2026-27シーズンのJ1・J2「補強・戦力」を徹底分析!

札幌、仙台、磐田などの“元J1組”に挑む富山と宮崎 エキスパート3人によるJ2展望座談会【前編】

菊地正典

森山佳郎体制3年目を迎え、J2・J3百年構想リーグを制した仙台。26/27シーズンの開幕戦では藤枝に敗れたが、依然として本命であることに変わりはない 【(C)J.LEAGUE】

 2026/27シーズンのJ2リーグが8月8日に開幕した。J1への自動昇格を手にするのはどこか。昇格プレーオフに進出するのは、どの4チームか。激闘の行方を占うべく、今年もJ2を知り尽くす3人のライターによる恒例の座談会を開催。ジュビロ磐田を中心にJ2をチェックする河治良幸氏、J2全体を幅広くカバーする土屋雅史氏、ベガルタ仙台を追いかける板垣晴朗氏に登場を願い、20チームをA、B、Cとクラス分けしてもらった上で、各チームの陣容と可能性について話をうかがった。(文中敬称略)

ポールポジションに立っただけに過ぎない

――過去のJ2展望座談会では全員が共通してAクラス(6位以内)に推すチームが3~4チームありましたが、今年はわずか1チームでした。板垣さん、どのチームが分かりますか?

板垣 どこでしょう?

――板垣さんが密着取材されているベガルタ仙台(J2・J3百年構想リーグ優勝)です。

板垣 そうでしたか。そんなに高く評価していただけているのですね。

Aクラス予想(並び順は北から)

河治良幸:札幌、仙台、山形、大宮、磐田、鳥栖

土屋雅史:仙台、秋田、甲府、新潟、富山、宮崎

板垣晴朗:仙台、横浜FC、湘南、富山、磐田、宮崎


――では、仙台をAクラスに推す理由を教えてください。

河治 百年構想リーグでは一つ飛び抜けていた印象です。森山佳郎監督の縦への攻撃とトランジションが速いスタイルで成功していました。新シーズンは相手が蓋をしてくるので、そこが一つのテーマになりそうですが、そうされた場合の準備もおそらくしていて、戦い方の幅を広げてくるでしょう。昨季はギリギリでJ1昇格プレーオフ進出を逃すという悔しい経験もしたので、今季は乗り越えていくと思います。

 2節の相手は大分トリニータ、3節はヴァンラーレ八戸と、守備を固めてくる可能性の高いチームとの対戦が続くので、ここをどう乗り切るかがカギになります。ただ、戦力や継続性を考えるとアドバンテージが一番あると思っています。間違いなくベースのポテンシャルは1、2を争うので、仮にスタートダッシュに失敗してもジタバタせず戦っていけるか、でしょう。

土屋 僕は百年構想リーグの順位にリスペクトを込めて、それをベースにクラス分けを予想しました。仙台は優勝しましたし、90分での負けが2つしかないところに勝負強さも見えました。バランスよくいろんな選手を試して、戦力のボトムアップが図れたのもすごく大きいと思います。

 そして、新シーズンに向けて最も大きいのは、中島元彦(←セレッソ大阪)が帰還したこと。仙台にとって特別な選手ですし、本人も育成から所属したセレッソを完全移籍で離れるという相当な覚悟で戻ってきたと思います。あと、南創太、古屋歩夢、安野匠、西丸道人、永井大義、横山颯大。この6人は高卒で仙台に入った選手たちで、ポテンシャルが高い。僕は育成年代をメインに取材しているので、特に彼らには期待しています。

板垣 百年構想リーグと26/27シーズンの1年半のスパンで考えているので、仙台はこの半年で土台を作れたのが大きかったと思います。百年構想リーグでは29選手がピッチに立ったんですね。毎試合スタメンを変え、かつ新システムで戦ったことで、結果だけでなく自信も得られたのは大きかったです。

 ただ、百年構想リーグで優勝したというのは、ポールポジションに立っただけにすぎません。今夏は2人の新戦力を加え、新しいビルドアップなどにチャレンジしているところです。そのプラスアルファの部分が開幕までに、とは言わないまでも、序盤のうちにかみ合ってくれば、優勝争いを繰り広げられるのではないかと予想します。

 不安材料を挙げるなら、ホームが涼しい地域なので暑さ対策をしっかりできるかですね。だからプラスアルファのビルドアップの部分を早い段階で構築できるかがカギになりますし、間に合わなければアドバンテージはなくなってしまうと思います。

