昇格したときから、いわゆる有識者の方々が常に降格に近いところに予想してきたチームだと思いますが、残留争い自体もほとんどしたことがないですし、必ず中位をキープしています。

 そんなに見ていない人からは「蹴るだけでしょ? 守っているだけでしょ?」と言われてしまうチームですが、今年加入した野々村鷹人が、その蹴るとか守るの中に「実は細かいルールがあることに驚いた」という話をしていました。今年で7年目になる吉田謙監督のもとで1年1年、ブラッシュアップされてきているんですよね。特に守備の選手はJ1に引き抜かれることが多く、そういうモチベーションを選手が持っているのも大きなプラス材料です。佐藤大樹(→磐田)が抜けたのはいろいろな意味で大きいですが、特徴の近い粟飯原尚平(←水戸ホーリーホック)を獲得しているのと、岩井琢朗(←ジェフユナイテッド市原・千葉)という両足使えるアタッカーも入ってきました。

 補強も少し前より選ばれるチームというか、秋田に送れば鍛えてくれると思われるチームになりつつあるので、いろんな意味で期が熟している感じです。残留は絶対するし、中位にも確実に行く。さらに今年はステップアップする年じゃないかということも含めて、百年構想リーグの結果を元にAクラスにしました。

――板垣さんは百年構想リーグの地域リーグラウンドで仙台との対戦もあった中でBクラスです。

板垣 地域ラウンドではトップ争いをするくらいまでになっていました。スタイルのブレなさや失点の少なさは長期戦で武器になると思います。ただ、Aクラスにしなかったのは佐藤が抜けたところ。秋田はどのポジションからでもFWにボールを送りますが、ラストパスを送る選手はまた別なので、そこをどうするかですよね。キーパスやセットプレーの供給源をどのようにするか。

 あとは秋田スタイルがブラッシュアップされるなかで、ところどころで変化を加える選手がいますよね。百年構想リーグの前には中野嘉大が入りましたし。ああいうドリブラータイプ、少し前の秋田だったら取らなかったかもしれない選手を組み込んで、分かっていても止められないならいいんだけれども、スカウティングで封じられたときの「秋田ってこんなこともできるの?」という引き出しをどれだけ持てるかがポイントになるんじゃないかと思います。

 あとは環境面です。新スタジアム建設で明るい話が出てきたのはすごくいいことですが、今のスタジアムだとお客さんが集まりにくい難しさがあって、フロントの方も苦労されているので、ホームアドバンテージを得る上で、さらに集客できるかどうかというところも問われると思います。

守備の整備の見通しが立つかどうか

かつて磐田をJ1に復帰させた横内昭展監督。その経験は山形にとって大きなアドバンテージとなる 【(C)J.LEAGUE】

――河治さんはCクラスにしています。

河治 Cクラスと言っても降格ではないんですけど、秋田にも対応できるようなチームが増えてきました。カターレ富山やテゲバジャーロ宮崎、鳥栖もそうですし、ジュビロも前からサッカーをしていきたいチーム。それに対して、秋田の裏への割り切ったボールは、もちろん戦術としてあるんですけど、対秋田、対いわきはどのJ2チームにとってもポイントになっていくでしょうし、J2の一つの見どころになっていくと思います。

 ただ、ワールドカップも決勝でスペインがアルゼンチンにほぼ何もやらせずに優勝して、サッカーの移り変わりというか、秋田のフットボールを否定するわけではないですけど、J2の中でも一つの潮目のようなシーズンになっていくという期待もありますし、僕も佐藤の穴は相当大きいと思います。

板垣 今、一つ思い出したんですが、新ルールは今季の秋田にとって大きなポイントになるのではないでしょうか。スローインに時間を掛けられないので、ロングスローをする際に最終ラインの選手たちを上げる時間が取れない可能性がありますよね。

土屋 確かに。秋田にとっては特に重要ですね。

――続いて山形(百年構想リーグ28位)はどうでしょう? 河治さんはAクラスに予想しています。

河治 百年構想リーグの評価だけだとAクラスには挙げられないですよね。僕もギリギリまで悩みました。新潟のときに迷ったというのは山形です。元々持っているベース自体は高いので、百年構想リーグは個の勝負で勝ち点をモノにできない試合が結構ありました。

 守備のバランスという点では、森岡陸(←磐田)や左サイドの杉井颯(←鹿児島)はすごくいい補強だと思います。あとはGKで佐藤瑠星(←浦和)が加入しました。浦和でなかなかチャンスがなかったですが、J2に行くとは思いませんでした。ここで存在感を見せて浦和に戻るのか、海外に行くのかは分かりませんが、それくらいの選手です。山形には他にも良いGKがいますが、佐藤が守護神としてチームを支える存在になっていってほしいですし、鈴木彩艶(パルマ)に追いつき、追い越すと言っていたのを有言実行してほしいです。

