“スペイン流”を目指す大岩ジャパンの顔ぶれ、森保監督の「半年間続投」が及ぼす影響 識者3人による緊急座談会【後編】

構成:YOJI-GEN

24年のパリ五輪は準々決勝で優勝したスペインに0-3で敗れた。大岩監督が目指すのは、そのスペインのようなポゼッションサッカーだ 【写真は共同】

 来年3月から始動する大岩剛監督の新生日本代表は、果たしてどんなサッカーを目指すのか? そのサッカーの実現のために、どんな選手が招集されるのか? これまでの取材を通して新指揮官をよく知る3人のライター、川端暁彦氏、池田タツ氏、田中滋氏による緊急座談会の後編では、「大岩ジャパン」のチーム作りを予測する。また同時に、森保一監督が来年1月のアジアカップまで続投するに至った理由についても推察してもらった。

日本にはボランチはいてもアンカーがいない

――さて、来年1月のアジアカップ後から実際に大岩さんが指揮を執ることになるわけですが、新生日本代表はどんなチームになりそうですか? こういう選手が呼ばれそうだとか、誰がキーマンになりそうだとか、主にメンバー選考について皆さんの予想を聞かせてください。

池田 一番のキーポイントはサイドバックでしょうね。今回のW杯でもベスト8のすべてのチームが4バックを採用していましたし、大岩さんもそこは崩さないと思います。これまでの3バックから4バックに変わって、どんなサイドバックが出てくるのか、楽しみです。

――具体的に名前を挙げると?

池田 例えば、パリ五輪代表で大岩さんのもとでプレーした関根大輝(ホルシュタイン・キール)はチャンスがあるかもしれないですし、あるいは冨安健洋(クリスタル・パレス)をサイドバックで試したりもするかもしれません。個人的には半田陸(ガンバ大阪)を使ってほしいですけど、彼は今、大きな怪我(左膝前十字靭帯損傷)をしてしまって、リハビリ中ですからね。

 あとはJリーグで活躍している中野就斗(サンフレッチェ広島)は選ばれてほしいですね。アジア競技会に臨むU-21代表に選ばれた森壮一朗(ファジアーノ岡山)もA代表で見たいなと。森保監督は、Jリーグで活躍している選手を日本代表でデビューさせて、箔をつけて海外移籍を後押しするという流れがありました。だからこそ海外組が増えて選手層が厚くなったので、その良い流れは決してなくしてはいけない。

川端 とりあえず4-3-3ベースでやるんじゃないかと思いますが、そこでネックになるのはアンカー。スペイン的なサッカーをやりたいのであれば、ロドリが欲しいわけですけど、このポジションはなかなか難しいですね。

――パリ五輪代表では藤田譲瑠チマ(ザンクトパウリ)がアンカーで起用されていましたね。

川端 譲瑠とか、川崎颯太(マインツ)もやっていましたけど、結局そこにハマる選手がいなかった印象ですね。これは大岩さんがどうこうではなくて、そもそもそういうサッカーをしているチームがJリーグを見渡しても少ないですからね。それに、Jリーグでやれるアンカーと国際舞台でやれるアンカーには求められる水準のギャップがありますから。欧州にこれだけ選手が出て行っている現状ですが、スペイン型のポゼッションスタイルで4バックの前のアンカーやっている日本人選手はなかなか出てきていないというのが現実です。

――ロス五輪世代の石渡ネルソン(シント=トロイデン)や中島洋太朗(サンフレッチェ広島)はどうですか? 2人も大型ボランチとして期待されています。

川端 ネルソンはアンカータイプではないと思います。実際に大岩さんのロス五輪を目指すチームでも、アンカーではなく一個前での起用の方がしっくりきていると思います。やっぱりポゼッションサッカーをやろうと思ったら、そこに潰し屋タイプを置くわけにはいかない。でも中島みたいに前へ出て輝く選手を置く役割でもないと思っちゃうんですよね。

