メッシに見せ場を作らせず…“新黄金時代”のスペイン、圧巻の内容で世界王者に返り咲く【決勝・スペインvs.アルゼンチン】
ロドリを中心に圧力をかけるスペイン
8ゴール4アシストの出色のパフォーマンスでチームを牽引してきたリオネル・メッシも、最後は主役の座を譲るしかなかった。
延長戦へともつれ込み、1-0で決着する接戦だったが、その実、シュート数20対3、パス数844対452というデータからも分かるように、ワンサイドゲームだったと言っていい。
ニューヨーク・ニュージャージースタジアムに詰め掛けた8万人を超える観衆と、映像を通して世界中のサッカーファンが見届けたのは、世界王者に返り咲いたスペインの圧倒的な強さだった。
互いに相手の出方をうかがう立ち上がりを経て、4分が過ぎたころ、ゲームは早くも熱を帯びる。
ダニ・オルモのワンタッチパスを受けたラミン・ヤマルが左足でゴールを狙うと、直後にも敵陣でボールを奪ったロドリのパスを受け、再びヤマルがゴール前に飛び出していく。
アルゼンチンも負けていない。スペインの連続フィニッシュから間髪置かず、メッシがスルーパスからDFの背後に抜け出すも、GKウナイ・シモンがペナルティーエリアの外に飛び出して事なきを得る。
この時点では、前回大会決勝のように――アルゼンチンとフランスによって争われ、3-3の打ち合いでPK戦にまでもつれ込んだ――壮絶な展開になることも予想された。
だが、そうした期待に反して、ゲームはここから一方的な展開になっていく。スペインが抜群のゲームコントロールで、アルゼンチンを支配し続けたのだ。
その中心にいたのが、中盤の底に構えるロドリだった。
試合後に大会MVP(ゴールデンボール)に輝くことになる30歳のボランチは、ハーフレンジのパスを左右に散らして相手を揺さぶり、隙あらば自らボールを運んで攻撃に変化をもたらした。
ロドリを中心としたスペインの小気味よいテンポのパスワークに、アルゼンチンもマンツーマン気味の守備で食らいついたが、ボールを奪えてもすぐに囲まれ、奪い返されてしまう。アルゼンチンはボールを前に運べないどころか、前にパスを出せないでいた。焦れたメッシが中盤まで下がってくるが、それでもボールに触れない状況が続いた。
アルゼンチンのシナリオに狂いが……
どんな逆境に身を置こうと、どれだけ疲労困憊であろうと、膝を折らない。その不屈の闘争心こそがアルゼンチンをファイナルへと導いた原動力であり、ここまで起こしてきた奇跡の数々は、苦しいときの拠りどころとなるものだ。
だから、スペインがゲームを支配しながらゴールをこじ開けられない展開は、アルゼンチンのシナリオ通りにも見えた。
ところが、そのシナリオにわずかな狂いを生じさせるアクシデントが、43分に起きる。
センターバックのリサンドロ・マルティネスが筋肉系の怪我で途中交代を余儀なくされるのだ。このマンチェスター・ユナイテッドに所属するDFは25年2月に前十字靭帯断裂の大怪我を負い、復帰後の今年2月にもふくらはぎを負傷。何とかW杯に間に合わせたが、無理がたたったのかもしれない。
代わりにピッチに入ったのは、メッシと黄金時代を築いてきた38歳のニコラス・オタメンディ。今大会では主にクローザーを担っており、リサンドロ・マルティネスの穴埋めとして申し分のない実力者だが、早くも前半のうちにDFを投入せざるを得なくなったことが、のちの交代策に響いていく。