世界大会で快進撃を見せるバレー男子代表 「12連勝」以上の価値を持つ収穫とは?

大島和人

ネーションズリーグのグループステージを12戦全勝で終えたバレーボール日本代表 【写真は共同】

 バレーボール男子日本代表の快進撃が続いている。現在開催中のFIVB男子バレーボールネーションズリーグ(VNL)で、日本はグループステージ(予選ラウンド)を12戦全勝で終えた。これはVNLが2018年に現行の方式になってから世界史上初の快挙だ。

 VNLは世界のトップ18チームが参加し、世界を転戦する大会。6月3日に開幕していたグループステージでは、そのうち12チームと対戦する。各国は第1週から第3週まで4試合ずつを消化し、予選最終週(第3週)はアメリカ、セルビア、日本の3カ国でラウンドが開催されていた。

 日本は中国、フランスと転戦して8勝0敗で帰国していた。Asueアリーナ大阪の4試合もイタリア(3-2)、カナダ(3-2)、ベルギー(3-0)、アルゼンチン(3-0)と全勝で終えている。

 ロラン・ティリ監督率いる日本はいずれも10勝2敗の2位ポーランド、3位スロベニアを従えて、1位でファイナルラウンド(決勝ラウンド)に進む。ファイナルラウンドはトーナメント方式で、グループステージの上位7チームと開催国の中国が進出。日本は7月29日の準々決勝でその中国と対戦する。

12連勝でファイナルラウンドへ

 12連勝という結果はあったが、大阪ラウンドを終えた選手は皆が冷静なコメントをしていた。西田有志はこう語っている。

「簡単な試合は一つも無かったですけど、日に日に良くなっていく状況がありました。イレギュラーがあったりもしましたけど、チームでしっかり耐えられたことは非常に良かった」

 日本はパリ五輪直前に開催された2024年のVNLでも準優勝を飾っている。2017年から日本代表のコーチを務め、2021年の東京五輪後に昇格したフィリップ・ブラン監督と石川祐希、髙橋藍、西田といった人材が噛み合い、日本はパリ五輪を世界ランキング2位で迎えた。

 パリ五輪の日本は準々決勝のイタリア戦で、勝利寸前からの大逆転負けで大会を終えたのだが、少なくとも「メダル」は手の届くところまで来ていた。

 パリ五輪後に就任したティリ監督はブラン前監督と同じフランス人で、フランス代表を東京五輪の金メダルに導いた指導者だ。2024-25シーズンはSVリーグ大阪ブルテオンの監督を務めていた。

 昨年のVNLを振り返ると、日本はグループステージを8勝4敗の4位で終え、ファイナルラウンドは6位だった。今年の大阪ラウンドの時点で日本の世界ランキングは5位。選手が掲げていたこの大会の目標も「メダル」で、だからこそ12連勝は驚きの結果だった。

 バレーボール界にとって最大のイベントはやはりオリンピック。VNLは最大2カ月に及ぶ大会ということもあり、各国は調整やチーム作りも意識して臨む。クラブシーズンを終えた選手たちには休養、ケアも必要で、有力選手が大会の途中にチームへ合流する例も多い。

 日本も西田は2025年の代表シーズンを欠場し、その時間を個人の強化に充てた。今季の代表シーズンもパリ五輪の正セッターだった関田誠大はここまで調整のため欠場が続いている。

 様々な状況を考えればまだ日本がVNLの優勝候補筆頭、実力世界一とは言えない。一方で「面白いことが起こっている」「期待できる」とははっきり言える。

勝負強さの理由は?

 今大会の日本は結果だけでなく「勝負強さ」が際立っていた。12勝のうち6試合をフルセット(3-2)でモノにしている。ティリ監督はこう述べる。

「皆さんご存知の通り、タイブレークは本当に勝ったり負けたりで、どちらに転ぶか分からないシチュエーションです。少しの運がどうしても必要で、それをみんなで取りに行った、毎回チャンスを取りに行けたことがタイブレークをすべて勝てた要因なのかなと感じています」

 西田は少し違う視点から分析をしていた。

「『勝たないと』という意識はもちろんありますけど、それが僕らのメインではなくなっていて、それが一つ大きいかなと思います。結構ラフにチームがやれている部分があって、締まるところは締まる。それをやれているのが今の状況です」

 今の日本はただ目の前のポイントを取りに行くのでなく、どうしても取りたいセット、取りたいポイントのところで「ギアチェンジ」ができる。筆者は西田のコメントをそう理解した。

 選手の能力も世界レベルに達している。身長はバレーボール選手として見れば低くても状況判断、コースの打ち分け、タイミングの調整といった「質」で相手を上回れる人材が揃っている。

 主力の年齢を見てもキャプテンの石川が30歳で、西田は26歳、髙橋は24歳と働き盛り。加えて石川を筆頭に海外クラブに在籍している(していた)選手が多く、石川や髙橋は日本の大学に在学しながらイタリアに渡ってプレーした。SVリーグも外国籍枠の拡大で「世界レベルと対決する」状況が生まれ、選手たちは代表も含めて「世界と戦う」経験をしっかり積んできた。そんな積み上げが徐々に実っている。

厚みを増した選手層

 大阪ラウンドの収穫は「控え組」の台頭だった。イタリア戦の激闘の翌日(16日)に開催されたカナダ戦はイタリア戦とほぼ同じメンバーで臨んだものの、2セットを先取される厳しい展開だった。

 しかし日本は交代で入った大塚達宣、富田将馬、宮浦健人らの活躍で逆転勝利を挙げている。17日のベルギー戦も、大会初先発のアウトサイドヒッター甲斐優斗が持ち味の強打でチーム最多得点を挙げ、22歳の大器がチームの戦力になることを証明した。

 キャプテンの石川はこう述べている。

「ずっと調子がいい選手はいなかったですけど、代わったメンバーがしっかり入れて、それも自信を持ってコートに立てている。今回の日本ラウンドも、カナダ戦が象徴的だったと思いますけど、ああいった出たメンバーが自分の役割を果たしている。流れが悪くなっても、代わった選手はその流れにのまれず自分のプレーを発揮できているところがよかった」

 選手層の充実は、戦術的な選択肢を増やす。現代バレーはデータ分析がカギになっていて、そこには取捨選択が伴う。強みになるアタックを3つ、4つと封じても、今の日本男子は「5つ目」「6つ目」を用意できる。そうなると相手も対応が難しい。特にアウトサイドヒッターは石川、髙橋、大塚、富田、甲斐と誰が出ても日本の強みになっていた。

 もしかすると勝利という結果以上に、その過程で得られた「経験」が今後につながる。石川はグループステージの収穫についてこう口にする。

「やはり負けるよりも、勝って学ぶ方がいい。それがちゃんと経験として表れているなと、12試合を戦って思います」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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