 要は、日本にはボランチはいるけれどアンカーがいないんです。守備は強いけどパス能力はそこそこのタイプだとポゼッションで勝てるチームにはなれないですし、逆にパスはいいけど守備は話にならないというタイプでも、これまた勝てない。戦術能力、もっと言うと、経験値自体が大事だと感じるので、キャリアの中で長くアンカーをやっていない選手はそもそも厳しい気がします。このポジションをこなせる選手はもちろんたくさんいるんですけど、W杯で勝つのに求められる水準に達している選手は誰かいますか。ちょっと自分は思い浮かばない。だから、アンカーを置く形のサッカーをするなら、ここから誰かが急成長してくるのを待つしかないと思いますし、なおかつ“そういうサッカーをしているチーム”に移籍してもらうしかないでしょう。

きちんと敗因を議論できる下地を作ってほしい

サイドバックでは広島の中野(左)らの台頭に期待。一方で今夏にC大阪からシント=トロイデンに移籍した石渡(右)など優秀なボランチはいるが、アンカーは…… 【(c)J.LEAGUE】

――田中さんはどうですか? 大岩さんが監督だからこそ期待したい選手はいますか?

田中 教え子でもある鹿島アントラーズの鈴木優磨を呼ぶのかどうかは気になりますが、今の彼は怪我を避けるような安全第一のプレーをしているので、さすがに日本代表となるとレベルが一段落ちるような気がしますね。だから、本当によほどのことがない限りは呼ばないと思います。個人的には、1回くらいは代表でプレーする姿を見てみたいんですけどね。

――確かに見てみたいですが、彼ももう30歳ですからね。

田中 今回のW杯では(元鹿島の)佐野海舟(マインツ)があっという間に代表の主力まで駆け上がっていきましたけど、今の鹿島でそれくらいのポテンシャルを感じるのは吉田湊海ですね。まだ18歳ですけど、次の五輪代表に絡んできてもおかしくないですし、4年後のW杯までに大化けしてもなんら不思議はないです。

 あとは池田さんが言うようにサイドバックじゃないですか。とはいえ、今のJリーグでスペイン的なサッカーというだけでなく、4バックを採用しているチームが大多数というわけでもないですからね。

川端 そもそも、今回スペインが優勝したからスペイン的なサッカーがいいんじゃないかという話になるのも、順番が逆ですよね。

田中 だから僕は、今後の方向性を示すためにも、森保さんには帰国会見でちゃんと敗因について話してほしかったんですよね。サッカー界だけじゃなく、これだけ一般の人たちからも注目を浴びたわけだし、どうしてブラジルに負けたのか、あの試合では何を考えていたのかを話すべきだった。「自分はこう考えていたんだけどうまくいかなかった」と言えばいいだけなのに……。

 次はそういうことが普通に話せる監督であってほしいけど、剛さんもあまり言うタイプじゃないから、そこは個人的に少し心配しています。結局、これまでとあまり変わらないのかなと。きちんと敗因を議論できる下地を、もっと当事者の人たちが作っていってほしいと思うんですけどね。

川端 それこそ2006年のドイツ大会でグループステージ敗退に終わった後で、当時のジーコ監督が「もっとフィジカルを鍛えなきゃダメだ」と言って袋叩きに遭ってしまった過去もあるし、なかなか難しいんだと思いますよ。結局、何か話したとしても、「負けたんだから言い訳すんな」と、みんな聞く耳を持たないんです。「敗軍の将は兵を語らず」が美徳とされる国なので。

池田 絶対に検証していないはずはないんだけど、それを公の場で話せば、ヒステリックな反応をされてしまいがちですからね。ただ、あらためてしっかり公表してほしいですよね。良かったところも間違いなくたくさんあったのですが、優勝という目標を達成できなかったことで、良かったところを継続できなくなるのが一番まずい。うまくいかなかったところをメディアが指摘するのは本当に簡単なことだと思う。そこだけを指摘して改善しようとして、結局うまくいっているところもスポイルしてしまうというのは、長年JFA(日本サッカー協会)だけじゃなく、多くのサッカークラブが陥っている問題ですよね。

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