2026-27シーズンのJ1・J2「補強・戦力」を徹底分析!

評価が割れるプレーオフ争い、横浜FC、湘南、新潟のJ1復帰は? エキスパート3人によるJ2展望座談会【中編】

菊地正典

百年構想リーグでは尻上がりに調子を上げた横浜FC。須藤大輔監督の攻撃的なスタイルが浸透中だ 【(C)J.LEAGUE】

 26/27シーズンのJ2開幕に際して実施した恒例の展望座談会。主にAクラス予想チームについて語っていただいた前編に続き、中編ではBクラスを中心に各チームの戦力を分析してもらう。例年以上に評価が割れた今季の予想からは、それだけ実力伯仲のリーグだということが窺える。横浜FC、湘南、新潟の1シーズンでのJ1復帰の可能性は?(文中敬称略)

高校の監督をコーチとして引き抜く

Aクラス予想(並び順は北から)

河治良幸:札幌、仙台、山形、大宮、磐田、鳥栖

土屋雅史:仙台、秋田、甲府、新潟、富山、宮崎

板垣晴朗:仙台、横浜FC、湘南、富山、磐田、宮崎

Bクラス予想(並び順は北から)

河治良幸:いわき、横浜FC、湘南、甲府、新潟、富山、徳島、宮崎

土屋雅史:札幌、いわき、大宮、横浜FC、湘南、磐田、徳島、鳥栖

板垣晴朗:札幌、秋田、山形、大宮、甲府、新潟、徳島、鳥栖
――北海道コンサドーレ札幌、RB大宮アルディージャと河治さん1人がAクラスにしたチームが続きましたが、横浜FC(J2・J3百年構想リーグ13位)は板垣さんがAクラスに予想しています。

板垣 横浜FCも尻上がりで百年構想リーグを終えたチームです。攻撃陣に外国籍選手がそろっていて、放り込んで何とかできてしまうという強みもあるんですが、生命線は中盤にあると思っています。髙江麗央、山田康太、横山暁之が百年構想リーグの終盤になると完全にゲームを作っていて、サイドでも中でも自在に配球していました。逆に言えば、そこの対策を取られたらどうなるかというところが懸念材料でもあります。

 あと、率いるのが須藤大輔監督なので、前輪駆動のチームですよね。引いて引いて背中を狙うチームが増えてきたときにどうするか。長丁場のリーグ戦では特にカギになると思います。それでもスタイルが浸透した中で新シーズンに突入できるのは大きいと見て、Aクラス予想です。

――河治さんは藤枝MYFC時代から須藤監督をよく取材されていたと思いますが、Bクラスです。

河治 彼もすごく頑固なように見えて、本当に大事なときは割り切れる監督です。「ハイエナジーフットボール」を掲げていて、それを常に会見で言うところは哲学として譲れないんだと感じますが、「ここはやるしかない」というときに実行できる監督です。前線にパワーのある外国籍選手がいるので、ボールを握りながら、でも時には長いボールも使いながら、その使い分けをどうしていくか。リスク管理もどうしていくのかがポイントになるでしょうね。

 横浜FCも相手に対策されやすい側になるので、それを押し切るだけの戦力なのかという難しさはあると思います。どうしても後ろを狙われたときの守備が難しい。3バックの左にウイングバックとしてプレーしてきた細井響を入れていて、人には強いし、前にも行けるけど、本質的にカバーを得意とする選手ではないので、中央の杉田隼の負担がありながらどうやって守っていくか。楽しみでもありますし、難しさもあるだろうと思います。

土屋 J2で得点と失点の出入りが激しいトップ3が富山、大宮、横浜FCなんですけど、それはもう織り込み済みのスタイルで、3点取られたら4点取ればいい、みたいな感じだと思います。僕は大きいなと思うのは、杉田が独り立ちしたことです。横浜FCユースのころから能力はすごく高かったですが、FC岐阜や松本山雅への期限付き移籍を経て、横浜FCに戻ってきてからは完全にディフェンスリーダーになりました。百年構想リーグの終盤に杉田と細井の見通しが立ち、プレーオフを含めて最後に90分以内で5連勝したので、自信をつかんでいると思います。

 ラインを高く保って戦うというのがベースで、そのうえでバランスを取りながら勝利という結果も付いてきたのは、すごくポジティブな要素。さらに、このチームもきっと冬に驚くような補強がありそうなので、そのアドバンテージもあると思います。あとはスタジアムが良い。最高ですね。

 何度も言うように百年構想リーグの上位にリスペクトを込めてこういう予想になりましたが、横浜FCはAにも行けるけどBの可能性もある、これから驚くような補強があればAクラス。戦力の総合値はJ2の中でも高いと思います。