 今季はプロ3年目以内の選手が多く、若いチームですが、起用に目処が立った選手もいますし、百年構想リーグの終盤戦で主力にケガ人が相次いだ際に、代わって出番を得た若手選手もいます。カターレ富山との百年構想リーグプレーオフ第2戦でのPK戦では、キッカー5人中3人がプロ2年目以内の選手だったんですよね。これは長期的に見て大きな経験になりました。

――2人がAクラス、1人がBクラスに予想したのは3チームありました。まずは富山(百年構想リーグ2位)ですが、板垣さんと土屋さんがAクラス、河治さんがBクラスと予想しています。

板垣 継続性を重視し、百年構想リーグで結果を残しつつ監督や選手の入れ替えを大きくしていないチームを上位に予想しましたが、富山は組織力の高さは継続性の一番大きなメリットですよね。主力が抜けるダメージも今のところないので、組織力は落ちないでしょう。

 仙台とのプレーオフ第2戦では前半に退場者を出して10人になりましたが、それでも圧倒したんですよね。数的不利なのに局面で数的優位を作って崩すのが本当にうまくて、3人目が絡むプレーの選択肢が非常に多いサッカーです。相手からすると崩し方が読みにくい。簡単には止められないんじゃないかと思います。

 失点は多いですが、攻撃力でカバーできるサッカーだと思います。24年までは長らくJ3でしたし、J2に昇格した25年も最終節にブラウブリッツ秋田に4-1で勝利したことによって得失点差1で奇跡のような残留をしたチームでしたが、そんなチームだったとは思えません。亀田歩夢ら主力が残ったことも大きいですね。

土屋 富山はとにかく出入りが激しいというか、百年構想リーグでは得点数が全体の2位で、失点も多いほうから6番目の24失点。見ていて面白いチームです。25年の奇跡的な残留からの百年構想リーグ大躍進は、Jリーグでいろいろなクラブを渡り歩いてきた安達亮監督の手腕が大きいと思います。チームの構造を作るのが本当にうまいんですよね。

 基本的には攻めて攻めて攻めまくるチームを作っていますが、なかでも注目なのが、板垣さんも名前を挙げた亀田ですね。僕は流通経済大付属柏高のときから取材をさせてもらっていますけど、ドリブルのうまい選手から結果も出せる怖い選手に成長しているので、亀田のさらなる成長、もっとゴールに絡むところが出てくると、より上位争いをする可能性が増すと思っています。

 また、今年加入した谷本駿介が完全に主力として活躍しているのもチームにとって大きいですし、2年目の竹中元汰も百年構想リーグで試合に出ていました。Jリーグでの実績があるチョン・ウヨンもいますが、谷本と竹中は関西福祉大で先輩・後輩で、中盤でコンビを組んでいたんですよね。ストーリー好きの僕としては、学生時代の先輩・後輩がJリーグで再会して再びコンビを組むのがうれしいですね。主力がほぼ抜けていないのも安達監督や強化部の手腕だと思いますし、継続性という意味でもかなり期待できると思います。

選手以上に大きい監督の補強

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――対して、富山をBクラスにしている河治さんはいかがでしょうか?

河治 みなさんがおっしゃるように25年に奇跡的な残留を勝ち取り、百年構想リーグで躍進しました。元々は残留が目標になる立場だったと思いますが、安達監督のもとですごく前向きに戦っていますし、ビジョンがしっかりしていて、連動性の高いサッカーをしています。ただ、フルシーズンになると対戦相手のスカウティングの質が上がります。そこを考えると、僕はAクラスには入れられませんでした。タレントの質で並べたとき、仙台、RB大宮アルディージャ、ジュビロ磐田、北海道コンサドーレ札幌にはやや劣るかなと。なので、昇格争いをするには難しいかもしれないと考えました。

 予想の振れ幅が大きいと思っていて、もちろん昇格争いの可能性もあるし、残念ながら残留争いに巻き込まれる可能性もある。それでも、富山サポーターじゃなくても見たくなるサッカーをしてくれると思いますし、J2の常識を覆していくような躍進を遂げる期待感はあります。

――テゲバジャーロ宮崎(百年構想リーグ3位)も土屋さんと板垣さんがAクラス、河治さんだけBクラスですが、河治さんがBクラスにしたのは同じような理由でしょうか?