 GKがしっかり守れると山形はさらに強くなってくるし、プレーオフと言わず自動昇格の可能性も出てくると思います。あとは何と言っても、サポーターが熱いので、上位争いになればなるほど、そこが強みになっていくでしょうね。

――山形は仙台とも戦った百年構想リーグの地域ラウンドでは10チーム中7位と低かったですが、板垣さんはBクラスにしていますね。

板垣 守備が未知数なところに、河治さんがおっしゃったように個として良い選手が入ったので、守備の整備の見通しが立つかどうかだと思います。攻撃に関しては土居聖真やディサロ燦シルヴァーノが万全なら、というところに森海渡(←横浜FC)や川名連介(←栃木SC)が加入したので、攻撃のバリエーションが増えると思います。ただ、後ろの整備はどうなるのかなという点は気になっています。そのバランスの調整次第という気がしています。

河治 百年構想リーグでは意外にもディサロが不発でしたが、そこがうまくかみ合ってくるとプラスにしかならないと思います。ディサロが復活すれば、それはもう事実上の補強みたいなものです。

――土屋さんは山形をCクラスにしています。

土屋 百年構想リーグではJ2・J3全体で下から5番目なのでCクラスですが、Aクラスに行かなければいけないチームだと思っています。90分で言うと、百年構想リーグのJ2クラブの中で負けが最も多かったんですよ。10敗していて、しかも連敗が多かった。5連敗もあったし、連敗自体3回していて、負けると止まらない感じが不安材料です。あとはお2人もおっしゃっていますが、点が取れるFWが出てこなかった。

 その点では、横浜FCから加入した森はポテンシャルを発揮すればJ2の得点王になれるくらいのものを持っています。大きなケガがあったので、ここ数シーズン活躍できていませんが、この選手も今年が勝負だと思うので、彼がどれくらいやれるかが大きなポイントでしょうね。GKに関しては、渋谷飛翔も相当良いGKだと思うので、佐藤がどれくらい高いレベルでポジション争いするか、併用でもいいと思いますが、切磋琢磨していくことが山形の守備陣にとって大きいと思います。

 あとはジュビロでJ1昇格を経験している横内昭展監督の手腕次第。僕は昇格を経験している監督がいるだけで大きなアドバンテージだと思っています。優しい人だし、いい人だからバリバリ引っ張っていくという感じじゃないかもしれないけど、昨年の上積みもあると思うので、横内さんの采配が一番大きいポイントなのかなと思っています。

<後編(8月14日掲載予定)に続く>

(企画・編集/YOJI-GEN)

河治良幸(かわじ・よしゆき)

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

土屋雅史(つちや・まさし)

群馬県出身。高崎高3年時にインターハイでベスト8に入り、大会優秀選手に選出される。2003年に株式会社ジェイ・スポーツへ入社。サッカー情報番組『Foot!』やJリーグ中継のディレクター、プロデューサーを務めた。当時の年間観戦試合数は現場、TV中継を含めて1000試合に迫ることもあったという。21年にジェイ・スポーツを退社し、フリーに。現在もJリーグや高校サッカーを中心に、精力的に取材活動を続けている。

板垣晴朗(いたがき・せいろう)

1974年1月8日生まれ。仙台を中心に、全国各地のスタジアムと喫茶店をめぐるフリーランスライター。Jリーグ、WEリーグなど国内各カテゴリーに加え、大学院時代の研究テーマとのつながりから、ドイツ・ブンデスリーガ取材にも赴く。著書はノンフィクションでは『在る光 3.11からのベガルタ仙台』(スクワッド EL GOLAZO BOOKS)など、フィクションでは雪後天 名義で娯楽小説『ラストプレー』(同)。次回作を発表する場所を探している。

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著者プロフィール

福島県出身。埼玉大学卒業後、サッカーモバイルサイトを運営するIT企業を経て、フリーランスに。2025年はサッカー専門新聞『EL GOLAZO』でジェフユナイテッド市原・千葉の担当記者を務める傍ら、サッカー日本代表や過去に担当した浦和レッズや横浜F・マリノス、川崎フロンターレなどJリーグを中心に取材している。著書に『浦和レッズ変革の四年 〜サッカー新聞エルゴラッソ浦和番記者が見たミシャレッズの1442日〜』(スクワッド)、『トリコロール新時代』(スクワッド、三栄書房)がある。

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