【後編】午前は起業家、午後はプロ野球選手 メジャー定着を狙う西田陸浮の「異色のルーティン」
「出塁が自分の役割」その先へ
「ラッキーです。2安打はラッキーですね」
例えば、詰まらせてショートの後ろに落とすのは、傍から見ればラッキーと映っても、実際は技術であったりする。イチローさんがかつて、そんな話をしていた――と伝えると、西田は「あ、ほんまっすか」と笑いながら続けた。
「僕はラッキーって捉えますね。『毎日ええことしてるからや』って思いますね」
とはいえ、3Aでの成績は8月2日現在、打率.312、出塁率.437。2024年以降、マイナーの全レベルでプレーしてきたが、出塁率が4割を下回ったことがない。当然ながら、力がなければ、この数字は残せない。
中でも出塁率は、西田自身が意識してきたところ。
「自分の役割――高校のときからずっと、大学のときも、出塁っていうのが自分の役割だと思っていたので、そこを目標にして毎日プレーしてきた。なので、打つっていう目標よりかは、塁に出ることが目標だったので、バッティング練習っていうよりかは、ちゃんと配球を見て、ストライクは絶対振って、ボールは絶対振らないとか、ランナー進めるとか、そういうことばっか考えていました」
ただ、少しずつ意識が変わりつつあるという。
「去年ぐらいから、バッティングについて深く考えだした。去年一年通してAAにずっといたんですね。そのときにちゃんと打たないとって思って、いろんなことをまた試し出して、今年はちゃんと打てるって感じですね」
「もちろん、自分のいいところは消しちゃダメなので、そこは残しつつ、大事な場面で、外野フライを打てるとか、しっかり打って塁に出るっていうのは意識しています」
とはいえ、チームからOPSのアップを求められれば、「頑張ります」とためらわない。
「僕の場合、ホームランがないので、OPSが上がりにくいんですけど、それが球団の指示なら、僕は『はい』って言います。それに合わせますし、僕は従業員なので、やれって言われたらやるし、やれるように工夫してやります」
そんな柔軟性もまた、彼の強みである。
もちろん、球団に何かを求められるのは、メジャーというその先があってのこと。西田は今年5月25日に初昇格。6月9日にまた3Aに戻ることになったが、「試合に出られれば、なんとか自分でアジャストはできそうだなっていうのは思った」と話す。
「まだ僕、30打席しか立っていないので、メジャーのことを言うのはまだ早すぎる」と多くは語らなかったが、それがそのときに感じた距離感。
「自分が定着するために、やっぱり一発もたまには欲しいですし、守備はセカンドとライト、センター、全部守れるようにしておきたい。だからセカンドの守備も練習しつつ、毎日外野の練習もしているので、(マイナーの)試合ではセカンドでしか出ないですけど、外野も練習しています」
そんな彼にはこの先、いったいどんなキャリアが待っているのか。
来る前に抱いたのは、英語、起業、プロ入りという3つの夢。叶えたといえばすでに3つとも叶えたが、3つ目は、メジャーに定着してこそ。その場合、さらに多くの中・高校生を刺激することになるが、真剣な眼差しでアドバイスを求める選手が増え、それに対して、“あか〜ん”という回数が減るなら、彼の訴えてきたことが、伝わったことになるのかもしれない。
(編集:スリーライト)
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