米国で憧れの大物ボクサーと腕を磨いた18歳のルーキー 金子暖東は次代のスター候補に割って入れるか
高校時代に大橋ジムのスター候補と3勝2敗
いずれもアマチュア時代に複数のタイトルを獲り、国際大会でもメダル獲得の実績がある才能にあふれた逸材ばかり。
彼らが超満員の聖地で華やかなスポットライトを浴びる頃、米国で単身、腕を磨き、この7月27日に後楽園ホールでプロデビュー戦に臨む同世代のボクサーがいる。
今春、埼玉県の名門校・花咲徳栄高校を卒業した18歳の金子暖東(かねこ・はると、鴻巣茂野)。高校3年間で出場機会のあった7度の全国大会すべてに出場。2年時の選抜で優勝したほか、準優勝が3度、3位が1度の成績を残した。
きら星のようなホープたちに対し「僕も負けてられない」とライバル心を隠さない。特に1年時の国体準決勝で敗れた2学年上の坂井優太、同学年で5度対戦して通算3勝2敗の宿敵・片岡叶夢とは主戦階級が同じバンタム級になりそうで「勝っていけば、いつか絶対に当たる」と意識する。
3月17日にB級プロテストに合格した直後の22日に渡米。テキサス州ヒューストンの「J Prince Boxing Gym」の門をたたき、米国の老舗ボクシング専門誌『ザ・リング』の全階級を通した最強ランキング「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」で現在3位にランクされる憧れのシャクール・スティーブンソン(米)を育てたトレーナーで、祖父のウィリー・モーゼスに師事した。
シャクール本人とも3度、スパーリングで手合わせするなど、トレーニングをともにし、6月21日に帰国するまで3カ月にわたって研鑽を積んだサウスポーは、「(彼らを)超える準備はしてきたんで。必ず超えてみせます」と目を輝かせる。
米国合宿の答えは今後の活躍で示す
6月24日に帝拳ジムからプロテストに合格した同学年の古城佑馬、大卒で世代としては上だが、聖也の兄で中山3兄弟の長兄・颯太を含め、この中に割って入って、自分もボクシングを盛り上げたいというポジティブな意欲ばかりが伝わってくるのだ。
何よりその行動力である。何のツテもなく、ネットでシャクールの現在の練習拠点を探しあて、SNSなどを通じてコンタクトを取った。
そして「明後日から米国に行ってきまーす」と、まるで国内旅行にでも出かけるような軽やかさで旅立ったと茂野和也会長は振り返る。かと思えば、もう何年もいるような親しげな感じで、ジムの面々とハグをする練習初日の動画が送られてきたという。
どこか愛嬌のにじむ人柄、輝ける未来を真っ直ぐ信じる向上心、もちろん、ボクサーとしての能力も認められ、すぐに受け入れられたのだろう。
こうしてボクシングを始めた頃から「シャクール・スティーブンソンが好きだった」と松村功・マネージャー兼トレーナーは証言する。「誰のテクニック、スタイルを参考にするか」、金子自身がYouTubeなどで探し、めぐり逢った“ロールモデル”だった。
「パンチをもらわず当てる。同じサウスポーで、まさに僕が目指したかったボクシングをやっていたので。そこからずっと好きで、リスペクトするボクサーです」
リオ五輪銀メダリストからプロデビュー、今年1月にWBO世界スーパーライト級王者となり、世界4階級制覇を果たした当代きってのディフェンスマスターと一緒に走り、ジムワークをし、間近に動きを見て、実際に体感もし、師の教えも受けた。
さらに前日の公開計量から、試合当日の控え室まで「全部、見ておけ」(モーゼス・トレーナー)とチームの一員に迎えられ、リングサイドで観戦。本場のファイトの迫力を五感で感じ、「いつか、自分も」とイメージをふくらませた。
現地に部屋を借り、自炊をし、憧れの存在のもとで、ひたすら練習に打ち込んだ夢のような3カ月。何を感じ、何を学び、どんな影響を受けたのか。
「すみません! それはちょっと言えないんですよー(笑)」
「トップシークレット、自分のなかに全部とどめておくんだ」とモーゼス・トレーナーに釘を刺されたのだという。それでも「僕のやりたかったボクシングがそこにあった」と笑顔を浮かべ、きっぱりと続けた。
「まだまだですけど、どうしたら僕が理想とするボクシングに近づけるのか、何を練習すればいいのかは分かったので。こっちでも練習し続けるだけです。答えは、これからの僕の活躍する姿で見てください」