有望株の20歳・川野琢磨が元チームメイトから受けた刺激 精巣がんから復帰のイタリア代表ガラッシが世界に伝えた言葉とは?
もっと高い意識をーー。イタリア戦での刺激を糧に
川野にとっては初めての海外生活で、さまざまな記憶が色濃く残るが、イタリアでプロとして暮らす選手にとってはほんの一瞬、練習生として加わった日本人の自分を覚えていてくれるのか。「覚えていないだろうな、と思っていた」と本音も明かすが、合宿先の食堂で顔を合わせた時に、満面の笑みでハイタッチを交わしてくれた選手たちとのやり取りを「嬉しかった」と明かす。
「タク~! って笑顔で来てくれただけで嬉しかったんですけど、同じ場所にタツ(大塚達宣)さんがいたので、通訳をしてくれて『身体もごつくなったと言っているよ』と教えてくれた。嬉しかったんですけど『まだまだだけどな』ともちゃんと言われました(笑)」
再会の喜びがあったからこそ、親善試合ではほんの一瞬しかプレーする機会がなかったことに触れ「もっと戦いたかった」と悔しさも滲ませる。
「自分のプレーがピアチェンツァにいた頃と比べてどれだけ通用するようになったのか知りたかった。そのためには、もっと高い意識を持たなきゃダメだな、と思いました」
精巣がんからの復帰。ガラッシが世界へ向けたメッセージ
笑顔でハグを交わし、互いの誕生日を祝う。満面の笑みで会場から祝福されたガラッシだが、実は今年1月に精巣がんの手術を受けた。
1月9日に自らのインスタグラムで手術を終えたことを報告し、早期発見の重要性を訴え、2月のコッパ・イタリア準決勝で復帰。3月のプレーオフで本格復帰を果たし、今年度のイタリア代表にも名を連ね、大阪ラウンドでも攻守にわたり存在感を発揮。特にブロックではタッチ、キルを含め何度もポイントを重ね、チームを鼓舞する姿があった。
海外選手やリーグにも詳しいバレーボールファンならば、ガラッシが大病を患い、復帰を果たしたことを知っていても、皆が皆、笑顔の陰で病気を乗り越えた事実を知るわけではない。だが、自らの言葉で早期発見の必要性を説き、元気にプレーする姿を見せる。そのことが、同じように病気と向き合う日々を過ごしていたり、家族や友人が病気と向き合う姿を支える人たちには大きな勇気になるはずだ。
自身の経験を、どんな形で伝えたいと思って公表し、今プレーしているのか。デリケートな話題でもある以上、伝え方を間違えないように、と慎重に。大阪でのネーションズリーグの取材で、スマートフォンに記したイタリア語を見せながらたずねると、ピアチェンツァで川野に対してコミュニケーションを取ってきた時と同様に、わかりやすいように、と英語で話してくれた。
「こうしてカムバックできたことを本当に嬉しく思っています。なぜなら、これは私自身が望んだことであり、私の家族も望んでいたことだからです。どれほどつらい困難、大きな病気の後であっても、人は健康を取り戻し、幸せになり、またプレーする世界に戻ってこられるんだということを世界に示したかった。だから手術、入院をしている時からみんなに『勇気を持って、コート外での戦いに立ち向かい、もっと強くなって帰って来よう』というメッセージを送ることは、私にとって、本当に大切なことでした」
29回目の誕生日に微笑む姿も、勇気と元気、そして若い選手たちには「もっと頑張ろう」と刺激を与える、世界へ向けたメッセージにもなるはずだ。