――湘南ベルマーレ(百年構想リーグ12位)もAクラス予想が1人。Bクラス予想が2人。まずAクラスに入れた板垣さんからお願いします。

板垣 まず積極補強が目を引きますよね。西野太陽(←栃木SC)や上月壮一郎(←FCヴィクトリア・ケルン)、堂鼻起暉(←いわきFC)、深澤佑太(←松本)を獲得しました。百年構想リーグからの補修と上積みを相当うまく考えて選手を獲得したと感じました。百年構想リーグの湘南は少し迷いながら戦っているように見えて、縦のスタイルを徹底されると相手としては怖いと思いましたが、「そこで回避のパスを出すの?」という試合もけっこうあったんです。

 中盤の強度は高いと思いますし、拠り所として縦に速いスタイルがありますが、探り探りやっていたのではないかというのが外から見た印象です。だからこそ、たくさん獲得した即戦力を迷いなく振り切らせることができれば、上位争いに入ってくると思います。

河治 確かにジュビロ磐田に次ぐくらい、主力になる選手を上書きするような、4、5人くらいスタメンに新戦力が並んでいてもおかしくない構成になっていますね。そこが思惑通りにいくかどうかがポイントになりそうです。

土屋 僕はBクラスに挙げたチームの中では、Aクラスに入る可能性が最も高いチームだと思っています。まずは長澤徹監督が非常に優秀ですし、徹さんを慕って湘南に行く選手も多いです。今年も徹さんのもとでプレーしていた武田将平、下口稚葉、さらにアルトゥール・シルバまで湘南に入ってきて、この3人がしっかり主力になりました。板垣さんもおっしゃいましたけど、堂鼻、西野、深澤と百年構想でパフォーマンスが際立っていた選手をしっかりスカウティングして補強している、湘南の今のチームにフィットする選手を取っているところで、期待感が増しています。

 僕はコーチングスタッフにも着目してしまうんですけど、石川隆司ヘッドコーチ、若宮直道コーチと京都サンガF.C.で徹さんと一緒にやっていた2人が入っている。さらに去年までファジアーノ岡山U-18の監督をやられていた梁圭史さんも今年から入閣した上に、浜松開誠館高の監督を務めていた青嶋文明さんを新シーズンからコーチとして引き抜いてきたんですよ。青嶋さんは開誠館をすごく強くした指導者なんですけど、徹さんと青嶋さんは同い年で、徹さんが清水東高、青嶋さんは清水商業高(現清水桜が丘高)で高校時代からのライバル関係、しかも2人は本田技研で一緒にプレーしているんです。高校時代から繋がりのある人で、静岡の高校の監督を引き抜いた。青嶋さんは58歳で高校の監督を辞めてJリーグのコーチになるんだから相当な覚悟だし、そういう覚悟をさせるほどのアプローチだったと思うので、本気度を感じます。

 こういう人たちの何が最もアドバンテージになりそうかと言うと、若手の育成に長けているコーチがめちゃくちゃ多いんですよ。だから今はゲームに出ていない有望な若手がシーズンを通じてかなり台頭してくるんじゃないかと思います。徹さんも岡山や京都での成功体験があるので、コーチの陣容に湘南の伸びしろを感じます。

百年構想リーグの4カ月はアドバンテージ

新潟のキャプテンを務める藤原奏哉(左)。このJ2屈指の右サイドバックがチームを引っ張っていく 【(C)J.LEAGUE】

――次は土屋さんがAクラスにしたヴァンフォーレ甲府(百年構想リーグ4位)について聞かせてください。

土屋 百年構想リーグでは勝ち負けを含めて、地域リーグ18試合中13試合、プレーオフは2試合とも1点差ゲームでした。勝つゲームでも負けるゲームでも、うまく試合を着地させるというか、先ほど言った出入りの激しい3チームとは対照的にゲームがあまり動きません。

 その中で、甲府のアカデミー出身の井上樹が最終ラインで独り立ちしたのがすごく大きいと思っていて、百年構想リーグの前半戦はダブルボランチでしたが、後半戦は中盤を逆三角形にしたんですけど、そこで安田虎士朗と武井成豪が安定感を発揮してきました。この2人も育成年代からスーパーな選手でしたが、いろいろなチームを巡りながら自分の居場所を見つけたという感じがあるのでうれしいですね。

 あとは黒川淳史。百年構想リーグはそれほど出ていませんでしたが、J1レベルの選手だと思うので、彼がフル稼働すれば攻撃はブラッシュアップされると思います。それから福元竣という城西大から入ったルーキーがいて、大学4年の最後にケガをして出遅れていますが、伊東純也(ゲンク)、佐々木翔(サンフレッチェ広島)、稲垣祥(名古屋グランパス)を発掘した森淳スカウトが「この選手はいい」と1本釣りした選手なので、かなり期待できると思います。

