アストンマーティン・ホンダは正しい道を見つけたのか? 本格復活への期待と課題

柴田久仁夫

アロンソの安堵

14位完走という結果以上に、アロンソはマシンの潜在能力の高さに満足げだった 【(C)AstonMartinF1】

 「ようやく新たなスタートが切れた」

 F1ハンガリーGP決勝後、フェルナンド・アロンソの表情には、久しぶりに安堵の色が浮かんでいた。

 結果だけを見れば、アロンソは優勝したランド・ノリスから1周遅れの14位。チームメイトのランス・ストロールも同じく周回遅れの13位。入賞圏内の10位に届かなかった。しかしアストンマーティンにとって重要だったのは、順位ではない。大幅に改良を施したマシンが、たとえまだ十分な速さは見せていなくとも、「開発の方向性は間違っていない」という手応えを示したことだ。

 レース現場で指揮を執るマイク・クラックも、「ライバルたちとまともに戦える位置に戻るという、とりあえずの目標は達成できた」と語っていた。夏休み明けのオランダGPでは、ホンダも大規模なパワーユニット(PU)アップデートを投入する予定だ。

 苦闘が続いてきたアストンマーティン・ホンダは、ようやく本格復活への第一歩を踏み出したのだろうか。

なぜ大きくつまずいた?

久しぶりに会見に出席したニューウィの表情も明るかった 【(C)AstonMartinF1】

 アストンマーティン・ホンダがここまで苦しむと予想した人は、決して多くなかっただろう。

 世界最高峰、最新鋭の設備を整え、エイドリアン・ニューウィをはじめとする一流エンジニアを集め、ホンダと手を組んだ。開幕前には「数年以内にタイトル争いへ加わる」という期待も少なくなかった。ところが現実は、入賞争いどころかまともに完走もできないレースが続いた。

 原因を「ホンダのPUが悪い」「シャシー開発が失敗した」と単純化するのは簡単だ。しかし実際には、もっと根深い問題があった。

 アストンマーティンにもホンダにも、決して優秀な技術者がいなかったわけではない。一番の問題は、「彼らを一つの方向へまとめる仕組み」が機能していなかったことだったと、筆者は考える。車体側で言えば、空力性能を極限まで突き詰めるニューウィのやり過ぎをたしなめ、ブレーキをかける存在がアストンマーティンにはいなかった(レッドブル時代は、ニューウィの理想形を現実的なパッケージに落とし込める部下たちがいた)。

 一方のホンダには、レッドブル時代以上の最強のPUを作ろうという強い意志はあった。しかし2021年のF1撤退決定で開発部門はバラされ、次世代PUの開発は大幅に遅れた。車体側とPUとのすり合わせも、決してスムーズではなかった。シーズン序盤に発生した「ドライバーが運転不能なほどの」振動問題も、「これまでの蓄積の活用、チーム側との連携、それらがスムーズにできていれば、起きうるはずのない問題だった」と、あるホンダOBは述懐する。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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