河治 宮崎は正直、百年構想リーグWEST-BにJ3のクラブが多かったので、力の差はあったと思います。ただ、プレーオフでヴァンフォーレ甲府に2-1で勝利して力を見せてくれたので、ポテンシャルはすごく感じます。宮崎も富山と同じで、前評判以上にすごく前向きなサッカー、しっかり支配できるサッカーをしていました。クラブとして体力がついてきていますし、チームとしても高い意識でやっているのが感じられるサッカーをしています。

 ただ、フルシーズンになると経験、選手層など未知数な部分が多く、難しい戦いになるかもしれないなと。そこは富山以上に大きいと思います。やはり経験のあるクラブじゃないところが気になりましたね。

――Aクラスに予想した土屋さんはいかがでしょうか?

土屋 宮崎は百年構想リーグの90分間の勝利数で言うと、15勝とぶっちぎりで最多なんですね。3敗も、そのうち2つはPK負けなので、90分以内では1回しか負けなかった。河治さんがおっしゃるようにWEST-BにJ3のチームが多かったのは確かですが、それでも簡単に勝てるわけじゃないので、90分で15勝したことを高く評価しました。

 宮崎は他のクラブで思い描いたようなキャリアを築けなかった選手たちが、大熊裕司監督という育成年代でもかなり手腕を発揮してきた監督のもとで躍動しているのがすごくうれしいし、面白いと思っています。特に2列目の右にいる阿野真拓と左の井上怜は2人ともレフティーなんですけど、育成年代から相当注目していた選手でした。阿野は東京ヴェルディで苦しんだ時期がありましたし、井上は東洋大から水戸ホーリーホックに加入したものの思うような活躍ができませんでした。この2人があらためて宮崎で躍動しているのは、2人を昔から見ていた者としてはうれしいですね。

 大熊監督が選手をうまく乗せて、良いチームを作り上げていく手腕が際立っていると感じます。橋本啓吾という昨年のJ3の得点王とMVPを受賞した絶対的なエースが百年構想リーグの開幕前から離脱していましたが、この選手の復帰が今季の宮崎にとって最大の補強になると思います。それから、大熊健太は大熊清さんの息子なんですね。つまり、大熊監督の甥になる。親族で共闘して昇格するなんてなかなか聞かないので、上位で終盤になったらフォーカスされそうですね。

板垣 宮崎は組織として強く、攻撃的な点では富山と共通していますが、失点の少なさが特徴です。攻撃的なチームは背後に弱点があることが多いですが、宮崎は相手に攻撃の機会を与えないほど押し込むため、そもそも相手にチャンスを作らせていません。その結果として失点が少ないんですよね。昇格組の中では頭一つ抜けた力があり、その強みが現時点ではJ2でもかなり生きると思います。

 懸念点はみなさんがおっしゃるようにWEST-B、つまりJ3のチームとの対戦が多かったので、今後J2のチームとの対戦が増え、個の力で押し込まれたときにどう対応できるかだと思います。ただ、橋本の復帰や中盤の選手層を含め、組織としての強さを評価してAクラスに入れました。

――もう一つ、お2人がAクラスに予想したのが磐田(百年構想リーグ32位)です。板垣さんはいかがでしょうか?

板垣 先ほど、「継続性を重視し、百年構想リーグで結果を残しつつ監督や選手の入れ替えを大きくしないところを上位にした」と話しましたが、唯一の例外が磐田です。戦力のスケールが段違いなのと、選手以上に監督の補強が大きいと思っています。秋葉忠宏監督は熱さが目立ちますが、実はリアリストなんですよね。割り切った決断ができる監督です。現実を取って守りに徹することもできるので、それは通年のリーグで大きな武器になりそうです。

 選手も大半が入れ替わりましたよね。補強が多いチームは、既存戦力の維持が肝になると思いますが、基礎となる選手のベース能力も高いので、勢いで上位になると思っています。上位予想の基準から例外的に外れるのはそういった理由です。

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著者プロフィール

福島県出身。埼玉大学卒業後、サッカーモバイルサイトを運営するIT企業を経て、フリーランスに。2025年はサッカー専門新聞『EL GOLAZO』でジェフユナイテッド市原・千葉の担当記者を務める傍ら、サッカー日本代表や過去に担当した浦和レッズや横浜F・マリノス、川崎フロンターレなどJリーグを中心に取材している。著書に『浦和レッズ変革の四年 〜サッカー新聞エルゴラッソ浦和番記者が見たミシャレッズの1442日〜』(スクワッド)、『トリコロール新時代』(スクワッド、三栄書房)がある。

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