常勝軍団・敦賀気比 勝利を引き寄せる采配 56の極意

遊撃手、中堅手には下級生を使う 甲子園常連監督が明かす「聖地の震え」の意味

東哲平

守備の中で最も考えることの多いキャッチャーが試合を作ると語る 【写真は共同】

年間甲子園出場率、驚異の110%超!
監督就任15年目で甲子園出場16回。そのうち優勝1回、四強2回、八強1回。恵まれない環境下に置かれながらも、いま高校球界で最も勝ち切れる指揮官が語る、日本一の采配論!敦賀気比高校野球部・東哲平監督の著書「常勝軍団・敦賀気比 勝利を引き寄せる采配 56の極意」から一部を抜粋して掲載します。

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キャッチャーが試合を作る

 入学と同時に、毎年20~30人ほどの選手が入部してくる。その中には、キャッチャーとして入ってくる選手も最低3、4人はいる。しかし、最終的にキャッチャーとして残るのは各代で1~2人程度である。こちらが意図的にふるいにかけているわけではない。レギュラー争いをしていく中で、キャッチャーだった選手がほかのポジションに移り、結果として人数が絞られていくのだ。

 キャッチャーは、試合を作るポジションである。サインを出し、ピッチャーを動かし、守備全体を見ながらゲームを進めていく。昔からキャッチャーは「扇の要」と言われるが、まさに守備の中心にいる存在だと思う。キャッチャーの考える配球や、野手への指示などの良し悪しが、試合の結果を左右する。

 配球に関して、ベンチから私が「ここはこの球でいけ」とその都度指示を出すこともできる。しかし、それをやりすぎると、キャッチャーが自分の頭で考えなくなる。バッターの一番近くにいるのはキャッチャーだ。構えや反応、スイングの軌道、タイミングの合い方……。そこで何かを感じ取り、ピッチャーの状態も加味して、根拠のあるサインを出してほしい。

 キャッチャーが考え抜いた末に出したサインでヒットを打たれたなら、私は頭ごなしには責めない。あとから「お前、あそこはストレートだろ」と言うのは簡単だ。結果を見てから批判することは、誰にでもできる。私はそんな卑怯な指導者にはなりたくない。

 大事なのは、批判ではなく確認だ。「あそこは、なぜあの球を投げさせたのか」とまずその理由を聞く。根拠があったなら、配球の組み立てを改めればいい。根拠がなければ、何を見て、どう判断すべきだったのかを一緒に考える。キャッチャーに配球を任せるというのは、放任することではない。考えさせ、振り返らせ、次の一球につなげていくことが肝心なのだ。

 キャッチャーの中には、変化球を使いたがるタイプも多い。だからこそ、まずピッチャーの特徴を理解しなければならない。試合前のブルペンで球を受け、その日のストレートの走りや変化球の曲がり、コントロール、ピッチャーの表情まで見る。普段はよくても、その日は使えない球もある。

 反対に、いつも以上にいい球もある。そういったものを感じ取りながら、配球は組み立てられていく。

 ノーボール2ストライクと追い込んだとき、必ず1球外すと決めているチームもある。確かに、勝負を急ぐ必要はない。しかし、3球で仕留められる状況なら、勝負にいってもいい。外すのか、勝負するのか。バッターの力量と状態、ピッチャーの球威、カウント… …。それらを俯瞰して試合の流れとして捉え、判断していくのがキャッチャーだ。チームの決まり事に従うだけでは、配球とは言えない。

 私が見てきた中で、印象に残っているキャッチャーのひとりが、2015年センバツ優勝時に平沼翔太とバッテリーを組んだ嘉門裕介(横浜商科大-ENEOS)だ。嘉門は、最初から配球をよく理解していたわけではない。むしろ、入ってきた頃は配球の「は」の字も知らないような選手だった。それでも嘉門は努力家だった。必死にキャッチャーの勉強をして、平沼ともコミュニケーションを密に取りながら、ピッチャーが何を考えているのか、どういうサインを出せば投げやすいのかを学んでいった。

 嘉門は、ただボールを捕るだけのキャッチャーではなかった。平沼の力をどう生かすかを考え、試合の中で少しずつリードを覚えていった。キャッチャーは経験の積み重ねで成長するポジションだ。打ち取ることもあれば、痛打されることもあるだろう。それでも、「なぜ打たれたのか」を考え続けられる選手は伸びていく。嘉門は、まさにそういう選手だった。

 もうひとり、2014年夏の甲子園でベスト4に進出したときのキャッチャー、岡田耕太(駒澤大‐JFE東日本)もいいキャッチャーだった。岡田はもともとキャッチャーではなかったが、私はその才能を感じてキャッチャーにコンバートした。バッティングがよく、肩も強い。キャッチャーとして必要な能力を兼ね備えていた。

 もちろん、能力があるだけでキャッチャーが務まるわけではない。岡田も、キャッチャーになってから一生懸命に勉強した。ピッチャーの球を受け、配球を覚え、試合の中で何を選ぶべきかを考え続けた。そうして、立派なキャッチャーに成長してくれた。

 キャッチャーは、守備の中で最も考えることの多いポジションだ。ピッチャーを見て、バッターを見て、試合の流れを読み、守備全体を動かす。ベンチがすべてを決めるのではなく、グラウンドの中でキャッチャーが根拠を持って判断する。そういうキャッチャーがいてこそ、守り勝つ野球は成り立つのである。


極意 其の四十一
 ベンチから私が「ここはこの球でいけ」とその都度指示を出すこともできる。しかし、それをやりすぎると、キャッチャーが自分の頭で考えなくなる。バッターの一番近くにいるのはキャッチャーだ。そこで何かを感じ取り、ピッチャーの状態も加味して、根拠のあるサインを出してほしい。

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