常勝軍団・敦賀気比 勝利を引き寄せる采配 56の極意

甲子園常連も指導者は3人だけの理由「昭和的な部分も色濃く残って…」

東哲平

2015年春、敦賀気比はエース・平沼翔太を擁して春夏通じて甲子園初優勝を飾った 【写真は共同】

年間甲子園出場率、驚異の110%超!
監督就任15年目で甲子園出場16回。そのうち優勝1回、四強2回、八強1回。恵まれない環境下に置かれながらも、いま高校球界で最も勝ち切れる指揮官が語る、日本一の采配論!敦賀気比高校野球部・東哲平監督の著書「常勝軍団・敦賀気比 勝利を引き寄せる采配 56の極意」から一部を抜粋して掲載します。

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私たちが常勝軍団になれた理由

――受け身の練習から、自ら鍛えるチームへ

 監督に就任して以降、2017年を除けば、敦賀気比は毎年のように春夏いずれか(あるいは2季連続で)の甲子園に出場してきた。結果だけを見れば、すごいことをしてきたように映るかもしれない。でも、私の中では、特別なことをしてきたという感覚はあまりない。やるべきことをやり、必要なことを積み上げ、それを途中でやめなかった。その結果として、甲子園という舞台に辿り着く年が続いてきたのだと思っている。

 私がコーチに就任したのは、2008年のことである。当時の敦賀気比には、指導者がやらせる練習の色がまだ濃く残っていた。もちろん、選手を鍛えるうえで厳しい練習が必要なのは理解できる。しかし、言われたことをただこなすだけでは、本当の強さは身につかない。甲子園に行くためには何が必要なのか。どういう心構えで練習に臨まなければならないのか。そこを選手自身が考え、行動に移せる集団に変えていく必要があった。

 コーチ時代から、少しずつ受け身の練習を減らし、選手が主体的に練習に取り組む流れを作っていった。そして2011年に監督へ就任した時点で、その方向へ大きく舵を切った。指導者に言われたからやるのではなく、甲子園に行きたいのなら、自分たちで考えて自分たちで動く。その意識を、チーム全体に求めたのだ。

 もちろん、選手に任せるといっても、放っておくわけではない。逃げ道は作らせない。やると決めた以上、私たち指導者も最後まで付き合う。選手たちに厳しさを求める以上、こちらも同じだけの覚悟を持たなければならない。そういう練習を地道に続けていくうちに、敦賀気比ではそれが当たり前になっていった。

 私の指導には、昭和的な部分も色濃く残っていると思う。暴力は絶対に許されないが、選手を鍛え上げるためには、ある程度の厳しさは必要だ。楽な練習だけで、厳しい局面を乗り切れる強さは身につかない。ここぞという勝負所で踏ん張れるかどうか。最後の一本を出せるかどうか。守り切らなければならない場面で粘れるかどうか。普段の厳しい練習に耐えてきた選手だけが、大事な場面で自分の力を出し切れるのだ。

 強豪校の中には、監督、部長、コーチに加え、外部コーチやトレーナーを招き、充実したスタッフ体制を整えているチームも多い。しかし、敦賀気比は基本的に私と部長の国本開、コーチの川下竜世の3人でチームを見ている。以前は定期の臨時コーチとして、元読売ジャイアンツの上田武司さんにも来ていただいていたが、いまは外部から定期的に来てもらっているスタッフはいない。私たち3人だけで、練習や練習試合といった1年間のスケジュールをこなしている。

 少ないスタッフでも結果を残してこられたのは、国本と川下の存在が大きい。ふたりは敦賀気比の卒業生であり、私の考え方もチームの空気も、選手に求める基準もよく理解している。私が細かく説明しなくても、どこを締めるべきか、どこで選手に考えさせるべきかがわかっている。国本と川下でなければ、いまの敦賀気比は作れなかったと思う。

 私たち指導スタッフは、選手たちが大一番で本来の力を発揮できるように導くことだけをただひたすらやってきた。監督がどれだけ言葉を尽くしても、最後にグラウンドで戦うのは選手たちだ。試合の流れを感じ、相手と向き合い、自分の役割を果たす。その土台は、日々の練習の中でしか作れない。

 結局、チームを強くするのは、選手自身の意識である。どんな思いで練習に向かうのか。自分をどこまで追い込めるのか。敦賀気比が毎年のように甲子園を目指せるチームであり続けているとすれば、それは特別な方法論があるからではない。本番の苦しい場面で逃げずに踏ん張るために、厳しさを受け入れ、自分たちで考え、自分たちで鍛える空気が、チームの中に根づいているからなのである。

極意 其の十一

 選手を鍛え上げるためには、ある程度の厳しさは必要だ。楽な練習だけで、厳しい局面を乗り切れる強さは身につかない。ここぞという勝負所で踏ん張れるかどうか。普段の厳しい練習に耐えてきた選手だけが、大事な場面で自分の力を出し切れるのだ。

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