――仙台は甲府と百年構想リーグのプレーオフで対戦していますね。

板垣 僕は総合順位1位から4位の中で甲府を唯一Bクラスにしました。確かに堅いです。守備が堅い。試合運びも堅い。ただ、土屋さんが挙げられた攻撃力のブラッシュアップをどうするかというところが引っかかっていて、太田龍之介(→磐田)が抜けてしまいましたからね。和田拓也(←大宮)が入ってますます手堅くなりますが、前の方はどう磨くのか。若手の爆発力はあるのかとか、百年構想リーグの前はスタチオーリ・ミケーレがすごく期待されていたんだけど、3試合しか出ていなかったしどうなっちゃうのかなとか、そういうことが気になっています。

 攻撃の仕掛けをどれくらい持つかじゃないですかね。プレーオフ第1戦が終わったあとの渋谷洋樹監督の会見では課題の攻撃についての話がほとんどでしたから。守備は大崩れしない。それはこの夏から始まるシーズンでも大きな武器になると思います。負けないチーム。ただ、勝てるチームにどれくらいなれるかが焦点ではないでしょうか。

河治 渋谷監督はバランスワークにすごく行ってしまう監督なんですよね。守備をしっかりやろうとすると、攻撃が少し足りなくなる。攻撃に行こうとすると守備が少し足りなくなる。そのせめぎ合いが見受けられます。うまくいっている部分をなるべく変えたくない、そのうえで何とかしたい、みたいなことなんだと思いますが、だから攻撃面で爆発するのは難しいかなと。

 逆に言うと大崩れしないので、確実にBクラス、1桁の順位には入ってきて、そこからJ1昇格プレーオフ、自動昇格というところまで狙うには、タレントの成長次第だと思います。

――次はアルビレックス新潟です。こちらも土屋さんがAクラスにしています。

土屋 新潟も尻上がりにチーム力が上がっていった印象があります。船越優蔵さんがJリーグでは初監督だったので、序盤は勝ち星がついてこなくて難しい感じでしたけど、船越監督にとってもこの百年構想リーグの4カ月はアドバンテージになったと感じています。

 新加入には桑山侃士(←FC町田ゼルビア)がいます。最近の新潟にはいなかったタイプ、サイズがあってターゲットになれるFWです。根拠がないような自信をゴールに結びつけられる面白い選手で、僕はすごく好きな選手です。さらに、ボランチでも前でもプレーできる笠井佳祐が同い年の桑山の加入に刺激されていて、2人で2トップを組むこともあるようなので、化学反応がポジティブに行きそうです。ただ、やっぱりこのチームは藤原奏哉のチームだと思います。

板垣 分かります。

土屋 藤原奏哉はJ2屈指の右サイドバックだと思っていて、どちらかと言うとおとなしいタイプだと思うんですけど、今年はキャプテンに就任してピッチ上でチームを引っ張っていこうという気概を感じます。すごく苦しんでいる中でチームを引っ張っていこうというエネルギーがピッチから出ていました。藤原が新潟の一番のキーマンですし、彼がずっと出続けること、チームを引っ張ることが昇格の重要なポイントだと思っています。

河治 J2屈指どころかJ1でも……。

土屋 全然やれると思いますね。

板垣 確か2025年のJ1で対人勝利数が2番目だったんですよね。

河治 だから新潟に残っているのは愛なのか。オファーがないわけがないと思うんですよ。逆に言うと今の時代ではちょっと珍しい、いわゆるバンディエラになっていくような選手だと思うので、期待したいですよね。

 僕もBクラスに予想した中でもAクラスに限りなく近いというか、正直6番目に入れたチームとかなり迷ったんですよ。船越監督は批判もありましたけど、しっかり我慢して、尻上がりで終えているので、さらなるものを期待したいです。船越監督はアグレッシブなマインドを持っているので、前向きなスタイルにおいて後ろの選手たちがどうカバーしていくかがポイントですね。

板垣 僕も河治さんがおっしゃった後ろの整備が気になって、Bクラスにしました。WEST-Aでの新潟は失点が少なかったですけど、試合を見ていると組織として守っているというよりも、GKのバウマン様々なところがありました。どの選手も個としての守備力は高いけど、プレシーズンマッチでモンテディオ山形と戦って4-3という撃ち合いを演じてもいますし、組織としてどこまで整えられているのか気になります。横浜FCもそうですが、シーズンは長丁場なので、守備の手堅さもある程度必要。そう考えると、Bのクラスなのかなと。

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著者プロフィール

福島県出身。埼玉大学卒業後、サッカーモバイルサイトを運営するIT企業を経て、フリーランスに。2025年はサッカー専門新聞『EL GOLAZO』でジェフユナイテッド市原・千葉の担当記者を務める傍ら、サッカー日本代表や過去に担当した浦和レッズや横浜F・マリノス、川崎フロンターレなどJリーグを中心に取材している。著書に『浦和レッズ変革の四年 〜サッカー新聞エルゴラッソ浦和番記者が見たミシャレッズの1442日〜』(スクワッド)、『トリコロール新時代』(スクワッド、三栄書房)がある。

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